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大商大との交流試合 ヒヤッとしたけど面目を保った阪神ファーム

岡本育子フリーアナウンサー、フリーライター

夏の高校野球が終わりました。序盤から攻めて守って決勝にふさわしい接戦で、1時間41分という試合時間よりもさらに短く感じたくらいです。最後は敗れた三重も勝った大阪桐蔭も涙でした。両校に、ここを目指して戦ってきた全ての高校球児に「すばらしい夏をありがとう!」と伝えたいですね。

きのう24日、大阪桐蔭が乱打戦の準決勝を制したあとOBの西田選手に、このまえ北條選手が話していた話題を振ってみました。「今のチームと西田選手がいた頃のチームで試合をしたら、どっちが勝つ?」。やはり西田選手も北條選手と同じ「僕らの方が勝つ」という答え。そしてこう言ったのです。

「勝っていくと強くなるんですよ、高校野球は。強いチームが勝つんじゃなくて、勝ったチームが強いんです」

なるほどねえ。それはすごくよくわかると納得していたら「それでいくと、僕らの世代は負けますね(笑)。藤浪の時はメッチャ強いってことで」と自己申告。ぶっ!そうなりますね。この時点で「優勝するんじゃないですか?スコアは6対0で」なんて言っていた西田選手。スコアは2回で早くも外れたけど、優勝予想は的中です。おめでとうございました。さあ、先輩は1軍初ヒットでお返ししましょうか。

大商大との交流試合

では、きのう24日に鳴尾浜で行われた大阪商業大学との試合結果をお伝えします。京都大学と同じく初顔合わせでした。ドラフト候補の先発・金子投手から1回、4連打で3点先取するも5回に追いつかれ、その直後にまた4連打で2点を挙げて逃げ切っています。

《交流試合》8月24日

阪神-大阪商業大学(鳴尾浜)

大商大 000 030 000 = 3

阪 神 300 020 10X = 6

◆バッテリー

【阪神】島本-加藤-西村-藤原-山本 / 小豆畑

【大商大】金子(5回)-岡田(1回)-安部(1回)-岩崎(1回) / 本田-阿南(8回裏)

◆二塁打 緒方 

◆打撃(打-安-点/三振-四死球/盗塁/失策)

1]指:荒木   ( 2-2-0 / 0-1 / 1 / 0 )

〃打指:田上  ( 2-0-0 / 0-0 / 0 / 0 )

2]二:北條   ( 4-1-0 / 1-0 / 0 / 0 )

3]右:緒方   ( 3-2-1 / 0-1 / 1 / 0 )

4]左:中谷   ( 4-2-3 / 0-0 / 0 / 0 )

5]一三:原口  ( 3-3-1 / 0-1 / 0 / 0 )

6]三遊: 西田 ( 4-1-1 / 0-0 / 0 / 0 )

7]遊一:阪口  ( 3-0-0 / 0-1 / 0 / 0 )

8]捕:小豆畑  ( 4-1-0 / 1-0 / 0 / 0 )

9]中:横田   ( 4-0-0 / 0-0 / 0 / 0 )

◆投手(安打-三振-四死球/失-自) 最速キロ

島本 3回 45球 ( 1-1-0 / 0-0 ) 142

加藤 1回 14球 ( 0-0-1 / 0-0 ) 139

西村 1回 31球 ( 4-1-0 / 3-3 ) 139

藤原 2回 21球 ( 0-3-1 / 0-0 ) 139

山本 2回 27球 ( 0-1-0 / 0-0 ) 142

追いつかれたあと一気に勝ち越し

打線は1回、荒木と北條の連打で無死一、三塁として緒方が左前タイムリー!そのあと捕逸で無死二、三塁となり、中谷の左前打で2人を還しました。続く原口は四球を選ぶも西田の二ゴロ併殺打などで終了。前日の京大戦同様、おそらく緊張していたであろう金子の立ち上がりを攻め、4連打で3点を先取しています。しかし2回から4回までは1安打ずつで得点なし。

