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公明党山口代表からの回答(生活保護や低所得者支援について)

大西連認定NPO法人自立生活サポートセンター・もやい 理事長

公明党山口代表からの回答(生活保護や低所得者支援について)

11月19日(水)、TBSラジオ「荻上チキ・Session-22」(平日夜10時~)に公明党の山口那津男代表が生出演しました。

ちょうど解散のタイミングが重なったこの時期に、直接、各政策についての意見をうかがえるとのことで、僕もメールで参加し、山口代表に生活保護や低所得者支援について質問しました。

ここでは、僕が送ったメールの内容、そして、スタジオで繰り広げられた山口代表とパーソナリティーの荻上チキさんのやりとりをご紹介します。ポッドキャスティングでも聴けるようなのでぜひ。(僕からの質問メールは20分くらいからです)

2014年11月19日(水)「総選挙に向け、各党代表と生セッション!今夜は、公明党・山口那津男代表」(会見モード)をポッドキャスティングで聴く

僕からの質問メール

公明党のホームページの政策集などを拝見すると、セーフティネットの強化がうたわれ、歴史的にも福祉施策の充実を訴えてこられています。しかし、近年、日本社会では、相対的貧困率や子どもの貧困率は、上昇傾向にあり、月額、およそ10万円しか使えるお金がない人が6人に1人います。

貧困層を支えるための制度である生活保護制度は、公明党も賛成して、2013年8月より段階的におよそ1000億円のカットがはじまり、2013年末には60年ぶりに生活保護法が改正され、より家族扶養が強調されたものになりました。

そして、今年の4月の消費税の増税は、低所得者の家計を圧迫しています。公明党は軽減税率を提言されていますが、軽減税率は、高所得者にとっても負担減となるものでもあり、低所得者向けには給付措置の方が適切だと思います。

貧困層には仕事に就くのが難しい人も多く、そういった人たちを支えている生活保護のような給付型の社会保障を削減して、一体、どのように彼ら・彼女らを支援していく方針なのでしょうか。

公明党の皆さんには、与党のなかでの社会保障の最後の砦として、日本の貧困率の上昇に歯止めをかける役割を担っていただければと、強く願っていますが、今回の総選挙では、低所得者向けの給付型の施策などを検討されていますでしょうか。(質問メール終わり)

山口代表と荻上チキさんのスタジオでのやりとり

以下、山口代表と荻上さんのやりとりを書き起こしました。生活保護にかかわる部分のみ抜粋しています&あくまで僕個人でおこなったものなので、誤り等がありましたらご容赦ください。また、文章にする際に字句や文言は修正しています。あしからず。

山口さん:生活保護は非常に大事な制度。日本では長くデフレが続いていたが、これまで水準を維持してきた。しかし、年金や最低賃金とのずれがでてきたので是正した。制度自体は重視している。生活保護の改正は過去の積み重ねの清算。物価に応じて、生活保護基準はあげさげしていく。

今回、消費増税と物価上昇と重なってしまったのはタイミングのずれであり、徐々に修正されていく。

チキさん:その短期間のずれでも困っている人には非常に打撃。

山口さん:ただちにそうはならないと思う。消費税増税にあたり一定程度の配慮はしている。生活保護に依存する、他のセーフティネットより得だから、ということよりは、就労を支援して生活保護からうつっていくというインセンティブは大事。

ただ、今回、低所得者への配慮は必要。8%のときに簡素な給付措置をおこなったが、それを土台にしてもっと上乗せする、厚みを増す、そういうようなことを検討していきたい。

チキさん:生活保護についてもう一点だけ。生活保護はいわゆる「その他世帯」とよばれる失業などで制度を利用している人たちは2割以下。高齢、傷病障がい、母子家庭が約8割。働きたいを応援する仕組みはすごく大事だが、生活保護の多くは働くことが難しい人たち。そのバランスをどう考えるか。

山口さん:働きたくても働けない、働ける状況にない、そういう人にこそ、生活保護は本来使われるべき制度だし、届くようにしていかなければならない。生活保護基準にかんしても現実に妥当なものかどうか絶えず点検していかなければならないと思う。一方で、就労のところは、もっときめ細かく自立にむけて支援しなければならないし、意欲がわくような仕組みに改めていく必要がある。

~中略(公明党の意義・役割の話になったので省略します)~

チキさん:自民党の議員さんから数年前より生活保護たたき、バッシングがあって、生活保護改正などが進んだ。どのように見ていたか。

山口さん:極端にたたいているのは、やりすぎだと。たたきでなく、妥当な水準をみきわめていく必要がある。

チキさん:不正受給であるとか、著名人の家族のことなど、生活保護改正へのアクセルになった。それに対して公明党はどのような動きを?

山口さん:もちろん、一部の不正なものは正さなければならない。だからといって全体の水準を下げるということには結びつかない。ほかの政策分野でも多々ある。

チキさん:一部を全体化してはいけないと。

山口さん:そうですね。

~中略(労働分野の話になったので省略)~

チキさん:さきほど、困っている人がいれば、就労支援とはまた別に個別に対応しなければならないという話があった。これから、社会保障は削られる方向にいくのではないかと国民は心配している。困っている人のためのお金も、聖域なく削られる対象になりえるのか。

山口さん:一番困っている人のところは、重視しなければならない。

チキさん:では、その動きがあったら党としてはブレーキをかけると。

山口さん:実態を見て、制度のデコボコがないように、また、国民の理解を得られるような制度を追及していく姿勢でのぞみたい。(書き起こし終わり)

困っている人にどのような具体策を掲げるか

以上です。TBSラジオ「荻上チキ・Session-22」のみなさま、荻上チキさん、そして公明党山口代表、貴重なお時間をいただき、ありがとうございました。

困っている人には必要な支援を、という公明党の方針をあらためて確認することができましたし、引き下げられている生活保護基準についても、物価の上昇や増税の影響などにより適時水準を動かすことなどに言及がありました。

低所得者向けの支援等に関しても、軽減税率以外に具体的にどのような施策を検討しているのか、今回のマニフェスト等でどこまで記載されるか、大いに期待したいと思います。

また、TBSラジオ「荻上チキ・Session-22」(平日夜10時~)では、総選挙にむけて、各政党の党首を招く予定だとのこと。各政党の社会保障へのスタンスなどにも注目したいと思います。

大西連

認定NPO法人自立生活サポートセンター・もやい 理事長

1987年東京生まれ。認定NPO法人自立生活サポートセンター・もやい理事長。新宿での炊き出し・夜回りなどのホームレス支援活動から始まり、主に生活困窮された方への相談支援に携わっています。また、生活保護や社会保障削減などの問題について、現場からの声を発信したり、政策提言しています。主著に『すぐそばにある貧困」』(2015年ポプラ社)。

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