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正体不明の3人組“ベジタブル系エレクトロ音楽ユニット”「うそつき・トマト」独占インタビュー

宗像明将音楽評論家
「ベジタブル・ラブ」のMVで主演する「淡路島の女王」こと寺嶋由芙

どこかで聴いたことがある圧倒的なキャッチーさ

何者かよくわからないアーティストにインタビューをするのは初めてのことだ。

正体不明の3人組“ベジタブル系エレクトロ音楽ユニット”「うそつき・トマト」が、2016年7月20日(水)にヴィレッジヴァンガード下北沢店数量限定で「ベジタブル・ラブEP」をリリースする。そんなプレスリリースを見ても、普通なら「誰だよ……」とスルーしてしまうところだが、音源を聴いた私は思わず前のめりになってしまった。

甘い声質のヴォーカル、エレクトロ・ポップなサウンド、歌詞の言葉遊び、そしてメロディーの圧倒的なキャッチーさ。どこかで彼らの音楽を聴いたことがある気がする……。

そう、2015年9月19日に解散した「あるバンド」を連想したのだ。

うそつき・トマトに関わる人々の「点と線」

「ベジタブル・ラブEP」の収録曲「ベジタブル・ラブ」のMVの主演は、BuzzFeed JAPANの記事「ヒドすぎて伝説となった淡路島のフェスで、『女神』になったポジティブアイドル」が大きな話題になったアイドル・寺嶋由芙。2016年7月8日(金)に新宿BLAZEでワンマンライヴ「寺嶋由芙 Solo Live 2016 ~わたしになる~」を開催する彼女もまた、「あるバンド」と一緒に「ゆふぃたす」としてCDをリリースするなど、縁が深い存在だ。

うそつき・トマトは、「MCとまこ」と「おとま」がヴォーカルで、「とまG」がトラック・メイカー兼プロデューサーの3人組としか明かされていない。あとは公式Twitterアカウントがあるだけだ。

CDのジャケットに登場しているのは、ともに「ミスiD2015」を受賞してモデルなどで活躍している山田愛奈来夢である。

画像

2016年7月20日(水)発売

ヴィレッジヴァンガード下北沢店数量限定

アーティスト名:うそつき・トマト

タイトル:ベジタブル・ラブEP

品番:TCL-001

価格:1.000円(税抜+税)

発売元:トマドールレコーズ

CD収録内容

1.ベジタブル・ラブ

2.おじゃまむし

3.うそつきと

2016年7月8日(金)10:00よりヴィレッジヴァンガード下北沢店店頭及び電話にて受付開始(ヴィレッジヴァンガード下北沢店 03-3460-6145/数量限定盤の為無くなり次第販売終了とさせて頂きます)。

それにしても「ベジタブル系エレクトロ音楽ユニット」って何だよ……。そんなわけで、プレスリリースの送信元に質問のメールを送ってみたところ、驚くほどの早さでうそつき・トマトから返信が届き、メール・インタビューに成功してしまった。

何者かよくわからないアーティストにインタビューをするのは初めてのことだ。

うそつき・トマトのとまGインタビュー

ーーうそつき・トマトはどんな活動をするユニットなのでしょうか?

とまG 中毒性のある楽曲でかわいい声、というコンセプトだけを追究した音楽グループです! なので、かわいくない歌や中毒性のない曲はつくらないように活動していきます。

ーーうそつき・トマトは今後どのぐらい活動をしていく予定なのでしょうか?

とまG 新鮮さを失うまで!

ーーところで野菜では何が好きですか?

とまG 南アメリカ、アンデス山脈高原地帯原産のナス科ナス属の多年生植物の果実で、赤くヘタがあって可愛いやつです。

東日本大震災以降の日本のポップスと匿名性

「中毒性のある楽曲でかわいい声、というコンセプト」という回答を読んで、私はやはり「あるバンド」のことを考えてしまった。そして、そうしたポップスは匿名性を帯びていても魅力的であることを音源を聴いていて実感した。

東日本大震災以降、私が感じている変化は、日本では匿名性の強いポップスはメインストリームであまり受け入れられなくなり、顔出しをしているなど身体性が伴っているアーティストしか受け入れられなくなったことだ。それはこの5年での静かな変化である。

うそつき・トマトがこのままずっと正体不明のまま活動するのかはわからない。ただ、彼らは匿名性をまといながらも、前述したような空気を突破できるような、強度の高いポップスを作っている。そこに私が静かに興奮していることを、うそつき・トマトに気づかれないようにしたメール・インタビューだった。

音楽評論家

1972年、神奈川県生まれ。「MUSIC MAGAZINE」「レコード・コレクターズ」などで、はっぴいえんど以降の日本のロックやポップス、ビーチ・ボーイズの流れをくむ欧米のロックやポップス、ワールドミュージックや民俗音楽について執筆する音楽評論家。著書に『大森靖子ライブクロニクル』(2024年)、『72年間のTOKYO、鈴木慶一の記憶』(2023年)、『渡辺淳之介 アイドルをクリエイトする』(2016年)。稲葉浩志氏の著書『シアン』(2023年)では、15時間の取材による10万字インタビューを担当。

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