先発の島本は1回、2番・日下部に右前打と盗塁、自身の二塁牽制悪送球で1死三塁としながらも、3番と4番を中飛に打ち取って無失点。2回と3回は三振1つと内野ゴロ5つで三者凡退です。4回は腰痛の癒えた加藤が登板し、1四球を与えただけで0点に抑えました。

ところが5回、西村が先頭にセンターとライト、セカンドの間にポトリと落ちるヒットを許し、ついでショート内野安打(阪口がジャンピングスロー!惜しい)で無死一、二塁。8番・山崎のバントを西村が捕り、小豆畑の指示で三塁へナイススローを見せましたが、判定はセーフ。犠打野選で無死満塁となり、続く本田が右中間へ打ち上げて…なんと緒方と横田が“お見合い”。記録はヒットで1点入ります。

なおも無死満塁で1番の吉持が右中間へ落ちる2点タイムリー(今度は素早く走ってきた緒方が処理)。大商大ベンチはもう大騒ぎです。犠打で1死二塁となったあとは3番・新谷を空振り三振、4番・坂田は二ゴロ。ほとんど打ち取った当たりなのに、不運が重なって西村は3失点。追いつかれてしまいました。

直後の5回裏、1死から右中間二塁打を放った緒方が中谷の右前打で勝ち越しのホームを踏み、原口の左前打で1死一、二塁として西田が中前タイムリー!さらに阪口の四球で1死満塁となりますが、小豆畑が中飛、タッチアップした原口は本塁憤死の併殺。それでも、また4連打で2点勝ち越しました。6回は三者凡退。7回は緒方が四球と盗塁、1死後に原口の中前タイムリーで1点追加。8回は三者凡退です。

投手陣は、少し戻って6回に4人目の藤原が登板。見逃し、空振りと連続三振を奪った後に死球はありましたが、次を見逃し三振!7回はわずか6球で内野ゴロ3つの三者凡退と完璧に抑え、2イニングを投げて無安打無失点。8回からは山本が1四球のみで、こちらも無安打無失点で試合終了。

「唯一のヒットは高校の後輩」島本

7月31日の広島戦(由宇)以来の先発だった島本投手は「球はよかったです」とコメント。唯一のヒットは「後輩に打たれました」と苦笑いです。2番の日下部選手(1年生)は福知山成美の3つ下で、重なってはいないけど後輩。同じく福知山成美の1学年下だった3番の新谷選手(3年生)は中飛に抑えています。大学生相手で「難しいですね。抑えて当たり前のとこで投げるのは」と言い「真っすぐしか待っていないなとわかっていたけど、やるべきこともあるので」と変化球も投げ、5番の榎本選手から奪った三振はスライダーでした。

次は、腰痛からの復帰登板となった加藤投手。「きょうは投げられただけでよかった。内容はあんまり…。四球がもったいないですねえ。真っすぐの走りも、きょうはあまり良くないかな。でも問題なく投げられたので、あとは調整していくだけ。いつ呼ばれてもいいように」

山本投手は、大学との試合について聞くと「嫌ですよお!抑えて当たり前なんですもん。だから特に何もないですけど、まあ0点に抑えたので。このあとの公式戦で0を続けていきます」と一気にまとめてくれました。西村投手は「何もないですよ」と、それだけです。

藤原は44日ぶりの実戦登板

藤原投手は7月11日の中日戦(ナゴヤ)以来、1ヶ月半ぶりの登板でした。その間はシート打撃もなく、フリー打撃に登板するだけで「ただただ、バッターと勝負できるよう感覚をつかむために」ブルペンで投げ続けた毎日。その成果が出ましたね。大学生相手とはいえ、コントロールの乱れも少なくノーヒットです。「振ってもらっている分はいいけど、ちょっと怪しいのも。今のはボールかなっていうのが何球かあったので、まだまだ」とのこと。

