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36名中初選出は15名。日本代表・秋のツアーメンバー候補発表を読み解く。【ラグビー雑記帳】

向風見也ラグビーライター
6月25日のスコットランド代表戦(東京・味の素スタジアム)。(写真:アフロスポーツ)

日本ラグビー協会は10月3日、11月のテストマッチ(国際間の真剣勝負)4連戦に向けた日本代表の合宿のスケジュールと、参加メンバーを発表した。選手選考がなされたのは、ジェイミー・ジョセフ新ヘッドコーチの着任後初。発表はリリースのみで、会見などはおこなわれなかった。

<選考の背景>

日本代表は昨秋のワールドカップイングランド大会で初の3勝を挙げたが、今年6月の活動期間はマーク・ハメットヘッドコーチ代行が指揮。ジョセフ新ヘッドコーチの契約の都合上、ボスがいないままスコットランド代表などと戦っていた。

今度のチームは10月9〜11日、23〜25日に都内で2度の合宿をおこない、選手とスタッフとの間でゲームプランなどを共有。11月5日のアルゼンチン代表戦(東京・秩父宮ラグビー場)とヨーロッパ遠征(ジョージア代表、ウェールズ代表、フィジー代表と対戦)へは、30名程度の陣容で挑む。

一般論では、チームのセレクションの全責任はヘッドコーチが負う。もっとも今回のメンバーは、合議制によって決まった。

「誰が主導でセレクションをおこなうのか」との問いに、薫田真広・男子15人制ディレクター・オブ・ラグビー(DOR)は「最終決定者はジェイミーですが、サンウルブズの関係者と数名でおこないます」と返答する。

日本代表とサンウルブズ(国際リーグのスーパーラグビーへ参戦する日本チーム)の連関性強化が求められるなか、指揮官が9月に着任したばかり。日本代表はいま、一般論を押し通しづらい特別な状況に置かれている。

ジョセフ新ヘッドコーチは、日本最高峰のトップリーグの試合会場へ足しげく通っている。各地クラブの関係者とも面談の機会を持ち、対話路線を強調。今後、ジョセフ新ヘッドコーチが自らのラグビー観と信念に基にチームを作れるか。それが10月の合宿以降の見どころのひとつとなろう。

<今回のメンバーをどう読み解くか>

強化責任を負う薫田真広・男子15人制ディレクター・オブ・ラグビー(DOR)は、かねてからジョセフヘッドコーチが「ワールドカップ組の状態を観たい」と話していると発言。もっとも今回のメンバーでは、テストマッチデビューを果たしていない選手が15名も揃う。

イングランド大会でキャプテンだったフランカーのリーチ マイケルは、以前から「どうなるかわからない」と話していたが選外となった。同じく副キャプテンだったフルバックの五郎丸歩は、フランスはトゥーロンで練習に復帰も、今度のリストには名を連ねなかった。

ジョセフヘッドコーチが発表したコメントには、こうある。

「これだけの経験値が失われた中でセレクションを行うにあたっては、インターナショナルレベルでパフォーマンスをすることができるのに、トップリーグではまだベストコンディションになっていない選手にも目を向けてバランスを取ることが重要になります」

代表引退をしておらず、現在おこなわれているトップリーグ(国内最高峰リーグ)でプレーしている選手にも、今回の合宿メンバーに名を連ねなかったメンバーがいる(フランカーのツイ ヘンドリック、ウイングの山田章仁ら)。春の代表や今季のサンウルブズ(国際リーグのスーパーラグビーに日本から参戦)でプレーしたスクラムハーフの茂野海人やフランカーの安藤泰洋も、スコッドに入っていない。11月のツアースコッドについて、薫田DORは「経験のある選手」で臨みたいと話してきている。

<10月の合宿メンバー>

・左プロップ

稲垣 啓太(パナソニック/186センチ/116キロ/13キャップ)

三上 正貴(東芝/178センチ/115キロ/33キャップ)

山本 幸輝(ヤマハ/181センチ/118キロ/0キャップ)

・フッカー

堀江 翔太(パナソニック/180センチ/104キロ/44キャップ)

木津 武士(神戸製鋼/183センチ/114キロ/43キャップ)

日野 剛志(ヤマハ/172センチ/100キロ/0キャップ)

