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なぜ今、ハンブルクが注目されているのか? 絶対に見逃せない6つのスポット

シュピッツナーゲル典子在独ジャーナリスト
ハンブルクで一番人気のミニチュア・ワンダーランド(c)n.spitznagel

今、世界の熱い視線を浴びているドイツ北部の街ハンブルク。2016年外国人が選ぶドイツ人気観光名所トップ100でこの街一番の人気スポット鉄道模型館「ミニチュア・ワンダーランド」が1位に選ばれ、大きな注目を集めた。

2017年1月には建築と音楽の新ランドマーク「エルベフィルハーモニーコンサートホール」のオープンや、7月にはG20 サミット開催都市として大役を務めるなど、ますます目が離せない。

この街で絶対に見逃せない6つのスポットを巡り歩き、その魅力を探った。

湾岸都市ハンブルク

港町ならではの新鮮な魚介類を満喫したい。海の香りが漂う小エビは大変美味(c)n.spitznagel
港町ならではの新鮮な魚介類を満喫したい。海の香りが漂う小エビは大変美味(c)n.spitznagel

人口180万弱を擁する国内第二規模の大都市ハンブルクは北部の経済中心地。この街は、エルベ川の支流・アルスター川の河口にある欧州最大級の港を有し、中世からハンザ同盟の中心的役割を果たしてきたドイツ最大の物流拠点だ。

ハンブルクの旧市街には海外から船便で運ばれた商品を運ぶための運河があちこちに見られる。この商品を保存するために建造されたのが、赤レンガの倉庫街だ。

1.世界最大の鉄道模型館「ミニチュア・ワンダーランド」

この倉庫街の一角にあるのが、鉄道模型館「ミニチュア・ワンダーランド」。鉄道やジオラマファンでなくても、是非訪れておきたい施設だ。

ミニチュア・ワンダーランドは、2016年度ドイツ観光局による「外国人が選ぶドイツ人気観光名所トップ100」の1位に選定されるという快挙を遂げた。(9月30日公表)

イタリアのマイアミといわれるリミニ海岸も公開されたばかり(c)n.spitznagel
イタリアのマイアミといわれるリミニ海岸も公開されたばかり(c)n.spitznagel

同館CEO(最高経営責任者)ブラウン氏は、1位のニュースを受け、「思いもよらぬ吉報に、椅子から転げ落ちそうになった」と、驚きの声をあげた。

ブラウン氏は「館内を見ることで、様々な地域を知ってもらいたい」を目標に掲げ、2001年の開業から着々と鉄道模型の世界を拡大中だ。

折しも、9月末に9つ目のセクション「イタリア」が一般公開されたばかり。今後は、モナコや英国、日本を含むアジアセクションを実現したいという。

館内は、中央ドイツ、北欧、ハンブルク、スイス、アメリカなどセクション別に鉄道模型や街の風景などが3フロワーにわたり展示されている。その多くがファンタジーの世界とは言え、どのセクションも細部に創意工夫が施されており、一日中いても飽きさせない。

ハンブルク観光の出発点として、是非、ゆっくり鉄道模型とその風景の奥深さを楽しんでもらいたい。

2.世界遺産・赤レンガ倉庫街とチリハウスを含むコントーアハウス地区

異国情緒たっぷりの倉庫街でボート巡りはいかが(c)n.spitznagel
異国情緒たっぷりの倉庫街でボート巡りはいかが(c)n.spitznagel

ハンブルク話題のスポット2番目は、おしゃれな赤レンガの建物が連なる倉庫街。1883年から建設が始まった建造物の数々は、北ドイツのレンガ造りゴシック建築の影響を多大に受けたという。倉庫街とチリハウスを含むコントーアハウス地区は、2015年世界遺産に登録された。

倉庫街とこの地区は、2016年外国人が選ぶドイツ人気観光名所トップ100で、20位となった。

ここの倉庫街の特徴は、建物の片側は道路に面し、反対側は水路に面している点。水路側は、世界中から運び込まれたコーヒー、茶、カカオ、香辛料などの商品が荷揚げできるようになっている。

現在、このような商品の一部を保管する倉庫のほか、オフィスが入っていたり、PCや絨毯など高級品の保管場所がある。

左・建物東側が船首のような形をしたチリハウス(c)n.spitznagel
左・建物東側が船首のような形をしたチリハウス(c)n.spitznagel

倉庫街から運河沿いを東へ1キロほど歩くと、商館として建てられたハンブルク最初の高層ビルのひとつチリハウスに到着する。

ドイツの建築家フリッツ・ヘーガー設計のチリハウスは、北ドイツ表現主義建築を代表する建物として、独特な雰囲気を持つ。チリハウスの名前はスパイスのチリから?と想像するかもしれない。実は、チリ硝石(しょうせき)の輸入によって莫大な富を得た海運王ヘンリー・スローマンがチリハウスの建築主だったことに由来している。

このチリハウス周辺は、19世紀末から巨大な建物にいくつもの商社が入るオフィスビル郡が建てられ、コントーアハウス地区と呼ばれる。

北米を手本とした建築様式コントーアハウスの特徴は、各階の部屋が壁で仕切られておらず、入居者の好きなように対応できること。後から壁を加えたり、壁をはずしたりと臨機応変に使えるコントーアハウスは、当時としては画期的なオフィスビルだったという。

3.ハーフェンシティと音楽の殿堂エルプフィルハーモニー

倉庫街南の新開発地区「ハーフェンシティ」は、ハンブルクの都市計画看板プロジェクト。歴史的な赤レンガ倉庫街の建築郡とハーフェンシティの近代的な建築のコントラストがとても印象的な新開発地区だ。

