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先週負けたスコットランド代表にどう勝つか。日本代表・田邉淳コーチ語る。【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
写真はサンウルブズでプレーする田村。田邉コーチの助言もあり、ゴール成功率アップ。(写真:アフロスポーツ)

4年に1度あるワールドカップの自国大会を2019年に控えるラグビー日本代表は、6月25日、東京・味の素スタジアムでスコットランド代表とのテストマッチ(国際間の真剣勝負)をおこなう。

同カードは18日にも愛知・豊田スタジアムであり、日本代表が13―26で敗戦。スコットランド代表は昨秋のワールドカップイングランド大会でジャパンが唯一勝てなかった相手で、2試合連続で先発となるプロップの畠山健介も「同じ相手に3度負けることは、ありえない」と必勝態勢で臨む。

当日、欧州6強の一角でもあるスコットランド代表にどう勝つか。前回の敗戦から何を得たか。チーム唯一の日本人コーチが口を開いた。

田邉淳。現役時代は元日本代表のフルバックで、2009年度はベストキッカー賞と得点王に輝く名キッカー。15歳から9年間、単身でニュージーランドへ留学しているバイリンガルで、引退後はパナソニックのコーチとして国内最高峰トップリーグの3連覇を果たした。

今季は国際リーグであるスーパーラグビーに日本から参戦するサンウルブズのアシスタントコーチに就任。この国の指導者で初めて同リーグでのコーチ職に就き、その流れで今度の日本代表にも帯同した。

パナソニック、サンウルブズ、日本代表でキャプテンを務める堀江翔太からも信頼は厚い。選手とのコミュニケーション能力やコンセプトのプレゼンテーション技術は、マーク・ハメットヘッドコーチ代行からも一目置かれている。一度敗れた相手へのリベンジに関しても、わかりやすい見取り図を明かした。

なお、18日の一戦では、前半8分にターンオーバーからの速攻でトライを決めるなど応戦も、球を持ち込んでのミスがかさんでいた。後半残り25分間は無得点だった。フルバックでプレーした松島幸太朗は序盤に負傷交代。田邉コーチが取材に応じた23日時点では、メンバーリングは不確定だった。

以下、田邉コーチの一問一答(編集箇所あり。全て当方質問)。

――先週の試合を受けて、今週はどんなイメージで練習をしてきたのでしょうか。

「(18日は)チャンスはいっぱいあったし、(次戦も)いっぱいあると思うんです。そのチャンスをどう活かすかについて、修正しました。スコットランド代表だけではなく、シックスネーションズ(欧州6か国対抗戦)に出るチームは、たくさん、キックを蹴る。そのキックしてくれたボールをどう使ってゆくか、です。結局ね、ボールは1つしかない。それを持っている側が(得点機を持っているという意味で)勝ちなんです。ここから、どうトライに繋げるか」

――他の選手は、「キックが蹴られた先への戻り」と「ボールを持った選手へのサポート」を速くしたいと言っています。この姿勢の根っこが「キックしてくれたボールをどう活かすか」というわけですね。

「そうなんです。いままで準備期間は2週間しかなかったけど(6月4日に合流し、カナダ代表戦などを経て現在に至る)、ケーキ(攻撃の形)はできた。あとはここにどうデコレーションするかだ、と。寄り、人の位置…。ちょっとしたことをデコレーションするだけで、非常にいいアタックになると思う。アタックフォーカスとしては、そこに手を付けました」

――並び位置を変えるわけではない。

「そこは、変えていません」

――並んだ1人ひとりの意識の質に手を加えた、と。

「この間はチャンスの時のワークレートが低かった。そういうレベルじゃない(それで点数を取らせてもらえる相手ではない)、という認識ができた。じゃあ、ボールをどう活かすか…と。

アタックの優位性って、ボールがどう動くかを全員がどれだけ理解しているかで変わってくると思います。どこへ動くかわからないから、判断の迷いが生じるんです。ボールをどう、誰が、動かすか。同じ画を見よう、ということです」

――メンバー発表前であることを前提に伺います。今週から合流してウイングでのプレーが予想されているマレ・サウ選手について。ワールドカップイングランド大会でも活躍したランナーですが、いかがですか。

「ペネトレイター(突破役)として期待しています。彼、ナキ(ナンバーエイトのアマナキ・レレイ・マフィ)、コリ(同ホラニ龍コリニアシ)、ツイ(フランカーのツイ・ヘンドリック)…。こういったボールキャリー(球を持って前に運ぶ人)になれる選手プラス、ディストリビューター(球をさばく役割の人)であるユウ(スタンドオフの田村優)、ハル(インサイドセンターの立川理道)、リキヤ(フルバックの松田力也)のあたりを上手く使って、アタックをしていきたい」

――18日に先発した松島幸太朗選手は怪我で退きました。フルバックは、松田力也選手になりそうですか。

「他のオプションもありますが、いまのところはリキヤをファーストチョイスとして考えます。笹倉(康誉)がフルバックをできることも十二分に理解しているし(サンウルブズやいまの日本代表ではウイングでプレーも、本職はフルバック)、最悪のケースとしてユウやコウセイ(スタンドオフの小野晃征)がそちらへ入ることも想定しています。この層の厚さを、今後の日本代表やサンウルブズに繋げられるのかも大事になりますが…」

――…日本代表の選手のことでもうひとつ。スタンドオフの田村選手、ここ2試合、明らかに好調に映ります。一緒にいて、何か気付くところはありますか。

「彼の良さは、『こうすればいいよ』と言われたこと(指示行動)ができて、吸収性もないわけではないところ。こちらで『こんなオプションもあるよ』と伝えれば、(それを踏まえて)上手くプレーできるんです。

エディー(ジョーンズ前日本代表ヘッドコーチ)のもとでは自由にプレーしたら『ダメ』となっていたところもあったかもしれない。僕はユウと(現役時代に日本代表で)一緒にプレーしてその辺のことを知っているので、あえてオプションの制限をしない。『色んなオプションを使っていこう』と話しています。ポテンシャル、感じています」

――ゴールキックの成功率は9割超。こちらも好調です。

「どうですかねぇ…。2月に沖縄(サンウルブズの合宿)で、(キックのフォームを)ビデオに撮りながら何本も蹴ったりしていた。キックティー(ボールを置く台)も僕が使っていたのと一緒のものを使うと言い出して…。僕は何を使っても一緒だろうと思ったのですが、(キックティーを変えたことで)しっくり来ているみたい。やっぱり、ビデオを撮って、自分が蹴っているところを観るのが大きいですよね。あとは、とにかく数をこなす」

――ベストのフォームを把握して、そのフォームで反復練習。いま、成果が現れている、と。

「そう思います」

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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