・右プロップ

畠山 健介(サントリー/178センチ/113キロ/75キャップ)

伊藤 平一郎(ヤマハ/175センチ/115キロ/0キャップ)

・ロック

大野 均(東芝/192センチ/105 キロ/98キャップ)

宇佐美 和彦(キヤノン/197センチ/117キロ/9キャップ)

小瀧 尚弘(東芝/194センチ/110キロ/7キャップ)

梶川 喬介(東芝/188センチ/105キロ/0キャップ)

アニセ サムエラ(キヤノン/198センチ/118キロ/0キャップ)

ブラインドサイドフランカー

マルジーン・イラウア(東芝/187センチ/105キロ/0キャップ)

オープンサイドフランカー

布巻 峻介(パナソニック/178センチ/96キロ/0キャップ)

三村 勇飛丸(ヤマハ/178センチ/96キロ/0キャップ)

ナンバーエイト

アマナキ・レレイ・マフィ(NTTコム/189センチ/112キロ/9キャップ)

徳永 祥尭(東芝/185センチ/100キロ/0キャップ)

松橋 周平(リコー/180センチ/99キロ/0キャップ)

スクラムハーフ

田中 史朗(パナソニック/166センチ/72キロ/54キャップ)

矢富 勇毅(ヤマハ/176センチ/85キロ/16キャップ)

小川 高廣(東芝/172センチ/73キロ/0キャップ)

スタンドオフ

小野 晃征(サントリー/171センチ/82キロ/34キャップ)

田村 優(NEC/181センチ/91キロ/38キャップ)

小倉 順平(NTTコム/172センチ/80キロ/0キャップ)

田村 熙(東芝/180センチ/90キロ/0キャップ)

インサイドセンター

立川 理道(クボタ/180センチ/95キロ/46キャップ)

アマナキ・ロトアヘア(リコー/191センチ/107キロ/0キャップ)

アウトサイドセンター

マレ・サウ(ヤマハ/184センチ/98キロ/27キャップ)

ティム・ベネット(キヤノン/183センチ/94キロ/5キャップ)

ウイング

藤田 慶和(パナソニック/184センチ/90キロ/29キャップ)

福岡 堅樹(パナソニック/175センチ/83キロ/17キャップ)

カーン・ヘスケス(サニックス/178センチ/100キロ/14 キャップ)

レメキ ロマノ ラヴァ(ホンダ/177センチ/92キロ/0キャップ)

フルバック

松島 幸太朗(サントリー/178センチ/87キロ/18キャップ)

笹倉 康誉(パナソニック/186センチ/92キロ/3キャップ)

※ポジションは過去の日本代表や各選手の所属先での起用方法に基づき、当方が編纂。

<ジェイミー・ジョセフヘッドコーチ コメント>

「昨年のラグビーワールドカップ2015日本代表から、十数名の選手が引退や個人的な理由で選出できなかったため、今回のセレクションは主に、トップリーグで良いパフォーマンスをしている選手を選出し、インターナショナルレベルで試合する機会を与えることに基づいています。このレベルで戦うのにふさわしいスキルセットと心構えを持った若い選手たちと共に成長していけるのは喜びであり、彼らに会い、指導することが待ちきれません。

また、これだけの経験値が失われた中でセレクションを行うにあたっては、インターナショナルレベルでパフォーマンスをすることができるのに、トップリーグではまだベストコンディションになっていない選手にも目を向けてバランスを取ることが重要になります。11月に戦うテストマッチは大きなチャレンジになるため、彼らの経験は非常に重要であり、長期的には、私たちはこのような形で強化していきます。

今回の合宿は私たちマネージメントスタッフと選手を引き合わせ、ゲームプランを伝えるためのものです。初戦のアルゼンチン代表戦までの準備期間は6日間と限られており、11月の遠征に向けてやらなければならないことはたくさんあります。加えてこの合宿は、選手の観点から誰がチームを引っ張るのかを見いだし、議論する場でもあります。私は選手とミーティングや会話の場を設け、彼らときちんとした関係性を構築し、短時間でチームが同じ方向を向き、チームを導いていけるようにします。自分たちの可能性を最大限に発揮したパフォーマンスをするためには、コーチ陣と選手たちが同じ方向を向くことが極めて重要です」

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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