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帰国前にエディー・ジョーンズヘッドコーチは…。ワールドカップ総括会見【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
(写真:ロイター/アフロ)

ラグビー日本代表は10月12日、当地グロスターで4年に1度あるワールドカップのイングランド大会に関する総括会見をおこなった。坂本典幸・日本ラグビー協会専務理事、ジャパンのリーチ マイケルキャプテンとともに、エディー・ジョーンズヘッドコーチが質疑に応じた。

同大会で過去24年間未勝利だった日本代表は11日、予選プールBの最終戦でアメリカ代表に28―18で勝利(グロスター・キングスホルムスタジアム)。3勝1敗、勝ち点12で戦い終えた。しかし、目標としてきた準々決勝進出は果たせず。3勝しながら予選突破が叶わなかった例は今回が初。

ジョーンズHCは今大会限りでの辞任を発表している。

以下、指揮官の一問一答の一部。

「昨日のゲームに関してですが、世界ランク9位のチームとして終えたことは日本にとってかなりの偉業だと思います。リーチキャプテンら選手たちの功績です。ワールドカップでのパフォーマンスはずば抜けて素晴らしいもの。ラグビーの質、意図、情報、勇気、これが日本ラグビーのレガシーとして引き継がれるでしょう。新しいファンにも刺激を与えられたのも、素晴らしいレガシーです。

今朝は変な気分です。次の試合の準備をしない朝。変な感じです。いつぶりかわからないほど久しぶりに、奥さんとご飯を食べました。まだ、奥さんでいると願っていますが。

日本に新しいヒーローが誕生した。どのヒーローも、さらにハードワークを続けることが必要です。それで成功が続くでしょう」

――大会前、「世界に最も驚かれるチームに…」と話していたが。

「それは自分ではなく周りが決めることです。ただ、ファンのリアクションを見ると、その称号に値するとは思います。戦い方を見ると、サポートしがいのあるチームに映ったと思います。

ワールドカップに風を吹かせられた。ラグビーはパワーと衝突が大きなゲームです。ただ、相手と比べてパワーの差があるチームでも、ゲインライン上の攻防を工夫して、身体を張って、パワーがなくても勝てると証明できた。

かつて、ラグビーはどんな体格でもプレーできた。最近はそうなくなりつつありました。ただ、勝てる方法を見つけた。アジアの国をリードできなければならない。他のアジアにもラグビーを戦っていける姿勢を見せる必要はあります」

――今後。

「11月1日からストーマーズに行きます(南半球最高峰のスーパーラグビー)。その先のことはわかりません。日本は自分のルーツもあり(母が日本にルーツを持つ)、特別な場所です。ただ、未来のことはわかりません」

――日本代表は、次回大会で8強を目指す。

「準々決勝進出は難しいでしょう、パワーの差を乗り越える方法を見つけないといけませんが、その鍵のポジションに選手が見つかりません。

ロック。センター。この2つの層が薄いです。ここにもっと(競技の構造上)パワフルな選手が必要です。

ロックでは、大野均は次の大会で41歳です。ゴールドカードでプレーしなければならない。タフです。有望な若手ロックがあまり、いません。

ジャパンが今回、結果を出したのは、経験を積んでいたからです。10~15キャップ(国際間の真剣勝負への出場数)ではワールドカップでは通用しません。1人あたり、40キャップ以上は必要」

――プロ化が必要?

「マインドセット(思考回路)の問題です。いまは高校からトップリーグまで、時間の使い方自体はすでにプロと同じです。ただ、マインドセットがプロじゃない。代表のマインドセットは、変えられた。『ミーティングでコーチに当てられないことを祈っていてはいけない』『選手が相手の分析をしなくてはいけない』。これは、勝手にそうなったわけではありません。

日本ラグビー界は心地がいいです。いい選手はいい企業に入れ、すぐにスタメンで、コーチには何も言われない。そして、選手は育たない。強調したいのは、ポテンシャルは高いがマインドセットを変えないといけない。

ここからはラグビー協会の仕事ではなく、各チームの責任です。ベストプレーヤーにするため、色んなことをさせる。いま、多くの選手が日本代表の桜のジャージィを着たいと思っている。それにはどれだけの苦労が必要か、理解してもらえると思います」

――3勝しながらベスト8に行けなかった。悔やまれる点は。

「全試合、勝ちたかったです。ワールドカップでは3戦、いいパフォーマンスができた。残りは50分、いいパフォーマンスができたけど、残り時間、何かの原因で崩れた。昨日は、ジャパンのワールドカップの決勝戦でした。歴史を変えるための試合。

グラハム・ヘンリー(オールブラックスことニュージーランド代表を率いて、2011年の母国開催ワールドカップで優勝)がコメントを出しています。イングランド代表がオールブラックスの真似をしている、と。ワールドカップを観ると、同じような戦い方をしているチームが多い。その意味では、日本代表が独自のスタイルを持っていることには誇りが持てます。独自の戦いを継続する勇気を持っている」

――予想を超えた成長は。

「ここにいたすべてのチームを愛しています。ジャパンも特別です。一番成長した点はセットピースと、80分間戦い続ける能力。マルク・ダルマゾ(スクラムコーチ)とジョン・プライヤー(S&Cコーディネーター、以下JP)は、素晴らしい仕事をしてくれました。彼ほど強化に協力した選手はいません。きのう、久々にJPが家族といるところを見ました。子どもたちはJPが父親だとわかっていたでしょうか。ジャパンに自らを捧げたような男です」

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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