日本代表ウイング山田章仁 30歳で初のワールドカップで「トライ」宣言【ラグビー旬な一問一答】
ラグビー日本代表のウイング山田章仁は、9月1日、自身初出場となるワールドカップを戦うべくイングランドへ渡った。8月31日、都内でのメンバー発表会見後の取材機会で心境を明かしている。
高く飛び上がったり、相手の目の前で回転したりと、慶應義塾大学時代から奇抜な走りでファンの喝さいを浴びた。2010年度にホンダから三洋電機(11年度からパナソニックに名称変更)に加入すると、日本最高峰のトップリーグで3度の優勝。いずれの折も短期決戦のプレーオフでMVPに輝いた。
日本代表としては、13年11月15日のロシア代表戦(ウェールズ・コルウィンベイ/40―13で勝利)でようやく初キャップ(国同士の真剣勝負への出場数)を獲得も、それ以前は遠回りを強いられた。前年度に初のトップリーグプレーオフMVPとなって臨んだ2011年のワールドカップニュージーランド大会時のシーズンは、候補メンバーに止まっていた。
15年は、南半球最高峰であるスーパーラグビーのウェスタン・フォースに在籍。公式戦デビューは果たせなかったが「練習になじむのは簡単ですけど、そこでアピールするということもできましたから」と確かな手応えを口にしている。
チームは19日にブライトンで本大会の予選プール初戦を迎える。相手は世界ランク5位の南アフリカ代表だ。
以下、共同取材機会時の山田の一問一答。
――(当方)おめでとうございます。
「ありがとうございます」
――(当方)チーム内では、宮崎での合宿中だった26日に発表があった。
「うーん、まぁ、嬉しかったですね。はい。エディー(ジョーンズヘッドコーチ)さんが落選したメンバーにコメントを言うという形で…(名前が呼ばれなかった自身はメンバー入りを察した)。怪我もありましたので、合宿中にもっとしっかりアピールしてワールドカップに臨みたいとは思いましたけど、それまでやってきたこともありましたから、それもエディーさんに伝えて…」
――(当方)怪我。右の股関節や大腿四頭筋を8月13日に故障しました。
「練習中、ですね。幸いワールドカップまで時間もありましたから、まずは治すことに専念しよう、と。PNC(パシフィック・ネーションズカップ=7~8月の北米遠征中の大会)のころから痛かったんですけど。その後もハードな練習が続いて。そこでコンディショニングが上がってこなかったというのはありますね」
――検査などのため途中離脱したのは8月13日。2日後の世界選抜戦(東京・秩父宮ラグビー場/20―45で敗戦)は出場する予定だった。
「世界選抜戦はどうしても出たかったですし、やれるところまでやろうと自分では決めていました。…ただ、あの時点では走れませんでしたから、チームにも迷惑かけちゃうし、他にいい選手もいるので、と」
――いまの状態は。
「91、2パーセント。僕に計算能力があれば、ですけど」
――ジョーンズHCは「73パーセント」と。
「いえ、91です」
――(当方)どうにか、走れるようにはなった。
「いままでもそうでしたけど、100パーセントに近いコンディションならいいプレーができて、皆としっかりやっていける自信があります」
――(当方)別メニュー。不安は。
「そんな気持ちよりも、自分が治す、コンディションを上げる。そこに集中したいですね」
――指揮官の見通しは「南アフリカ代表戦前の復帰」と。
「多分、(離日後)インド上空あたりで95から100になるんじゃないですかね」
――(当方)実際は、大会直前期のゲームに1度も出場せずにワールドカップへ出ることとなりそうですが。
「そういうことは考えてなくて。皆とトレーニングする時間をもらえたので、1日でも早く100パーセントになるようにしたい」
――豪州から帰国後の共同会見では、「南アフリカ代表戦でのヘアスタイルはお楽しみに」との発言。
「怪我したんで、ちょっとプラン変更しなきゃだけですけど…。まぁ、頑張りたいなと」
――(当方)現地のヘアサロンは探していますか。
「グーグルマップもありますからね」
――(当方)月並みですが、ワールドカップは何のために戦いますか。
「発表会というイメージを持っていますから。いままでやってないことはできない。それは消極的な意味じゃなくて、いままでやってきたことを出せさえすれば、いい舞台になるんじゃないか、いい作品が作れるんじゃないかって思います」
――(当方)「いままで」。落選や回り道もあった。
「今回、初めてのワールドカップで、いい大会にしたいなって。初めてだからこそ味わえる気持ちもあると思う。それを素晴らしいスタッフや仲間と味わえることは、いいと思う。初めての真っ白な画用紙に、ね、色んな絵の具を…」
――(当方)チームディナーで、スタンドオフ小野晃征選手から07年のフランス大会出場時の経験談を聞いたようですが。
「ワールドカップの盛り上がり方とか、他の国の選手の雰囲気を。ただ、それは彼ら(経験者)が自分で感じてそう思ったのであって、僕らも自分で感じないとわからない。自分の画用紙は真っ白のままでいきたいと思いますけど」
――(当方)以前、もしワールドカップに出られたら「これまでのハードな日々が終わると思うと、寂しくなるのでは」と話していました。
「刻々と終わりは近づいています。もうすでに寂しいですよ。宮崎(合宿地)も行けないですし。エディーさんと過ごせる時間もだんだん減っていってますから。1日、1日、かみしめたい」
――(当方)対戦したい相手。
「南アフリカ代表には(パナソニックでチームメイトの)JPピーターセンもいます。ポジションも似ている(ピーターセンはセンターやウイングでプレー)ので、抜き合いもしたい」
――(当方)南アフリカ代表では、スクラムハーフにサントリーのフーリー・デュプレアもいます。
「そう。トップリーグのレベルも上がっていて、免疫もついている。グラウンド内外で、その辺は役に立っていると」
――スーパーラグビーでの経験。
「チームメイトや対戦相手に、ワールドカップに出るような選手もいっぱいいます。彼らが試合前にどんな風にモチベーションを上げているかを実際に観られた。僕自身の準備にも活かしていけますし、(本大会で)相手がどんな準備をしているかの想像もできます」
――(当方)本番。どんなプレーをしたいか。
「トライを取りたいですね。色々と考えてもわからない(焦点がぼやける)ので、トライを取る道筋を作っていきたい」
――(当方)ジョーンズHCにアピールするため、ここ数年は「ハードワーク」「ボールタッチ数を増やす」「サイズアップとスキルアップ」などを目標としてきました。
「向こうへ行ったら、結果が全てなので。取り切る」
――(当方)トライを取りたい。人前でそう宣言したのは、ワールドカップメンバーから落選した直後の11年度以来です。
「そうですね。まぁちょっと、言っとこうかなと思いまして」
――(当方)ワールドカップでトライを取ったら、名実ともに成功者となる。
「そこら辺はあんまり期待してないですけど、チームのためにボールを少しでも前に運びたいという思いでやりたいですね」