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補強資金は110億円強? 身売りのミラン、気になる今後の10項目をチェック

中村大晃カルチョ・ライター
クラブ売却を明かしたベルルスコーニ氏(写真:Splash/アフロ)

心臓の手術を受けた病院を去りながらの、か細い声での発表だった。病気の影響とはいえ、弱々しさを感じさせる話し方に、一つの時代が終わったことを実感させられた人も少なくないはずだ。

ミランのシルヴィオ・ベルルスコーニ名誉会長が現地時間5日、中国資本にクラブを身売りすることを公式に認めた。1986年にミランを買収してから30年。数々のトロフィーを手に入れたベルルスコーニ時代が、ついに終わりを告げた瞬間だった。

近年の混迷があったとはいえ、ベルルスコーニの功績は計り知れず、感謝の言葉を口にするサポーターも少なくない。だが一方で、やはり気になるのは今後だ。クラブ買収は正式な契約に至っておらず、今後が不透明なところも少なくない。買い手が誰なのかも明確になっていないくらいだ。

そんななか、イタリア『ガゼッタ・デッロ・スポルト』が6日、ミランのこれからに関する10の疑問に答えを提示した。以下にその“回答”を紹介する。

1. 決定権は? アドリアーノ・ガッリアーニ現共同CEOの今後の役割は?

ガッリアーニはすでに、ニコラス・ガンチコフ新CEO候補と共同で仕事をしている。ヴィンチェンツォ・モンテッラ監督の招へいやジャンルカ・ラパドゥーラの獲得もその一環。今後もこの体制が続く見込みで、ガッリアーニは上級副社長としてとどまる可能性がある。

2. ガンチコフとベルルスコーニの今後の役職

中国サイドの考えが変わらなければ、ガンチコフが新CEOとなる。バルバラ・ベルルスコーニ現共同CEOとの「二頭体制」に至るまでのガッリアーニの役職だ。ベルルスコーニは株式20%を持ち、名誉会長を務める見込み。

3. B・ベルルスコーニの役割

ガンチコフ・ガッリアーニとの“共存”は難しい。商業部門CEOという現職を失い、別の役職に就くのが合理的だ。いずれにしても、B・ベルルスコーニも取締役の一人となる。

4. 補強の候補と投資額

モンテッラ監督の希望は守備と中盤の強化だが、予算を推測するのは困難。1億ユーロ(約111億円)前後とみられるが、今後の“商売”次第で金額は上下する。

5. ファイナンシャルフェアプレーの懸念

インテルとは状況が異なるが、直近の決算で大きな赤字を計上している。新オーナーは自由に運営できるが、欧州カップ戦への復帰を見据えて検討が必要となる。12月までにUEFAと「自主協定」を結ぶことが可能。

6. モンテッラに対応する人物

ガッリアーニとガンチコフ。ガッリアーニは2日前にもミーティングをしている。モンテッラは明確なアイディアを持ち、特殊なプレーをつくり上げてきた。補強に関して意見があるのは当然だ。彼のポゼッションサッカーに、(現所属の)全選手が適しているわけではない。

7. 中国とのパートナーシップ関係の可能性

世界有数のマーケットにミランが期待することはあり得るが、特に株式80%を取得するのが誰なのかを知るべく、様子をみる必要がある。

8. 今後の取引の予定

来週、株式80%の移行に関する仮契約への調印が予定されている。最終的に取引が完了となる「クロージング」は9月までに実現の見込み。遅くともそのときまでに、新オーナーが誰かは分かるはずだ。

9. ミランの今後の目標

現時点で合理的なのは、すぐに欧州の舞台に復帰し、可能な限り早くにチャンピオンズリーグに戻ること。

10. 新スタジアム案は消滅?

ポルテッロの新スタジアム建設はないだろうが、ベルルスコーニが今年2月、この件はオープンに考えていると発言した。ガンチコフは以前も施設に関する仕事を手掛けており、現在も大きな注意を払っている。新体制でもスタジアム問題が優先事項の一つとなり、サン・シーロの今後についてインテルと同調していくと考えるのが妥当だ。

正直、不透明感が強いという印象はぬぐえないだろう。それだけ、まだ状況が分かっていないということを示している。実際に『ガゼッタ』が報じたように、補強資金が1億ユーロかも不明瞭だ。

だが、ベルルスコーニ氏は「今後2年で4億ユーロ(約447億円)を投資するように求めた」と述べている(『ガゼッタ』は今後2年でなく3年になる見込みと報道)。これが事実であれば、名門ミラン復活に向けの弾みとなることは確かだろう。

カルチョ・ライター

東京都出身。2004年に渡伊、翌年からミランとインテルの本拠地サン・シーロで全試合取材。06年のカルチョーポリ・W杯優勝などを経て、08年に帰国。約10年にわたり、『GOAL』の日本での礎を築く。『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿。現在は大阪在住。

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