ハーフェンシティはハンブルクの注目新スポット(c)n.spitznagel
ハーフェンシティはハンブルクの注目新スポット(c)n.spitznagel

この地区で際立って目を引く建物は、船を思わせる形が特徴のエルプフィルハーモニー(画像中ほど・波を打ったような形の屋根が印象的な建物)。この建物は、かっての埠頭倉庫の上部にあり、コンサートホールの他、ホテル、住宅も併設されている。

3つのコンサートホールは、来年1月オープンし、北ドイツ放送エルプフィルハーモニー管弦楽団(旧北ドイツ放送交響楽団)の新本拠地となる。ビジターは、まず公共広場「プラザ」に行く。高さ37メートルのプラザから眺める港や街の大パノラマは息を呑むほど美しい。

2025年完成予定のハーフェンシティは、フィルハーモニーの他、職場と住居、商店、レジャー、飲食、文化が混在する生き生きとした都市空間となるそうだ。

4. 歓楽街レーバーバーンはビートルズの育ったゆかりの地

ビートルズゆかりのクラブ「インドラ」は今も健在(c)n.spitznagel
ビートルズゆかりのクラブ「インドラ」は今も健在(c)n.spitznagel

ハンブルクはビートルズが下積み生活をはじめた街として知られる。無名だった彼らが滞在したレーパーバーンは、ザンクト・パウリ駅とレーパーバーン駅を結ぶ通りだ。

60年代初め、ビートルズはこのレーパーバーンのグローセフライハイト64番地の「インドラ」クラブで毎晩演奏していた。他にも、色々なクラブに出演した彼らのライブ演奏は、8時間に及ぶこともあった。この時に彼らのレパートリーが増え、腕も上がり、自信がついたという。

ウクレレ演奏で巡るビートルズツワーは大人気(c)n.spitznagel
ウクレレ演奏で巡るビートルズツワーは大人気(c)n.spitznagel

後にジョン・レノンが、「僕はハンブルクで育った」と言ったのはこんな背景があったからだ。

ビートルズのエピソードや出演したクラブなどを紹介するガイドツワーは、限られた時間内で多くのスポットを見聞したい人にお薦め。ビートルズ好きが高じてガイドになったというステファニーさんのスペシャルツワーは驚きの発見がたくさんあり、好評を博している。

レーバー・バーンは、どちらかというと「歓楽街」のイメージが強いだろう。港町ハンブルクは、国内外の船員たちが上陸する地だったことから、歓楽街が発展していった。バーやクラブが立ち並んでいる通りは、女性と未成年(18歳以下)お断りの区域もあるが、明るいうちに散策すれば女性でも全く問題ない。

近年、レーバーバーン周辺は、ミュージカル劇場や小劇場が出来たことから、かっての暗いイメージも消え去り、若者たちも多く集まる場所となった。

なかでも毎年9月開催のレーパーバーン音楽フェスティバルは、口コミで知れ渡り、瞬く間に若者たちをとりこにした。2006年から始まったこのフェステバル、今では700に及ぶロック、ポップなどのコンサートや芸術プログラムが開催され、秋の注目イベントとして定着した。

5.ハンブルク港クルージングとフィッシュマルクトで港町を満喫

潮風心地よいクルージングで港めぐり・中央建物はエルプフィルハーモニー(c)n.spitznagel
潮風心地よいクルージングで港めぐり・中央建物はエルプフィルハーモニー(c)n.spitznagel

遊覧船の乗り場は、街の中心にある人工湖アルスターにもあるが、ヨーロッパ最大規模の港を有するハンブルクに来たからには、ザンクトパウリ桟橋から遊覧船にのって港めぐりを体験してみたい。

陸上では見られない風景、行きかう豪華客船や観光スポットを眺めるのも、船旅ならではの醍醐味だろう。

フィッシュマルクトホールは大賑わい。ここではやっぱり鮮魚を食べたい。(c)n.spitznagel
フィッシュマルクトホールは大賑わい。ここではやっぱり鮮魚を食べたい。(c)n.spitznagel

港町といえば、新鮮な海の幸。東京の築地ほど規模は大きくないが、毎日曜日の朝に開かれるフィッシュマルクトは人気スポットのひとつ。シーフードをはじめ、果物や野菜、お菓子などのスタンドがホール横の市場に繰り広げられており、見るだけでも楽しい。

6.ハンザ都市の富と権力の象徴・市庁舎

旧市街のハンブルク市庁舎は、1897年に建てられたルネッサンス様式の瀟洒な建物だ。

旧市街の市庁舎前広場にて (c)n.spitznagel
旧市街の市庁舎前広場にて (c)n.spitznagel

アルスター湖とエルベ川の間のちょうど中心に聳え、バッキンガム宮殿より大きい約650室もある宮殿さながらの市庁舎は、ハンザ都市ハンブルクの富と権力の象徴。

市庁舎内のガイドツワーに参加すれば、一部のホールや部屋の見学も可能だ。外観以上に絢爛豪華で重厚な内装のホールや部屋を目にすれば、その美しさに驚くだろう。

取材協力・ドイツ観光局

在独ジャーナリスト

ビジネス、社会・医療・教育・書籍業界・文化や旅をテーマに欧州の情報を発信中。TV 番組制作や独市場調査のリサーチ・コーディネート、展覧会や都市計画視察の企画及び通訳を手がける。ドイツ文化事典(丸善出版)国際ジャーナリスト連盟会員

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