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気温が高い10月という今回の予報は、アンサンブル予報から第1週は特に信頼できる

饒村曜気象予報士
平成28年10月の気温予想(気象庁HPの一ヶ月予報より)

気象庁の長期予報は、長い期間の平均的な天候の特徴や傾向を予想し、農業や漁業、エアコンやビールなどの季節商品の生産計画、または観光産業などにも利用されています。

その長期予報には、毎週木曜日の14時30分に発表される一ヶ月予報と、毎月25日頃の14時に発表される三ヶ月予報があります。また、2月の三ヶ月予報発表時に暖候期予報が、9月の三ヶ月予報発表時に寒候期予報が、同時に発表されます。

長期予報がより詳細になり、さらに精度が上がればもっと利用が広がるということで、アンサンブル予報の改良など、いろいろな研究が進んでいます。

アンサンブル予報

コンピュータで将来の天気を計算で予測する数値予報という手法においては、観測値から得られた解析値を求め、これをもとに物理方程式に従って計算が行われます。

アンサンブル予報は、解析値に含まれる誤差程度の微小な違い(観測誤差程度の微少な違い)を考え、解析値を少し変えてから計算を数多く行い、その平均などをとる手法の予報です。

アンサンプル予報は、常にではありませんが、個々に行った予報で生じていた予報誤差が、互いに打ち消しあうことで、長期予報の精度を上げることができます。

また、誤差幅の目安の情報が提供できます。解析値を少し変えるだけで数多く行った予報のバラツキが大きい場合は、誤差幅が大きいことが予想され、逆に、予報のバラツキが小さい場合は、誤差幅が小さいと予想されるからです。

10月の1ヶ月予報

気象庁のホームページには、全国の図や、図1のような週ごとに分けた一ヶ月予報が見やすいところにあります。

図1 週ごとに分けた一ヶ月予報(9月29日発表)
図1 週ごとに分けた一ヶ月予報(9月29日発表)

また、予報の根拠となった資料も専門家向けに気象庁から発表されており、検索すれば、気象庁の情報を受けて業務を行っているいくつかの事業者のサイトでその情報も見ることができます。

専門的なものですが、そのまま使える図ではありませんが、例えば、アンサンブル予報による、地上約1500メートルの気温の平年差の予想は図2のようになっています。

図2 気象庁が専門家向けに提供している専門天気図(FCVX14)の一部(説明の日本語を加筆)
図2 気象庁が専門家向けに提供している専門天気図(FCVX14)の一部(説明の日本語を加筆)

ここで、細い実線は個々の予測結果で、太い実線は細い線を平均したものです。つまり、この太い実線が個々の予測結果を平均したものです。

個々の予測結果の数が増えれば、それに比例して計算時間はどんどん増えていきますが、予測精度はあるところまでくると頭打ちになります。そこで、計算機の能力などを総合的に判断して計算する数(現在の一ヶ月予報では50)が決められています。

これによると、10月の第1週は、個々の予測結果が揃って全国的に平年より気温が高いと予想していますので、第1週の気温が高いという予報は、信頼できると思います。しかし、第2週の途中以降は、気温が平年並に近づくとともに、予測結果がばらつき出します。第2週で北日本と西日本はともに平年並と同じですが、アンサンブル予報では北日本のほうが予測結果のばらつきが大きく、予測がより難しいことを示しています。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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