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ボート遭難で「真白き富士の根」

饒村曜気象予報士
富士山 江ノ島(写真:アフロ)

中央気象台では、明治43年(1910年)1月21日9時に、大きな低気圧が接近してくるとして暴風警報を発表しています。

この暴風警報は22日16時に解除となりましたが、西高東低の冬型の気圧配置になるとして、23日も「風強かるべし」としていました。

神奈川県・鎌倉沖の遭難

1月23日の神奈川県鎌倉沖では雨が止んだものの、風はまだ毎秒10メートル以上もありました。

図 1910年1月23日6時の地上天気図(中央気象台)
図 1910年1月23日6時の地上天気図(中央気象台)

この中で、逗子開成中学校のボート部員ら12名(内1名は小学生)が、学校のボートを持ち出し、葉山から江ノ島に向かおうとして遭難しています。沿岸部のちょっとした風の弱まりを、風が弱くなったので大丈夫と判断したのかもしれません。

そして、12名全員が溺死しています。

この死を悼んで作られたのが「真白き富士の根(ましろきふじのね)」という歌で、作詞者は、逗子開成中学校の系列校である鎌倉女学校(現・鎌倉女学院)の三角錫子教諭です。

原曲はインガルス作曲の賛美歌です。

この歌はヒットし、昭和10年と昭和29年には、同名の映画にもなっています。

真白き富士の嶺、緑の江の島

仰ぎ見るも、今は涙

歸らぬ十二の雄々しきみたまに

捧げまつる、胸と心

出典:「真白き富士の根 」の歌詞(明治43年)

北海道は低気圧の通過で大荒れですが、その後、冬型の気圧配置となり、寒気が南下します。

日本海側では雪と風に、太平洋側では乾燥と風に注意の一週間の始まりになりそうです。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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