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「中川家」、第1回「M-1グランプリ」の激闘は「地獄だった」

中西正男芸能記者
5年ぶりに復活する「M-1グランプリ」第1回王者の「中川家」

若手漫才日本一決定戦「M-1グランプリ」(決勝は12月6日・後6時30分から生放送、朝日放送・テレビ朝日系)が5年ぶりに復活し、「和牛」、「銀シャリ」ら決勝進出8組が発表されました。2001年、第1回大会でチャンピオンになり、今や、大看板への道をひた走る兄弟漫才コンビ「中川家」。「今でも、あんなに緊張した漫才はない」(礼二)、「地獄でした」(剛)と振り返る大舞台の思い出。そして、新たにそこに挑む後輩へのエールを通じて、あふれる“漫才愛”を語りました。

ホンマにホンマやったんや

「もう14年前になりますか。今、振り返っても、やっぱり、第1回というのは特殊やったと思います。出る側も、作る側も、見る側も、もちろん初めて。最初は『吉本のことやから、(賞金の)1000万円って言っても、1000万ウォンでした!!みたいなオチがあるんちゃうの?』なんて言うくらい、そんな規模で、そんな賞金の大会なんて、ホンマにできるの?というところから疑ってもいましたからね」

礼二「正直、1回戦が始まってからでも『どこかでフワッとなくなってたりするんちゃう?』と思ってましたね(笑)」

「それくらい、斬新というか、規格外というか。ただ、そのうち2回戦、3回戦と行われていくし、徐々に『あれ?これって、ホンマにやるんや』となってきて」

礼二「さすがに準決勝になってくると、やっと『ホンマにホンマやったんや』と僕らも信用するようになってました」

「さらに、島田紳助さん、松本人志さんたち審査員の方々のお名前ですよね。それを聞いて『うわ、これ、大変なことじゃないの…』となりましたね」

礼二「準決勝くらいになると、出てる芸人も『これは普通の大会と違う…』というのが肌で分かってきたんでしょうね。普段の劇場ではベラベラしゃべってるようなメンバーが、予選会場で顔を合わせても、全然しゃべらんようになってました」

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1000万円の札束を見て…

「決勝で言うと、やっぱり出番順の抽選で1番を引いた瞬間、正直『終わった…』と思いました。ただ、同時に開き直りも出てきて『こうなったら、もう仕方ない。とにかく、爪痕だけ残して帰ろう』と、どこか腹をくくれたのは、結果的には大きかったんですけどね」

礼二「今から思っても『M-1』の決勝以上に緊張の中で漫才をしたことはないです。間違いないです。本番前は話をすることもなく、二人で『…オエーッ』とえづいてばっかりでした。何も食べずに水ばっかり飲んで」

「また、最初の大会でスタッフさんも当然慣れてないから、午後6時半から本番やったんですけど、出演者は集合が正午やったんです。でも、リハーサルや言うても、オープニングの形でちょこっと並んで、マイクの高さを調整する。それだけでしたからね。その後“自由時間”が6時間くらい…。そらね、この時間は地獄でしたよ(笑)。トップバッター、全国放送、あれだけの審査員がいらっしゃる、絶対に失敗できない…。いろいろな思いが頭に渦巻いてえづいている僕らの真横を、運悪く、実際に1000万円の札束が運ばれて行きまして…。そこでまたプレッシャーが増して(笑)」

礼二「ただ、実際にネタが始まったら、意外と冷静やったんです。ここにきて1番を引いた開き直りがあったのか。漫才ばっかりやってきた積み重ねがあったのか。それは今でも分かりません。ちゃんとお客さんも見られましたし、そこは自分らでも驚きました」

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生活は一気に変わった!

