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【火の鳥、世界一に挑戦】自分の手で「リオ切符」を。キャプテン木村沙織が「覚悟」で挑むW杯バレー

大林素子スポーツキャスター、女優
(写真:YUTAKA/アフロスポーツ)

「私なんかがキャプテンでいいのかな」不安をもらしたことも

木村沙織が日本代表のキャプテンになって今季で3年目。

キャプテン初年度は無我夢中、しかもベテランも多くいて、昨シーズンもまだロンドン五輪を一緒に戦ったメンバーが残っていた。しかし今季はまた新たな選手が加わり、世代もすごく若くなった。しかも沙織自身の調子があがらず、ワールドリーグは予選6位で決勝ラウンドに進めたものの決勝ラウンドは5戦全敗。

ワールドグランプリでは調子が上がらず「申し訳ない」と。
ワールドグランプリでは調子が上がらず「申し訳ない」と。

「キャプテンとして私は本当にできているのか、すごく不安なんです」。そう言っていた。新しいチーム、さあどうしていこう、リオ五輪の出場権を取るためには勝たなきゃいけない、でも自分の調子も上がってきていない。頑張る立場でありながらも出来ていないこともあり、申し訳ないという気持ちが大きく、「私なんかがキャプテンでいいのかな」と思ったりもしている沙織。

沙織の言葉に若い世代は支えられているはずだ

今のチームでは古賀(紗理那)が19歳、宮部(藍梨)が17歳で、最も若い宮部とは一回り違うのだ。絶対、新しい世代は沙織がいてくれるだけで安心している。沙織が先輩方に支えられてきたように、沙織の言葉に若い世代が支えられているということもあるはず。「先輩に言われてきたことを、沙織が言っているよ、今」なんて話をした日もあった。

背負う重さは伝統の重さであり、喜びの重さにも変わるものだ。つらいと思うが、今、頑張ってほしい。そうやって世代とか伝統は引き継がれていくものだから。歴代のキャプテンはみんな感じてきたことで、選ばれた人だけが抱えているものなのだ。

男子の清水(邦広)もそうだが、沙織もプレーで見せていくタイプ。でもそうでありながらもキャプテンになれば発言なども変わってくる。「自分のときのテンさん(竹下佳江)は」と意識しているけれど、比べなくてもいいと思う。沙織は沙織。沙織のスタイル、沙織のペースで。「キャプテンの正解」はないのだから。

沙織はまだまだ「進化」できる

「第一にチームのために」の思いで
「第一にチームのために」の思いで

プレースタイルとしては、今季はしっかりパスを返すことをまず考えて、第一にチームのためにやりたいとそう話していた。キャプテンとしてそんな思いでチームを支えているが、それだけでなく、沙織にはまだまだ現状維持でなく、技術や能力をもっと高めてほしい。ワールドカップが近づくにつれ、木村の調子が上がってきていると眞鍋(政義)監督もおっしゃっていた。

リオ五輪が集大成、その「覚悟」で

沙織は次のリオ五輪が集大成と話している。

アスリートとして引退とか最後の目標地が見えたときというのは今までとバレーボールの見る景色が変わってくる。普段の練習や試合とかふとしたときに、周りのチームメイトが恋しく感じたり。ああこの子たちと一緒にできるのもあと少しだなあとか。私も辞め際にはそんな思いで残された日々を大切に過ごしたのを覚えている。

最後が見えたときには、やっぱりある意味、「覚悟」はあるはず。「バレー人生」という人生が一つ終わるわけだから。

沙織自らの手でリオ切符を

沙織の最後の目標、リオにかける「覚悟」。そして「進化」がワールドカップでまた見られることを期待している。そうして必ず、今季の最大の目標であり、夢であるリオ五輪切符を沙織自らの手で勝ち取ってほしいと願っている。

■ワールドカップバレー2015の日程・組み合わせ(日本バレーボール協会)

■ワールドカップ2015の出場選手(14名)(日本バレーボール協会)

スポーツキャスター、女優

バレーボール全日本女子代表としてソウル、バルセロナ、アトランタ五輪をはじめ、世界選手権、ワールドカップにも出場。国内では日立や東洋紡、海外では日本人初のプロ選手としてイタリアセリエAで活躍した。現役引退後は、キャスター・解説者としてバレーボール中心にスポーツを取材。日本スポーツマスターズ委員会シンボルメンバー、JOC環境アンバサダー、JVA(日本バレーボール協会)広報委員、JVAテクニカル委員、観光庁「スポーツ観光マイスター」、福島県・しゃくなげ大使としても活躍中。また、近年は演劇にも活動の場を広げ、蜷川幸雄作品や『MOTHER~特攻の母 鳥濱トメ物語~』などに出演している。

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