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エディー・ジョーンズ日本代表前ヘッドコーチ、来日。「変わる必要はある」【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
新天地でも結果を残すジョーンズ(写真右)。(写真:ロイター/アフロ)

ラグビー日本代表のエディー・ジョーンズ前ヘッドコーチが、テレビ番組の企画のため来日。7月1日、都内で取材に応じ、いまのこの国の状況などについて意見を述べた。

オーストラリア出身のジョーンズは、2003年には母国代表を率いて自国開催のワールドカップで準優勝、続く2007年のフランス大会では南アフリカ代表のチームアドバイザーとして優勝を経験。昨秋のイングランド大会においてはジャパン史上初の3勝を挙げ、国内の競技人気再興に助力した。

現在は、同大会の予選リーグで敗退したイングランド代表のヘッドコーチとなり、今季の欧州6か国対抗を全勝で制覇。6月にはオーストラリア代表とのテストマッチ(国際間の真剣勝負)で3連勝を果たし、世界ランクを2位に引き上げた。

この日は東京・秩父宮ラグビー場で、国際リーグのスーパーラグビーへ日本から初参戦するサンウルブズの練習を見学。日本代表のヘッドコーチ代行も務めたマーク・ハメットヘッドコーチと意見交換をした。

以下、共同会見時の一問一答の一部(※は当方質問)。

――6月、イングランド代表がオーストラリア代表に3連勝を果たしました。

「テストマッチではセットピースで優位に立って、ゲインライン(攻防の境界線)を切って、ボールに働きかけ続けなければならない。これが上手くいけば、勝てる」

――一方、日本代表はスコットランド代表と接戦を演じながら2連敗を喫しました。

「2戦目(25日、東京・味の素スタジアムで16―21と敗戦)は勝つべきだったと思いました。スコットランド代表の戦いぶりを鑑みれば、負ける試合ではなかった。ただ、日本代表も難しい状況にありました。スコッドの半分を欠いていて、代わりに若い選手が入った。若い選手がテストマッチをどういうものかと知るには、時間がかかる。これから12か月間、日本代表は難しい時間に突入します。これから新しいコーチ陣(今秋からジェイミー・ジョセフ新ヘッドコーチが就任)のもと、もう1回、新しいシステムを見つけ、選手をセレクションすることとなります」

――今回のジャパンで気になった若手はいましたか。

「スクラムハーフの茂野海人。本当はよりゲームの流れを読めればよかったですが、その点はこれからコーチ陣と話すことでカバーできる。ただ、ポテンシャルはある。フランカーの金正奎は、もっと身体を大きくしないといけませんが、現時点でのパフォーマンスは申し分ないものです」

――きょうは、ハメットとどんな話を。

「主に今季の話です。どんな準備をしていたかについてや、彼の思いなどについて、いろんな話をしました。日本ラグビー協会は、彼の活躍ぶりに感謝をしなければならない」

――サンウルブズの発足が日本ラグビーにどんな好影響を与えたと思いますか。

「強化を加速させられる。ただ、これを続けるには国内シーズンのスケジュールをもう少し考えないといけません。(日本最高峰の)トップリーグとスーパーラグビーを一緒にプレーし続けることは、いつまでもできるものではない。これからは最善の環境(日程や選手ごとの試合数の調整など)を整えることが大切になると思います」

――6月の日本代表がヘッドコーチ代行を立ててテストマッチに臨んだことについては、どう思いますか。

「ワールドカップに向けた準備が1年ぐらい、遅れてしまった。時間は、本当に大切。もう一度、チームを立て直さなければいけません。2015年のワールドカップ(イングランド大会)でプレーした選手のうち、(年齢的に)次の2019年もプレーできる選手はどれくらいか。おそらく、25パーセントくらいかもしれません。その意味では、チームを作る、というのは大きな仕事です。ワールドカップを戦うには、先発のトータルでのキャップ数(テストマッチ出場数)は550キャップくらいなければならない。経験が必要です」

――20歳以下日本代表も、今度のワールドラグビーU20チャンピオンシップで最下位。下部降格の憂き目にあいました。前半は互角に戦えているのに、後半に失速するゲームを続けました。試合を通して戦うためのストレングス&コンディショニング(S&C)面での改善は、スーパーラグビーでできるものですか。

「まさに、スーパーラグビーはそのためにあるものです。サンウルブズは代表チームがより強くなるためあるチームですから、今度のコーチ陣は選手のセレクションをより賢くやっていく必要があります。若いタレントを見つけ出し、S&Cの部分を含めて目的を持って育ててゆくために、スコッドへと入れる。そうしたことを、21歳から26歳くらいの選手に絞ってやっていくことが必要ではないでしょうか。いまのイングランド代表でも21歳のプロ選手がいます。ストラクチャー(国内の構造)を変えれば、それは十分に可能です」

――現場の選手やコーチは、マネジメント側にややフラストレーションを抱えている。その状態が昨年以前から続いている印象です(※)。

「(笑みを浮かべ)それはどこのチームの話ですか」

――失礼しました。日本代表とサンウルブズです。双方の関係を改善するには、どんなことが必要でしょうか(※)。

「もう、答えはおわかりでしょう。先ほどから話しているように、日本のラグビー界は急激に成長している。関わる人全体が、もっとプロになってゆくべきだと思います。ビジネスの世界にビジネスのプロがいるように、ラグビーについても、もっと(姿勢の面で)プロフェッショナルにやっていく必要があります。それが、次の挑戦です。

この前のスコットランド代表との第2戦目でも、味の素スタジアムに34000人の人が集まってくれました。皆さんのなかに、日本ラグビーのプライドがあることは見て取れます。もっとも、『ただ、やる』だけではこの状態は長く続きません。いままでアマチュアだった日本ラグビー協会の組織が変わる必要は、あると思います」

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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