ガガーリンの「地球は青かった」と静止気象衛星からみた青い地球
昭和36年(1961年)4月12日にソビエト連邦のユーリー・ガガーリンが世界で始めて宇宙飛行をしています。ソビエト連邦崩壊後に再構築されたロシア連邦では、5年前の4月12日、有人飛行から50年ということで、「宇宙大国復活」のアピールし、祝賀ムードに包まれました。
地球は青かった
ガガーリンは、日本では「地球は青かった」と訳される有名な言葉を残していますが、実際の発言は「空はとても暗かった。一方地球は青みがかっていた(イズベスチヤ)」です。
また、後日、ガガーリンがプラウダに連載した「ダローガ・フ・コスモス(宇宙への道)」では、地球の夜の面から昼の面へ飛行するとき、地平線上に現れる色彩の美しさに感嘆し、「レーリッヒのブルーのようだった」と述べています。
ニコライ・レーリッヒは、ロシア人の有名な画家で、好んで使用したのが青色系統の絵の具で、絵の題材として探し求めたのはチベットの地底にあるとされた理想の国「シャンバラ(幸福の源に抱かれた土地)」です。
ガガーリンは、暗黒の宇宙の中に、太陽光線が大気を通して青などの色で浮かび上がる地球をみて、そこに理想の国を見たのかもしれません。
ガガーリンの時代は、ソビエト連邦とアメリカ合衆国の間で、東西冷戦を背景に宇宙開発競争をしていましたが、現在は、国際宇宙ステーションでロシアやアメリカ、日本など多くの国が参加するなど、各国が協力して宇宙開発が進められています。
大気による太陽光の散乱
地球の大気に入射した太陽光などの電磁波が、大気中の気体分子などによっていろいろな方向に広がっていく現象を「散乱」といいます。
散乱の強度は波長が短いほど大きくなります。波長の短い青い光はよく散乱し、空一面に青い光がたくさんあるので、晴れた日に空は青く見えるわけですが、宇宙から見ても青く見えます。夕方になり、太陽の高度が下がり、西の地平線に傾くため、昼間に比べて太陽の光が大気中を通過する距離が長くなると、空一面にあった青系統の光はさらに散乱して、地上に届きにくくなり、より波長の長い赤や橙の光は散乱されずに地上に届いて夕焼けになります。同様に、宇宙から見た太陽が地球の地平線上から顔を出す瞬間は、太陽光が大気中を通過する距離が長くなりますので、赤くなります。
宇宙から見た地球のさまざまな色の変化は、地球が大気を持っているからです。
「ひまわり」から見た地球の色
静止気象衛星「ひまわり」が最初に画像を送ってきたのは、昭和52年9月8日のことで、本運用は翌53年4月6日のことです。
その後、衛星の寿命が終わる直前に、機能が向上した新しい衛星が打ち上げられ、衛星による観測が継続しています(表)。
平成26年10月7日に、防災のための監視と地球環境の監視機能強化を目的に打ち上げられた「ひまわり8号」は、世界で始めてカラー撮影が可能な静止気象衛星で、約2ヶ月後の12月18日にカラーで撮影した地球の画像を送ってきています。
可視光領域の青、緑、赤の3つの波長で観測を行い、それを合成することで、人が宇宙から地球を見た場合に似た「カラー画像」を作成しています。
これまで、衛星画像に色がついている場合がありますが、わかりやすいようにコンピュータ処理で色を人為的にいれたもので、実際の観測ではありません。
「ひまわり8号」から見た地球も青いものでしたが、想像していたものより青が薄いのではと感じた人が多く、ガガーリンのときより地球が汚れてきたので青が薄くなったのではないかとか、人間も目には青が強調して入るので、衛星画像より実際に見た地球のほうが青くなるのではないかという意見がでました。
「ひまわり8号」の実力
「ひまわり8号」は、それまでの「ひまわり7号」に比べると、搭載している放射計の数が5から16に増え、解像度も半分になってより細かい観測が可能となっています。
例えば、台風付近を2.5分毎の観測することで台風の周辺で積乱雲が発達している様子や、台風の目の中で雲が渦を巻いている様子まで、詳細に観測できます。
また、カラー観測になったことにより、台風や集中豪雨の監視や予測という防災業務に貢献することに加え、細かい黄砂や火山の噴煙などの監視でも今まで以上に有用であると考えられています。
気象衛星の重要性が増したことから、現在は、長期間の欠測を避けるための2機体勢となっています。片方が観測運用中のとき、他方が待機運用中となるわけです。
なお、「ひまわり8号」とほほ同程度の機能を持った「ひまわり9号」の打ち上げ予定は今年です。