「結果、ありがたいことに優勝することができて、会見だ、インタビューだとなっていったんですけど、ホンマに正直なことを言うと、僕は、とにかく1秒でも早く家に帰りたかった。この緊張の空間から逃れて、リセットしたかった。本番が終わって優勝した後でも、神経の張りつめ方が全くゆるまないという特殊な時間でした」

礼二「でも、翌日から、生活は一気に変わりました。今までテレビで見ていた番組に10本、20本と出ることになる。あとは取材のラッシュ。一晩で人生が激変しました」

「それまでNGKで漫才やって、近くの食堂で飯食って帰るだけやったのにな(笑)。『タクシーチケットって、そんなんあるんや』『叙々苑弁当って、なんやねん?』『えっ、この人、女優さんやんな…。普通に話しかけてくるやん』とか。今まで会う女性と言えば「今いくよ・くるよ」さんに末成由美さん、未知やすえさん、「ハイヒール」さん、なるみさん、以上!!やったのに(笑)」

礼二「だから、今回『M-1』復活の話を聞いてまず思ったのは『よかったな』と。やっぱり、あれだけの緊張感の中でやるなんてことは、普通ないですから。そして、芸人人生で何か目指すものがないと張り合いもないし、何がよくて何がダメなのかも分からなくなる。『M-1』は、世間に対する腕試しやと思ってます。2分、3分、4分、漫才をやるだけで、自分の位置がすぐ分かる。そして、僕らはその『M-1』をとったんやから、少なくとも、漫才は一生やり続けないといけないと思ってます」

「まぁ、歌手が歌を歌わないわけにはいかないですからね」

礼二「『M-1』をとったもんが、漫才をやらなかったら『どうなっとんねん』という話ですから」

今年の決勝進出者に言うなら…

「今から決勝を控えるメンバーに言うならですか?“普段通り”。これだけです。勝ちたいがために張り切って、第一声が『どぉーもー!!』と上ずってしまう。これはね、メチャメチャカッコ悪いですから。『そんな声、出したことないがな!!』みたいな声出すのは、まぁー、恥ずかしい(笑)。また、そんな緊張感みなぎる声出しても、お客さんは笑わないですしね。なので、とにかく、第一声の高さ、これには気をつけてくださいと。あと、こんな大舞台でそれをやったら、確実に、一生イジられますしね(笑)」

■中川家(なかがわけ)

1970年12月4日生まれの剛と1972年1月19日生まれの礼二の兄弟漫才コンビ。大阪府守口市出身。大阪NSC11期生。同期は陣内智則、ケンドーコバヤシ、たむらけんじら。92年、結成。若手時代から、芸人仲間の誰もが認める高い技術で注目される。2001年に行われた第1回「M-1グランプリ」で優勝。MBSテレビ「痛快!明石家電視台」などに出演中。また「中川家」以外にも「ますだおかだ」「フットボールアワー」「ブラックマヨネーズ」「チュートリアル」ら歴代「M-1」王者が集う、朝日放送・テレビ朝日系の特別番組「M-1グランプリ復活記念SP 王者達の緊急サミット!」(11月29日、午後1時55分)にも出演する。

芸能記者

立命館大学卒業後、デイリースポーツに入社。芸能担当となり、お笑い、宝塚歌劇団などを取材。上方漫才大賞など数々の賞レースで審査員も担当。12年に同社を退社し、KOZOクリエイターズに所属する。読売テレビ・中京テレビ「上沼・高田のクギズケ!」、中京テレビ「キャッチ!」、MBSラジオ「松井愛のすこ~し愛して♡」、ABCラジオ「ウラのウラまで浦川です」などに出演中。「Yahoo!オーサーアワード2019」で特別賞を受賞。また「チャートビート」が発表した「2019年で注目を集めた記事100」で世界8位となる。著書に「なぜ、この芸人は売れ続けるのか?」。

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1999年にデイリースポーツ入社以来、芸能取材一筋。2019年にはYahoo!などの連載で約120組にインタビューし“直接話を聞くこと”にこだわってきた筆者が「この目で見た」「この耳で聞いた」話だけを綴るコラムです。最新ニュースの裏側から、どこを探しても絶対に読むことができない芸人さん直送の“楽屋ニュース”まで。友達に耳打ちするように「ここだけの話やで…」とお伝えします。粉骨砕身、300円以上の値打ちをお届けします。

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