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ミラン&インテル、さらなる成長に期待? サン・シーロにCLアンセムは戻るのか

中村大晃カルチョ・ライター
ミランとインテルの本拠地サン・シーロ(写真:アフロ)

イタリアサッカー連盟のカルロ・タヴェッキオ会長は先日、ユヴェントスの覇権が続くセリエAにミランとインテルの復権が必要と発言した。そのミラノ勢は、良いムードで2016年を終え、2017年初戦も白星を手にしている。彼らはチャンピオンズリーグ(CL)の舞台に戻ることができるのだろうか。

◆タイトルを取り戻したミラン、さらなる改善の余地あり

スーペルコッパでユヴェントスをPK戦の末に沈め、5年半ぶりとなるタイトルを獲得したミランは、最高の形で2016年を終えたのに続き、2017年も好スタートを切った。カリアリに苦しみながらも、88分という終盤にカルロス・バッカが決勝点を挙げ、白星発進している。

ミランは3位ナポリに勝ち点2差の5位。勝ち点36は、最後にCL出場権を獲得した2011-12シーズンの勝ち点40に続く数字だ(『コッリエレ・デッロ・スポルト』参照)。さらに、スーペルコッパの関係でボローニャとの未消化試合を残している。

本田圭佑の去就も注目される1月のマーケットで、ミランが大物を獲得する可能性は低い。身売りが3月に延期となり、補強資金がないからだ。

だが、『ガゼッタ・デッロ・スポルト』は10日付の記事で、補強をせずともミランには改善の余地があると指摘した。一つは試合前半のパフォーマンスの向上。もう一つが、継続性を身につけることだ(「ミランはアメリカのテレビ映画に出てくるモーテルのネオンのようにチカチカしている」)。

また、4-3-3で今季躍進したミランだが、後半戦では「プランB」も求められる。カリアリをこじ開けるのに、ジャンルカ・ラパドゥーラをバッカと並べて4-2-4にしたことは、解決策の一つとなるかもしれない。『ガゼッタ』は、4-2-3-1にすればよりバランスも取れると提案した。

さらに、序盤戦の輝きを失っているエムバイェ・ニアンと、ゴールから遠ざかっていたバッカの調子を取り戻させることができれば、それもさらなる上昇への弾みとなる。その意味で、新年初戦でバッカがゴールを取り戻したのは大きい。

最後に『ガゼッタ』が挙げたのは、延期が繰り返されている身売りの件だ。この問題が解決すれば、不確定要素がクリアされることは言うまでもない。

◆復調インテルは中盤を強化、日程も追い風?

開幕前からのドタバタを引きずったインテルも、11月に就任したステファノ・ピオリ監督がチームを立て直した。就任当初は公式戦4試合で1勝1分け2敗だったが、その後は公式戦4連勝で2016年を締めくくり、苦手の新年初戦もウディネーゼに先制を許しながら2-1と逆転勝利を収めた。

ただ、そのウディネーゼ戦でも立ち上がりに名手サミル・ハンダノビッチが不用意なパスミスを犯し、危険を招く場面があった。この自陣でのパスミスは、『ガゼッタ』がインテルの課題の一つに挙げた点だ。また、ハイプレスを求めるピオリ監督の戦術では、攻守の切り替えが重要となる。『ガゼッタ』は、高い攻撃力を持つインテルの守備への移行も改善点と指摘した。

リーグ戦で6戦5勝のインテルは、7位とまだ欧州カップ戦出場圏外にある。だが、ナポリとは勝ち点5差。ピオリ監督や主将マウロ・イカルディをはじめ、チームはCL出場権獲得を諦めていない。

オーナーの蘇寧グループもそれは同じだ。だからこそ、インテルはこの1月も補強に動いた。今季旋風を起こしたアタランタの主力ロベルト・ガリアルディーニの加入が濃厚となっている。また、ピオリ監督の初陣で負傷離脱したギャリー・メデルの復帰も一つの“補強”だ。

加えて、日程もインテルに味方している。CL出場権を争うライバルたちとのビッグマッチの多くをホームで迎えられるからだ。現時点で上に立つ6チームのうち、ユヴェントスとラツィオを除く4チームとはホームで対戦する。また、不本意ながらヨーロッパリーグでグループステージ敗退に終わったことも、セリエAでトップ3を狙ううえでは追い風となるだろう。

もともとは戦力を高く評価されていたインテルだけに、安定すれば浮上が期待されるのは当然だ。まずは格下との対戦が続く1月に連勝街道を続けられるかどうかが鍵となる。

◆今年中にCLアンセムを聞くことができるか

タヴェッキオ会長は9日、冒頭の発言について「ローマやナポリ以上にミランとインテルが必要と言ったわけではない」と述べた。南部の雄たちよりミラノ勢を重視しているわけではないという釈明だ。ただ、決してローマとナポリを貶めているのではなく、ミラノ勢の復活を望んでいるファンが世界中に少なくないことも確かだろう。

ミランは3シーズン、インテルは5シーズン、それぞれCLから遠ざかっている。サン・シーロのサポーターたちは、再びアンセムを聞くことができる日を心待ちにしているはずだ。ミラノの名門2チームは今年中にその日を迎えられるだろうか。

カルチョ・ライター

東京都出身。2004年に渡伊、翌年からミランとインテルの本拠地サン・シーロで全試合取材。06年のカルチョーポリ・W杯優勝などを経て、08年に帰国。約10年にわたり、『GOAL』の日本での礎を築く。『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿。現在は大阪在住。

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