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日本代表&サンウルブズの田邉淳コーチ、ラグビー界再生のヒントを語る?【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
ジャパン、34000人超のファンが集う味の素スタジアムで。皆で力を合わせたい。(写真:アフロスポーツ)

国際リーグのスーパーラグビーに日本から初参戦するサンウルブズが、シーズン終盤戦を見据える。

東京・秩父宮ラグビー場で国内最終戦となる第15節を7月2日に控え、都内で調整中。現在オーストラリアカンファレンス2位で一昨季王者のワラターズから、クラブ史上2勝目を奪いたい。今季限りでチームを去るマーク・ハメットヘッドコーチも、日本ラグビー界の未来を見据えつつ「いいレガシーを残すには、しっかりとしたパフォーマンスを見せないと」と誓う。

具体的な勝利への道筋を語るのは、田邉淳アシスタントコーチだ。

現役時代は元日本代表のフルバックで、2009年度はベストキッカー賞と得点王に輝く名キッカー。15歳から9年間、単身でニュージーランドへ留学しているバイリンガルで、引退後はパナソニックのコーチとして国内最高峰トップリーグの3連覇を果たした。

このほどサンウルブズ入りし、スーパーラグビー史上初の日本人コーチとしてハメットヘッドコーチを側面支援した。6月には日本代表へも入閣。サンウルブズの主力選手らとともに、スコットランド代表などと戦った。

他の日本人指導者から「今後のキャスティングボードの中心となるだろう」と見られるこの人の話は、勝負論に止まらない。2019年のワールドカップ自国大会を見据え、日本ラグビー界がどう進むべきかのヒントも示されている。

以下、6月30日の練習後の田邉アシスタントコーチの一問一答(編集箇所あり。全て当方質問)。

――日本代表の活動が終わった直後に、サンウルブズのワラターズ戦に向けた準備を開始しました(※)。

「ジャパンの時は、サンウルブズの選手が中心になってリードしていた。そこは、でかかったですね。今度のジャパンの3戦を通し、カウンターアタック(相手のキックを捕球した後の攻撃)の詳細を確認しました。ただ、それを今回のサンウルブズで落とし込むには、ちょっと、時間が足らなかったかな…と。メンバーが半分ほど変わったので(外国人勢を中心に日本代表に参加していない選手が合流)。

何せ、この暑さ(当日も最高気温は30度超と予想される)。ウィル・スケルトン(相手の大型ロック)の足のサイズ、いくつだか知ってます? 35センチとかですよ。そうした選手と比べたら、僕らは(手のひらを上から下におろしながら)『ここ』から『ここ』まで低くなるスピード、ばて具合などが違って来る。そのアドバンテージを利用したいな、と。

大きな選手を(キックで)どんどん背走させるように、と、ユウ(スタンドオフの田村優)、ハル(インサイドセンターでゲームキャプテンの立川理道)とは確認をしています。

(アウトサイドセンターに入る)イズラエル・フォラウのような一番怖いランナーに関しては、なるたけ彼らにボールを持たせないように、と。(サンウルブズのキックやパスなどで)彼らを動かす(無駄走りさせる)。

サンウルブズとジャパンの強みは、どこからでもアタックできることです」

――サンウルブズに限って言えば、どんどん速攻を仕掛けていた試合もあれば、まずキックで大きくエリアを取る試合もある(※)。

「戦い方の大枠は変えていないですけど、毎週、毎週、その中身をちょっとずつ入れ替えています。向こうの強み、弱みが何かをコーチ陣が把握して、(自軍の戦法に)落とし込む。あとは、それを実行できるか、です」

――スーパーラグビーを経験した選手の成長は。

「フィジカルの力が上がりました。ウェイトトレーニングでの力ではなく(大きな相手とぶつかり合う力)、です。心の成長も大分、あった。100パーセントの力を発揮しないと、このチームは存在できない。そうやって観客を得ているんだ、とも。

スーパーラグビーには、100パーセントの力でやっているのかわからない様子で勝ったり負けたりしているチームもあるじゃないですか。

サンウルブズは、そういうチームじゃない。

勝っても負けても観客に挨拶をして、サインをして、常に胸を張る。唯一、それができなかったのはチーターズ戦です(現地時間4月15日の第8節、南アフリカはブルームフォンティンのフリーステイト・スタジアムで17―92と大敗)。99パーセントじゃ、だめです。それが分かったのは、かなりの収穫です」

――裏を返せば、選手に100パーセントの力を発揮させる環境づくりも大事。今季は、長期遠征中の食事が日本食ではなくハンバーガーだったこともあったと聞きます。サンウルブズを統括するジャパンエスアール、日本代表を編成する日本ラグビー協会とはどんな関係を築いていきたいですか。

「たくさんある課題のなかで、どれを優先的に解決すべきか。監督、コーチ、選手、協会などで話し合わなければならない。いまは、そうなっていないかもしれないですね。それで皆が、フラストレーションをためているんじゃないですか。『皆で決めよう』という形になっていないところが、一番の改善点かもしれません。協会の第一優先、選手の第一優先、僕らコーチの第一優先。第一優先が3つあったら、その3つをできるだけ叶えられるように、バジェット(予算)の問題を話し合っていく…と」

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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