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日野自動車・佐々木隆道は「悔しさを共有」。早稲田大学についても…。【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
早稲田大学時代の慶應義塾大学。2005年度のキャプテンだった。(写真:アフロスポーツ)

ただただ簡潔。大阪の啓光学園高校、早稲田大学、サントリーと全ての所属先でキャプテン就任と各カテゴリーでの日本一を経験したプロラグビー選手の佐々木隆道が、11月19日、いまいるクラブの大敗を振り返った。

場所は神奈川・ギオン相模原スタジアム。佐々木が今季から加わった日野自動車は、トップイーストDiv.1の第8戦目に挑む。トップリーグ(国内最高峰)経験のある相模原重工との全勝対決では、献身的な組織守備やフルバックのギリーズ・カカ(男子7人制ニュージーランド代表)のハイボールキャッチなどで見せ場を作ったが、肉弾戦でじりじりと後退。0―34で敗れた。

国際レベルの指導者を目指す過程として発展途上の新天地を選んだ佐々木は、これまでの体験をもとに、これから進むべき道を明かす。普遍的な能力開発のメソッドに昇華されそうなキーワードを、随所にちりばめた。話題が母校ラグビー部に転じた際も、その流れで話した。

日野自動車は、社員選手の勤務時間を短縮しないまま、国内最高峰トップリーグへの昇格を目指す。

目標であるトップリーグ昇格を果たすには、「トップチャレンジシリーズ1」に出場してトップになるか、今季のトップリーグ下位チームとの入替戦に勝利する必要がある。

「トップチャレンジシリーズ1」に入れるのは、各地域リーグ首位に入った計3チームと、同リーグ2位チーム同士による「トップチャレンジシリーズ2」で1位となった1チームの計4チーム。トップイーストの首位を逃した佐々木ら日野自動車は、残り1試合(11月26日の日本IBM戦)を経てトップイースト2位以内に入り、かつ「トップチャレンジシリーズ2」を制したいところだ。

以下、一問一答(編集箇所あり)。

――この敗戦から得られたものは。

「自分たちに足りないものが分かったと思う。トップイーストの2位までと1位が、全然違うものだった。それをわかっただけで収穫というか。自分たちも特別な用意をせず、しっかりぶつかって、まぁ…思いっきり跳ね返されたので。ラグビーはフィジカルで負けたら、勝てない」

――倒れた後の起き上がりの速さなど、単純な「フィジカル」では測れぬ部分では日野自動車にも分があったような。

「相手の力に屈しないベースをもっと上げていかないと、日野の未来はない。そこからはどのチームからも目をそらせない。そこは急に…とはいきませんが、確実に強くなる部分ではある。楽しみが増えました。

ラインアウトでもプレッシャーをかけられました。もう少し、ミスなく継続できればチャンスはあった…。それも含め、フィジカルでプレッシャーを感じ、いつも通りのプレーができなかったといういまの状況なんだと思います。

戦えないわけではない。ただ、全勝対決で、相手もこちらを研究してくなか、前に出られなかったから負けた。日野がこの壁を越える時は、フィジカルで圧倒して、完勝するはずなので。何かをチョロっと変えて、目先の勝ちを追い求めたくはないです」

――ここまで、チームの成長は感じていますか。

「感じてますよ。ただ、きょうは勝つイメージで臨んでいたので…もっと、しごかなあかんかな、と。自分も含めて。この悔しさを皆で共有しているのはいいこと。これでハッピーな奴なんて1人もいない。伸びしろしかない」

――この日はフルバックのギリーズ・カカ選手が活躍。ハイボールの捕球や柔らかいランで魅せました。

「普段は温厚なナイスガイです。めっちゃ、ちゃんとしてますよ。いまいる外国人選手は、トレーニングもちゃんとする。皆にも、見習ってほしいです」

――ハードワーク、ですね。

「どれだけ目的意識を持ってやれているかという点は、日野にはまだ足りないかな、と。日野のフォワードはフィジカルで圧倒をしないといけない。だから、筋力アップだ! 除脂肪体重で〇キロアップだ! と、各々が明確なプランニングを持ちながらやっていくのがこれからの課題です」

――きょう、改めてその重要性を学んだのでしょうか。

「あぁ、まだ足りないな、と思ったかもしれない。ただ、(ロッカールームで)聞いたのは、何をやったらいいのかがわからない、ということ。そこは、コーチングスタッフとコミュニケーションを取りながら、最短コースで強化を…。選手側からも要望を出していきたいな、と」

――ちなみに母校、気になりますか。

「むっちゃ」 

――前年度まで現役選手として日野自動車でプレーした山下大悟新監督が就任した今季は、11月6日、大学選手権6連覇中の帝京大学に3―75で屈しましたが…。

「大悟さんのワセダは、やるべきことが明確。帝京大学戦ではそのやろうとしていることを強化の途中でぶつけて、跳ね返された。日野と似た状況です。僕の同級生は『(負けて)悲しい』と言っていますが、僕から観たら未来を感じる。何にこだわっているか、自分たちがどこで勝つのか。それを明確に持っているチームは必ず強くなる。あとはいいトレーニングと、いい選手がいい選手になっていくというところ(が必要)。努力は、止めちゃ、だめなんです」

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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