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トッティの花道に? ユヴェントスに1差のローマ、悲願の16年ぶり優勝は可能なのか

中村大晃カルチョ・ライター
ローマでラストシーズンとなる予定のフランチェスコ・トッティ(写真:ロイター/アフロ)

暫定ではあるが、絶対王者との勝ち点差は1ポイントに縮まった。ローマは16年ぶりの悲願達成を果たせるのか。後押しする声は少なくないようだ。

◆1カ月でムードは一転

12月17日の直接対決で、ローマはユヴェントスに敵地で0-1と敗れた。ゴンサロ・イグアインの一発に沈み、勝ち点差を7とされ、「今年もダメか」と肩を落としたサポーターも多かったに違いない。だが、それから1カ月で状況は変わった。

ミランとのスーペルコッパでタイトルを逃し、落胆に包まれながら2016年を終えたユヴェントスは、2017年になっても調子が今ひとつだ。コッパ・イタリアではベスト8に勝ち進んだが、公式戦で7試合ぶりとなる複数失点を喫した。15日のセリエA第20節ではフィオレンティーナに1-2と敗北。黒星の数(4)だけなら、ナポリを下回り、ローマと並んでいる。

一方で、ローマはここ7試合でユーヴェ戦以外の6試合を制している。20節を終えて14勝は、前回優勝した2000-01シーズンの15勝に続く数字だ。41得点18失点は、ともにリーグ2位の成績。40得点16失点のユーヴェとほぼ変わらない。

ユーヴェは降格候補クロトーネとの試合が未消化だが、実質的な勝ち点差が4だとしても、残り18試合なら射程距離だろう。いずれにしても、ローマへの期待が高まっていることは確かだ。

◆期待要素は少なくない?

実際、『ガゼッタ・デッロ・スポルト』『コッリエレ・デッロ・スポルト』の両紙は、17日付の記事で、ローマには逆転優勝を信じるだけの理由があると報じた。

両紙が共通して指摘している一つが、守備の成長だ。ここ6試合で2失点の守備陣は、クリーンシートが今季8試合とエンポリに次ぐリーグ2位。最少失点チームが優勝すると言われるセリエAにおいて、守備が課題だったローマだが、今季は攻守のバランスが取れている。

その影響もあってか、ジェノアとウディネーゼに1-0と競り勝ったここ2試合のように、以前なら勝ち点を落としていたような試合で結果を出せるようになったのも大きい。

ウルトラスの応援拒否にもかかわらず、本拠地オリンピコで圧倒的な強さを誇っているのもアドバンテージだ。今季はホームで9戦全勝。アウェー扱いだったダービーを含めれば、10戦全勝と無類の強さだ。そのオリンピコでユーヴェ、ナポリとの直接対決を迎えられるのも追い風となる。

スケジュールでいえば、2月に欧州カップ戦が再開されるが、ユヴェントスがチャンピオンズリーグでビッグイヤーを目指しているのに対し、ローマはヨーロッパリーグよりもリーグ戦を優先できる。欧州の舞台は心身の消耗を余儀なくされるだけに、これもローマにとって利点と言えるだろう。

加えて、後半戦はアフリカ・ネーションズカップに出場しているモハメド・サラーの再合流を待ちつつ、長期離脱したアレッサンドロ・フロレンツィやマリオ・ルイの復帰に期待できる。今季は起用選手数がリーグ最少の20名と、選手のユーティリティー性を生かしてきたルチアーノ・スパレッティ監督だが、疲労が蓄積される後半戦はターンオーバーも使えるようになるはずだ。

◆識者からも高評価

『コッリエレ』は、カルチョ界の関係者50名に「ローマはスクデットを勝ち取れるか?」とアンケートを実施。「ノー」と回答したのは、わずか5名だった。ローマがユーヴェに対抗できるとみる識者は少なくない、むしろ多いということだ。

『コッリエレ・デッロ・スポルト』紙のアンケート回答
『コッリエレ・デッロ・スポルト』紙のアンケート回答

◆悲願に向けて…

ローマはトロフィーに飢えている。最後にスクデットを獲得したのは、中田英寿氏が所属していた2001年のこと。ここ15年で2位に終わったシーズンは8回もある。前回コッパ・イタリアを制した2008年以降は無冠が続いており、アメリカ資本の現経営陣はタイトルを獲得したことがない。ユヴェントスも史上初の6連覇を目指しているが、モチベーションならローマも負けないはずだ。

特に、今季はキャプテンのフランチェスコ・トッティにとってラストシーズンとなる予定だ。ローマは彼にとって2度目、クラブにとって4度目となるスクデットを獲得し、40歳となったシンボルに花道を用意することができるだろうか。

カルチョ・ライター

東京都出身。2004年に渡伊、翌年からミランとインテルの本拠地サン・シーロで全試合取材。06年のカルチョーポリ・W杯優勝などを経て、08年に帰国。約10年にわたり、『GOAL』の日本での礎を築く。『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿。現在は大阪在住。

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