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対艦用二重貫通弾頭と対地用EFPクラスター弾頭の開発を行う日本防衛省

JSF軍事/生き物ライター
先進対艦・対地弾頭技術の研究:防衛省 平成26年度 事前の事業評価

防衛省から政策評価「平成26年度 事前の事業評価」が公表され、その中に「先進対艦・対地弾頭技術の研究」という項目がありました。先月発表された平成27年度概算要求の中で確認された「大型艦艇及び島嶼上の脅威に対処する誘導弾用弾頭技術の研究」のより詳しい内容が記されています。

本事業は、我が国の島嶼部への攻撃に対して実効的に対応するため、島嶼及びその周辺海域に展開する部隊等に有効に対処できる誘導弾用弾頭として、上陸用舟艇等の近傍で起爆し、数発で数百m四方の範囲にある目標を破壊する高密度EFP※1弾頭や、大型艦艇の外壁を上面・側面から貫徹し、内部の構造物を破壊しうるシーバスター弾頭※2について、弾頭威力及び耐衝撃性に関する基本性能を確認するための研究を行うものである。

※1 EFP(Explosively Formed Projectile):爆発成形弾

※2 シーバスター弾頭:先駆弾頭により艦船等の外壁を貫徹し、主弾頭により内部構造物を破壊する弾頭

出典:先進対艦・対地弾頭技術の研究:防衛省 平成26年度 事前の事業評価

これにより大型艦攻撃用のシーバスター弾頭は二段式の弾頭であることが分かりました。先駆弾頭として成形炸薬弾が孔を穿ち、その孔に徹甲榴弾が突入する方式です。特徴としてはミサイルの速度が遅くても貫通効果を発揮できることで、つまりこの新型貫通弾頭は超音速対艦ミサイルXASM-3用ではなく、既存の亜音速で飛ぶ対艦ミサイル用のものだという事が分かります。「シーバスター」は陸上自衛隊の88式地対艦ミサイルの愛称でもあるので、地対艦ミサイルの弾頭を換装するのでしょう。88式地対艦ミサイルの射程内に敵空母が進出してくることはまず考えられないのですが、島に接近して来る大型揚陸艦を狙えます。(評価書では大型艦と書かれていて空母とは書かれていない)

また対地攻撃用クラスター弾頭はEFP(自己鍛造弾)であることも判明しました。これは爆発によって皿状のライナーが圧縮されて弾丸状になり高速で飛んでいく弾頭です。本来は対戦車用ですが、防衛省はこの評価書では「敵上陸舟艇・軽装甲機動部隊・ミサイル発射部隊」を目標としており、戦車より装甲が薄い目標となります。対戦車用とは違った形状・大きさになるのかもしれません。ただしクラスター爆弾制限条約の規制内となる為に、一つの爆発性子弾から多数のEFPを形成するような画期的な工夫※が必要になります。これも88式地対艦ミサイルの弾頭の換装用だとすると、地対地攻撃が可能となるこの新型弾頭は、88式地対艦ミサイルの戦術的価値を大きく変える存在となります。

※三菱電機が2010年に登録した特許「誘導飛しょう体」の中に、一つの爆発性子弾から多数のEFPを形成する「マルチEFP弾頭」が登場する。

軍事/生き物ライター

弾道ミサイル防衛、極超音速兵器、無人戦闘兵器、オスプレイなど、ニュースに良く出る最新の軍事的なテーマに付いて解説を行っています。

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