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三連休の天気図は「押しの西高東低」

饒村曜気象予報士
地上天気図の予想(日曜日の昼の予想、気象庁による)

暖冬が続いていますが、1月9~11日の三連休は冬に多い「西高東低の気圧配置」となって寒く感じ、日本海側では雨か雪、太平洋側では晴れの天気となります。今回の西高東低は「押し」で、非常に強いというわけではありませんが、長続きします。

寒く感じる三連休とはいえ、これでほぼ平年並みです。これまでが暖かすぎたのです。

西高東低の気圧配置

冬のシベリア地方では、太陽光がほとんど当たらず、放射冷却によって冷たくて乾燥したシベリア高気圧をつくります。

相対的に暖かい千島近海からアリューシャン列島南部にかけて気圧が低くなり、日本付近は西のほうで気圧が高く、東の方で気圧が低いという「西高東低の気圧配置」となります。

西高東低の気圧配置では、等圧線はほぼ南北に走り、シベリア高気圧の寒気が強い北風となって南下し、日本海に入ります。水温が10度以下の日本海であっても、寒気にとっては熱いお湯に相当していますので、湯気を上げて日本海を吹き渡ります。そして日本海から熱と水分を吸収して下層から暖まると、不安定となって次々に積乱雲を形成します。これらの積乱雲は、脊梁山脈で妨げられ、日本海側の地方に雪を降らせます。その後、乾燥した風が太平洋側の地方などに吹き降ります。

「西高東低の気圧配置」は、冬に多い気圧配置なので、「冬型の気圧配置」とも言いますが、大きく分けて「押し」と「引き」があります。

「西高東低の気圧配置」の「押し」と「引き」

西高東低型のうち、今度の三連休のように、シベリア高気圧が強いために等圧線の間隔が狭まり、押し出されるように季節風が吹く場合が「押し」で、長続きする持続型です。

これに対し、日本東海上の低気圧が発達したために等圧線が狭まり、引き込まれるように季節風が吹く場合が「引き」で、各地に暴風や大雪をもたらす反面、この荒天は一時的なもので、瞬発型です。

無論、高気圧と低気圧の双方が強い、「押し引き混合型」もありますが、このときは、非常に強い寒気が南下して大荒れとなり、長続きします。

昨年11月の北海道の大雪は「引きの西高東低」

図1 地上天気図(平成27年11月28日9時)
図1 地上天気図(平成27年11月28日9時)

昨年11月下旬に冬型の気圧配置となり、北陸や北日本では雨や雪となっています。北海道では7地点で11月の最新積雪の1位を更新しています。この時は、日本海で発達した低気圧が足早に通過しての西高東低の冬型の気圧配置であり、「引きの西高東低」で、長続きしませんでした(図1)。

低気圧の最低気圧の記録は北大西洋の912ヘクトパスカル

低気圧のエネルギー源は、冷たい空気が暖かい空気の下に潜り込もうとする位置エネルギーです。寒気と暖気の温度差が大きいほど低気圧は発達し、気圧が低くなります。

図2 地上天気図(平成23年1月17日21時)
図2 地上天気図(平成23年1月17日21時)

一般的には気圧が低い低気圧ほど強い風が吹きますので、気圧が低気圧の荒れ具合を示す目安となっています。

極端な暖気はありませんので、温度差が大きいとところは、事実用、極端な寒気があるところですので、低気圧の最低気圧は、高緯度で記録されます。低気圧の中で、一番低い気圧というのが、平成5年1月10日に、イギリスとアイスランドの間の北大西洋上で、天気図解析により決定された912ヘクトパスカルです。日本に影響を与える北太平洋で、930ヘクトパスカル位まで低気圧が発達するのは、平成23年1月17日の932ヘクトパスカルをはじめ、ほぼ30年に一回位あります(図2)。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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