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日本の接客は世界遺産である

にしゃんた社会学者/タレント
Yokoso! Japan公式ロゴ http://www.jnto.go.jp/

最近、日本人の接客について思うことがある。改札を通る時に「おはようございます」とか「有難うございます」とか言ってくれる駅員さんがいる。すごく良い。爽やかな気持ちになれる。仮にマニュアルであっても、無意識であってもそれで良い。素晴らしい。

微妙なところに敏感な私ですが、実は、挨拶を省略される人たちがいる。外国人である。言ってもわからない。もったいないと思っているのでしょうか。

私などは、改札機で電子マネーをタッチするのに集中した緊張感から解き放たれた瞬間に駅員さんと挨拶を交わしたいと思う。しかしおそらく駅員さんからは、日本語が出来ないと思われて挨拶の対象から外されているため、淋しい思いをした経験は数え切れない。

今日の新幹線の車中で切符を見て回る車掌。私の順番が来たので切符を見せることに。そこで「Thank you very much ! 有難うございます!」と珍しい挨拶を受けたのであった。車掌は、いろんな可能性を考えて二言語で応対したに違いない。気を配ってもらったことが嬉しかった。

撮影 Nicolas Alejandro Street Photography
撮影 Nicolas Alejandro Street Photography

昔の話だがコンビニで買い物した時「サンキュー ベリました」と言われことがある。「Thank you very much 」と「有難うございました」の英語と日本語をブレンドした挨拶であった。お客さんが少ない店で、しかも早朝の買い物だったので、店員さんも少し寝ぼけていたのでしょうか?私の顔を見た瞬間とっさに口に出て来た言葉だったに違いない。でもちゃんと誠意を感じたし、嬉しかった。

中には英語で応対を行う駅員もいる。これだけだと聞こえが良いが、ただ英語を喋ったら良いというものでもない。客が外国人に見えても英語が得意とは限らない。英語が全くわからない、どちらかと言えば英語より日本語が得意な人も多くいる。

客が日本語で質問しているのに英語で答える駅員もいる。相手は英語が解るという思い込みの可能性もある。日本語で聞かれているのだから日本語で答える方が間違いないだろう。そして駅員の英語の質についても少し考える必要がある。「No!」「Go!」などといきなり無表情で言われることもよくある。言葉があまりにも乱暴である。英語にも丁寧語というものがあることを知る必要があるし、表情も大事である。外国人には外国でのような冷たい接客で良いと開き直るのも間違いである。

日本の挨拶の素晴らしさは、世界のどこを探してもない。電車の中で車両を離れる際、振り返ってわざわざお辞儀をしてくれる車掌や車内販売員。外国人はみなカルチャーショックを受ける。

写真 Norio.NAKAYAMA
写真 Norio.NAKAYAMA

日本のお店は買い物をしなくても、店に来てくれるだけでお礼を言ってもらえる。こんな国はない。以前、入ったコンビニでトイレを使っただけなのに、それでも店を後にする時、「有難うございました」と言われたことがある。その時はあまりにも申し訳なく、思わず「こちらこそ有難うございました」とお礼を言った記憶がある。

日本の産業の中でダントツ伸びているもの。それは観光業である。日本の大事な収入源でもある。丁寧な接客や挨拶を支えているのは「お客様は神様」の精神なら、観光客ももちろん対象になってくる。地方も国も財政赤字が続いている日本。直接、間接の違いはあっても、観光業からの恩恵を国全体が受けることになる。そのため生業にしている接客業者だけではなく、老若男女の一般人も丁寧な接客の実践を意識する必要があろう。

外国人が日本を訪れる大きな目的の一つは世界遺産である。実は、日本の世界遺産は富士山や富岡製糸場などの有形のものだけではない。「おはようございます」や「有難うございます」の元気で爽やかな挨拶も「世界遺産」である。

外国人に対しての挨拶はどうしたら良いか?答えは一つ。日本人に対してと同じ挨拶で接しましょう。日本語で「おはようございます」と「有難うございます」で良い。日本に来ている外国人は皆それぐらいの日本語を解っている。解らなかったら覚えてもらいましょう。だって「世界遺産」だから。お互いに時間のゆとりがあったら、「有難う」はどういう語源なのかのうんちくも語ってみましょう。さすがにそこまで知っている外国人はいないはず。まちがいなく日本のことを輪をかけて惚れ直すと思います。

お読み頂き有難うございます。

撮影:Vive La Palestina
撮影:Vive La Palestina

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社会学者/タレント

羽衣国際大学 教授。博士(経済学)イギリス連邦の自治領セイロン生まれ。高校生の時に渡日、日本国籍を取得。スリランカ人、教授、タレント、随筆家、落語家、空手家、講演家、子育て父などの顔をもっており、多方面で活動中。「Mr.ダイバーシティ」などと言われることも。現在は主に、大学教授傍ら、メディア出演や講演活動を行う。テレビ•ラジオは情報番組のコメンテーターからバラエティまで幅広く、講演家として全国各地で「違いを楽しみ、力に変える」(多様性と包摂)をテーマとする ダイバーシティ スピーカー (多様性の語り部)として活躍。ボランティアで献血推進活動に積極的である。

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