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米大統領選、共和党最有力候補マルコ・ルビオとは?

室橋祐貴日本若者協議会代表理事
(写真:ロイター/アフロ)

いよいよ今年2月のアイオワ州党員集会が近づき、米大統領選が本格的にスタートしようとしている。予想に反し、共和党候補はトランプ氏がいまだにトップを走り、2位にはクルーズ上院議員がついている。

しかし、予測市場での共和党トップ、共和党の指導者たちがヒラリー・クリントン氏に最も勝つ可能性があると考えているのが、マルコ・ルビオ上院議員だ。今のところは一度も世論調査でトップに立ったことがなく、地味な存在だが、民主党候補に勝つことを意識したタイミングで伸びてくるのではないかと期待されている。

共和党のオバマ

ルビオ氏は1971年生まれの44歳で、両親がキューバからの移民であるヒスパニック系である。その出自や年齢、演説の上手さから「共和党のオバマ」と言われている。ただ、政策的には共和党らしく、「強いアメリカ」の復活を掲げ、伝統的家族観の復権、銃規制に反対、法人税引き下げ、オバマケアへの反対、対中国への強硬姿勢を掲げている。

現在の大統領選は、共和党候補は保守でなければ勝てず、マイノリティの多い本選ではリベラルでなければ勝てないと言われている。前回の大統領選ではオバマ氏と争った共和党ロムニー氏はヒスパニック票を取れなかったことが大きな敗因の一つと言われている。だがルビオ氏はヒスパニック系だ。さらに民主党候補ではサンダース氏が若者から支持を集めており、45歳以下の支持率では、サンダース氏はクリントン氏の2倍になっている。民主党候補の本命はクリントン氏に違いないだろうが、ルビオ氏はその若さからサンダース氏を支持していた層から支持を集めることができるかもしれない。

「100のアイデア」

ルビオ氏を有名にした一つの功績がある。ルビオ氏はフロリダ州下院議員時代の2006年に「フロリダ州の未来のための革新的な100のアイデア」という本を出版。この本はフロリダ州内の対話集会で集めた、フロリダ州民が考えた社会問題などに対する解決策をまとめたもので、100のアイデアのうち57のアイデアが可決されている。その後、上院選で大差をつけ当選し、ティーパーティーからも支持を集めている。ただ、ここ数カ月のルビオ氏の選挙活動は、対話集会で有権者と意見を交わす代わりに、選挙演説で十分に用意されたテーマに沿って話すことが多かった、との指摘も出ており、過去に成功した形をもう一度引っ張ってくるべきかもしれない。

強硬な対外政策

ルビオ氏は違法滞在者に法的地位と最終的には市民権を与えることになる包括的な移民関連法の起草に関わり、上院本会議で可決することに成功している。しかし、共和党が多数党にある下院では、投票さえ行われず事実上廃案となった。

その後ルビオ氏はティーパーティーから強い批判を集め、現在では不法移民に対して強硬姿勢をとっている。前回の大統領選では、ロムニー氏が不法移民に対してより厳しい姿勢をとった結果、ヒスパニック系の支持を集められず、オバマ大統領に敗れた。その反省からルビオ氏は移民に柔和な態度を取ろうとしたが、移民に雇用を奪われつつある白人有権者が多い共和党の支持を得るために姿勢を変えている。しかし、不法移民に対しては強硬姿勢を取りながらも、ルビオ氏は両親がキューバからの移民で、スペイン語を教わった経験や、自身が移民の家庭出身から上院議員にまでなったという成功体験を伝え、移民からの支持を集めることにも成功している。この移民からの支持は、意外にもオバマ政権がこれまでで最も多くの不法移民を本国に送還しており、ヒスパニック系有権者に厳しく批判されていることも影響しているだろう。

安全保障政策としては、米国は再び積極的な役割を果たすべきだと主張している。オバマ政権に対しては、「オバマ大統領は『アメリカが世界の多くの地域に関与し過ぎていて、グローバリゼーションのお陰でアメリカの力はこれ以上必要とされなくなっている』と考えて大統領になったようだが、その考えは間違いだ。彼は結局、米国の世界への影響力を弱め、同盟国を置き去りにし、無法な勢力の好き勝手放題を放置してきた。その結果、世界をより危険にし、アメリカの利益を危機にさらした」と強く批判している。

そして特に中国、ロシア、北朝鮮、ISISに強硬姿勢をとるべきだと主張している。米国内では特にオバマ政権の対中政策に不満が高まっており、オバマ政権で国務長官だったクリントン氏にも批判が向けられている。

「私は大統領として中国にこう対処する」と題したWSJへの寄稿では下記のように語っている(意訳)。

オバマ政権は、中国の違法な領海拡張や不当な経済活動、国内の人権弾圧を無視して、ひたすら対話を求め、中国政府の責任を促す。しかし、効果が全くないままである。

出典:http://www.wsj.com/articles/how-my-presidency-would-deal-with-china-1440717685

対中政策の目標は、第1に「米国の強さ」を保持するために、太平洋での優位性を取り戻す。第2には、米国経済を中国の果敢な攻勢から守る。第3には、米国の自由と人権の保護の立場から中国の人権弾圧を厳しく非難していくことである。

出典:http://www.wsj.com/articles/how-my-presidency-would-deal-with-china-1440717685

中国の軍事力を抑止するために、オバマ政権の実施する国防予算の「自動差し押さえ」を止め、アジア防衛を強める一方、日本など同盟国との安保協力を深めるべきである。

出典:http://www.wsj.com/articles/how-my-presidency-would-deal-with-china-1440717685

中国の習近平政権は独裁統治であり、米国主導のリベラルな国際秩序への脅威となっている。南シナ海や東シナ海での脅威に対しては、必要ならばためらわずに軍事力による抑止に努める。

出典:http://www.wsj.com/articles/how-my-presidency-would-deal-with-china-1440717685

日本の安保強化は積極的に支持し、「尖閣諸島は日本の領土だ」と一歩踏み込んだ発言までしている。ルビオ氏は上院外交委員会東アジア太平洋小委員会の筆頭委員も務めており、東アジアを強く重視するに違いない。

ルビオが大統領になれば日米関係強化

現在支持率1位のトランプ氏、2位のクルーズ氏が共和党の候補に選ばれても、その極端さから本選で勝つことは難しいだろう。しかし、ルビオ氏であればその出自や年齢、外交への知見などからクリントン氏に勝つことができるかもしれない。支持層が似ているジョブ・ブッシュ氏が撤退すれば、ルビオ氏の共和党候補選出が現実味を増してくるはずだ。

そしてルビオ氏が大統領になれば日米関係は強化され良好な関係を築けるだろう。ただ、関係が強化されれば、中国や朝鮮半島に介入する可能性が高まることも忘れてはならない。

日本若者協議会代表理事

1988年、神奈川県生まれ。若者の声を政治に反映させる「日本若者協議会」代表理事。慶應義塾大学経済学部卒。同大政策・メディア研究科中退。大学在学中からITスタートアップ立ち上げ、BUSINESS INSIDER JAPANで記者、大学院で研究等に従事。専門・関心領域は政策決定過程、民主主義、デジタルガバメント、社会保障、労働政策、若者の政治参画など。文部科学省「高等教育の修学支援新制度在り方検討会議」委員。著書に『子ども若者抑圧社会・日本 社会を変える民主主義とは何か』(光文社新書)など。 yukimurohashi0@gmail.com

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