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帝京大学・岩出雅之監督、日本選手権・最後の大学枠に何を思ったか。【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
大学選手権では8連覇。前列右から4番目が亀井キャプテン。(写真:アフロスポーツ)

大学選手権8連覇中の帝京大学が1月21日、大阪・東大阪市花園ラグビー場で日本選手権の準決勝に出場。国内最高峰トップリーグ王者のサントリーに29―54と敗れたが、前半は21―21のタイスコアとした。トップリーグで15戦全勝したサントリーは、この日、今季の公式戦での最多失点を記録した。日本選手権での大学生チーム枠は、今季限りでの撤廃が決まっている。

試合後、岩出雅之監督と亀井亮依キャプテンが公式会見に出席。大会フォーマットや今後の目標設定などについて、質疑に応じた。

以下、会見中の一問一答(編集箇所あり)。

岩出監督

「悔しかったですね。よく学生も頑張ったところもありますし、未熟なところもあったと思います。勝って終わりたい気持ちは学生のなかにもあるでしょうし、僕自身も結果を残せなくて悔しい。学生の最後の涙は、悔しさの涙かな、と」

亀井キャプテン

「本音として、非常に悔しい気持ちです。ですが、この1年の集大成をぶつけようと試合に臨んだ結果、通じたものは多くあります。きょうが帝京大学のメンバーとして最後のゲームとなった4年生にとっても、後輩たちにとっても、未来に向けての自信に繋がった。敗戦という結果ですが、個人それぞれにとって、チームにとって、本当にいいゲームだったと思います」

――どんな点が上手くいったか。もしくは足りないと感じたものは。

岩出監督

「(課題は)セットプレー(押される傾向の強かったスクラムなど)に尽きる。1、3番早く代えたのは、(先発選手が)怪我持ちだったので。まだまだ不十分。ここは否定しません。ただ、僕は僕で、無理をさせることによって生まれる怪我もあるという考え方でした。来年はスクラムを安定させ、今年のよさを忘れずにいきます。

いまの学生から学べるのは、さまざまな楽しみ方を知っていること。痛い、しんどい、それを乗り越えるという発想ではなく、楽しもうか、と。多くのヒントをもらった。勝負に縛られない楽しみ方を堪能したし、学生たちはそれを熟成させていくと思います」

亀井キャプテン

「自分たちの一番の強みはディフェンス。前半はディフェンスからのアタック(ボールを奪ってからの攻撃)でスコアを取れたので、チームとして自信を持ちました。準備不足だった部分は、セットプレーのところだったかと思います」

――前半は一時7―21とリードされながら、21―21に追いついてハーフタイムを迎えました。

亀井キャプテン

「ファーストコンタクトの段階から、イケる(戦える)という自信を持って、チーム内でもそういうコミュニケーションをしていた。前半は最大14点差をつけられましたけど、しっかりついていって…という感じです。決して焦りはなかったです」

――来季から日本選手権で大学生枠が撤廃されます。

岩出監督

「その質問は、外せないですね。僕も何度かコメントを求められましたけど、意見が通るのなら何度でも言いますが、通らない以上は言っても仕方ない。決まったことへ、ベストを尽くします。

きょうも50点以上取られましたが、(戦前は)スコア上、中身で『これは残しておかないと』と思ってもらうことが使命だと思っていました。力足らずなところもあるので、こういう結果になりましたが…。

トップリーグのレベルと言っても、幅があります。(下位もしくは中位レベルのチームとの対戦から)1歩、1歩、経験しながら…というのではなく、最後(大学選手権の後)にドン、と、一番高いところ(優勝チーム)とやる。そのギャップを年間(強化計画)のなかで埋めていく(のが現状)。

7~8年前、大学選手権が終わってから日本選手権までに学生の気持ちを上げるのは、とても難しかったです。戦うモードに上がっていかない。その難しさを数年感じたなか、僕が日本選手権という目標を描かせ、年頭からそこを目指していった。そのように、お尻を叩かないといけないところもありました。ただ、これまで一度も、日本選手権への後ろ向きな空気感はチームにはありませんでした。今年は例年以上に早くテストもあったのですが、それで言い訳の空気が生まれない。そこに学生の成長を感じます。

(日本選手権の大学枠が)3年なくなれば、(在校生は)全員卒業します。(真剣勝負のなかでトップリーグ勢との力量差を)掴めるのは1から…ということになる。3年後、学生にまたそういうことをさせるべきか…。それは、日本協会の方が考えてください。我々は、与えられた状況で、ベストの準備、挑戦をしたいです。

(今後は)『トップリーグでやりたいか?』『日本代表になりたいか?』と、違う方法でモチベーションの素を作らないといけないです。そのなかで、トップリーグのチームさんと練習試合をさせていただく…。

ただ、(チームは)一部の選手だけで成り立っていない(控えを含め100人超の部員が在籍)。選手が代表で活躍したら皆、応援すると思いますが、それと同時に『仲間と頑張りたい』の気持ちが強い。18~22歳の純粋な部分もある」

――トップリーグへ参戦する意向は。

岩出監督

「色んな見方があるので、個人的に答えを出しにくい。もし、現実的にそうしたことをするのであれば、学生にとってリスクのないように。多面的にしっかりと観て、挑戦する同意を求めていただいて…という方がいい。僕は、怪我をさせたくないという気持ちが大きいですから。その思いからスタートさせて、色々な方のお知恵をいただいて、協会の方ともコミュニケーションさせていただいて、いい方向性を持ちながら、日本ラグビーにとってのベストが何なのかを模索したいです」

――改めてシーズンを振り返って。

亀井キャプテン

「挑戦というテーマを掲げました。日々、非常に戦ってきた毎日があって、きょうという日を迎えた。やはり、自分に負けた日もありました。でも、1人で乗り越えられないことを仲間で乗り越えました。ラグビーだけの結果ではなく、未来に繋がる結果を残せた、いい、1年だったと思います」

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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