この日は真っすぐが1球くらいで、速球のほとんどはツーシームだったそうです。また「スライダーとかカットボールとか、いろんな球で勝負できたのはよかったですが、もうちょっと“いい球”でないと」と自ら課題を挙げました。磨きをかけるって意味でしょうかね。ひとまず実戦で投げて感覚をつかめたのが何より。続けていけるよう祈っています。

中谷が3打点、原口は3安打

1回と5回のチャンスで、ともにタイムリーを放ち3打点の中谷選手。しっかりと4番の仕事をしました。「当たりはよくなかったけど、ヒットになったのはよしですかね。ランナーがいる場面だったので」。また3回から3打席連続安打で最後はタイムリーの原口選手は「公式戦でも打てるように頑張ってきます!」。残念ながらノーヒットで「バッティングが全然…。ダメですわ~」とため息の阪口選手。中谷選手も、結果は明暗のWグッチも26日からの由宇遠征に参加です。

5回の守備で“お見合い”した緒方選手と横田選手。右中間のフライをタイムリーにしてしまいました。どちらも触っていないのでエラーじゃないんですよね。中村外野守備走塁コーチによれば「あれはライトのボール。緒方が捕りに行くべきだった」そうです。2人はチェンジになって戻るやいなや、ベンチ前で中村コーチのダメ出しを受けていました。試合後、緒方選手は「僕のボールです。最後は横田に任せてしまった。自分が捕りに行かなきゃいけなかったです」と反省の言葉。

瞬時の状況判断が大切

同じく5回、このタイムリーの前にあった野選について。小豆畑選手がサードへ送るよう指示を出した点は、風岡内野守備走塁コーチいわく「チャレンジするのは間違いじゃないよ。バントはみんな一塁へ送球すると決まっていないんだから」。吉田バッテリーコーチからは「小豆畑がサードと言ったのはいいんですよ。ただ原口がダッシュしてきて行きすぎてしまった。原口が捕ると思っていた西村は、慌てて拾って投げた。それを見ていた小豆畑は、言い直してもよかったんじゃないかな。『サード!いやファースト』っていうようなこと、よくあるでしょう?」という説明を受けました。

なるほど、その時々で言い直せばいいわけですね。「小豆畑とあとで話したとき、言い直せるような時間はあったと言っていたから。一番よくないのはオールセーフになること」と吉田コーチ。見ている側にすれば一瞬の出来事なんですけど、そんな中で状況判断をしなくちゃいけない。唯一、他の8人と向き合っているキャッチャーは大変なポジションです。

なお、きのうの記事で『先月16日以来のスタメンだった小豆畑選手。フルでマスクをかぶったのは4月27日の育成試合以来』と書いてしまいましたが…すみません!大きな間違いです。スタメンマスクも、捕手でのフル出場も7月31日の広島戦(由宇)以来です。きのうの文章も訂正させていただきました。

その小豆畑選手は2日続けてキャッチャーでフル出場。本来は遠征にも参加予定だったようですが、体調を崩していた岡崎選手が復帰して由宇へ行くため、今回は残留となりました。よって捕手は岡崎選手、清水選手、小宮山選手という遠征メンバーです。

フリーアナウンサー、フリーライター

兵庫県加古川市出身。MBSラジオのプロ野球ナイター中継や『太田幸司のスポーツナウ』など、スポーツ番組にレギュラー出演したことが縁で阪神タイガースと関わって約40年。GAORAのウエスタンリーグ中継では実況にも挑戦。それからタイガースのファームを取材するようになり、はや30年が経ちました。2005年からスポニチのウェブサイトで連載していた『岡本育子の小虎日記』を新装開店。「ファームの母」と言われて数十年、母ではもう厚かましい年齢になってしまいましたが…1軍で活躍する選手の“小虎時代”や、これから1軍を目指す若虎、さらには退団後の元小虎たちの近況などもお伝えします。まだまだ母のつもりで!

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