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阪神タイガース・安芸キャンプの総括<監督、コーチ編>

岡本育子フリーアナウンサー、フリーライター
25日の正午すぎ、選手全員ランニングで安芸キャンプの練習を締めくくりました。

沖縄・宜野座と高知・安芸で行われていた阪神タイガースの春季キャンプは25日、無事に終了しました。安芸は雲の多いお天気ながら雨が降り出したのは夜で、練習にはまったく問題なし。メインとサブ、安芸ドームとそれぞれに分かれて練習をしていた選手たちが、正午すぎにメイングラウンドへ集結。みんなが集まったので、もう手締めか?とカメラを手に走ったのですが、これは勇み足。その前に、選手全員が外野部分をランニングです。きれいに声が揃っていました。

それから監督やコーチ、スタッフ、安芸市の皆さんら全員で輪になって、真ん中に鶴投手が立ちます。前日に古屋監督が「最終日の締めは鶴にやってもらいます。投手コーチの推薦。八木コーチから横田も推薦されたけど、そのことで頭いっぱいになって野球に集中できないと困るので(笑)中堅にやってもらおうと。鶴も10年目、ひと皮むけてほしいしね」と言っていたように、中堅らしく落ち着いた挨拶でした。全文をご紹介します。

安芸キャンプ・手締めの挨拶

鶴投手の「お手を拝借、よーお!」で手締めが行われました。
鶴投手の「お手を拝借、よーお!」で手締めが行われました。
しっかり挨拶できたのに、終わって恥ずかしそうに苦笑いする鶴投手。
しっかり挨拶できたのに、終わって恥ずかしそうに苦笑いする鶴投手。

「監督はじめコーチの皆さん、選手の皆さん、トレーナーの皆さん、球団スタッフの皆さん、キャンプお疲れ様でした。このキャンプに携わってくださった安芸市の皆さん、裏方の皆さん、約1ヶ月間ありがとうございました。皆さんのおかげで、天候にも恵まれ充実したキャンプを送ることができました。ことしタイガースは80周年という節目のシーズンを迎えますが、今一度チーム一丸となってタイガースを盛り上げていきましょう。そして、ここにいる選手が1人でも多くチームの戦力となり、リーグ優勝、日本一を目指して頑張っていきましょう!」

よどみなく、しかも80周年というフレーズを織り込んだ文章はさすがですね。横田選手は昨年、北條選手が前日からブツブツと練習していたのを見ていて「来年は自分かも…」とドキドキだったはず。逃れられてホッとしたでしょうね。少し脱線しますが、昨年の北條選手の意外にマジメな(失礼…)挨拶を書いておきます。そして一昨年、平田監督をはじめ球場にいた全員から割れんばかりの拍手をもらった橋本良平選手の挨拶も。

2014年2月26日 北條選手(2年目)

「監督、コーチ、スタッフ、関係者の皆さん。そして安芸関係者の皆さん。ほんと約1か月間の長い期間、ありがとうございました。この安芸組の中から、ことしのタイガースの優勝、日本一に貢献できる選手が出るように、これからも頑張っていきます。本当に1か月、ありがとうございました!」

2013年2月28日 橋本選手(7年目)

「えー、春のキャンプ1か月間お世話になりました。裏方さんはじめ安芸市長、球場関係者の皆さん、大変お世話になりました。長いようで短いキャンプだったんですけど、すごく充実して意義のあるキャンプだったと思います。ここにいる選手たちは悔しさ、ハングリー精神、強い意志、“GO For The Top 熱くなれ”の気持ちを胸に刻んで、今シーズン戦っていきたいと思います。高知出身の偉人・坂本竜馬が日本の歴史に新しい風を吹かせたように、僕ら安芸タイガースも阪神に新しい風を吹かせたいと思います。タイガース維新で戦うぜよ!」

古屋監督「70点を80点、90点に」

では安芸キャンプを振り返っての総括をしていただきます。まずは「それぞれ個々にみんな頑張っていたから、MVPは決められない」という古屋監督。そんな中で「目立ったのは横田、植田、岩崎、横山」と4人の名前が出てきました。「横田植田はオーナーが来られた時に打ったしね。横田は1クール目のバッティングで飛ばす距離が(去年と)全然違った。群れずによく練習したよ。練習量は一番多かったんじゃないかな。植田は2日ほど休んだが、食らいついて、まっとうできた。評価できるでしょう」

次に投手2人の話。「岩崎は出遅れたけど、3月初めに実戦というところまできている。去年5勝したし、開幕にも間に合うかな。横山は3月3、4日あたりでフリー打撃に登板と考えていたけど、故障者以外(鳴尾浜に)残らないから無理なので遠征前に。岩崎よりは1クール遅れですね」と話しています。ただし、横山投手のデビューは8日の教育リーグ・オリックス戦(鳴尾浜)に決定のようです。

MVPは決められないと言っていた古屋監督でしたが、おもむろに「MVPは岡崎俊介」と。内野陣の故障発生で、練習試合の守備も足りない状況だったキャンプ中盤を振り返ってのことです。14日は途中からだったものの、15日にはセカンドで先発出場した俊介選手。また以前に経験したサードのみならず、セカンドまで守った岡崎選手。「1軍でやることのないポジションを、この大事な時期にやらせるのは忍びなかったけど『はい』と気持ちよく返事をしてくれた」と感謝の言葉で「(岡崎と俊介は)監督賞!賞金は出ないけど」だそうです。

キャンプ全体を振り返って「70点くらい。故障者は出たが、天候にも恵まれて試合も全部勝ったし。いいヒットを打って自信になった選手もいたと思う。この先の競争で、ここから1軍に上がっていくかどうか。上がっていけば点数は80点、90点になる」と、期待を込めて締めくくりました。

投打担当コーチの総括

みんなで輪になって、その中心に鶴投手が立ち、いよいよ締めの挨拶です。
みんなで輪になって、その中心に鶴投手が立ち、いよいよ締めの挨拶です。

続いて、久保投手コーチです。やはり誰かをMVPとして挙げることはありませんでしたが「最後に落伍者なしで終われること、みんなで競争という原理が一番です。試合でもみんなほとんど点を取られていませんからね。もちろん横山と守屋がいて、沖縄へ行った守屋も、ここにいる人たちも順調。最後に全員がゲートに入れたし。これからですよ。3月、4月、シーズンに向けて。いま沖縄に人たちとも入れ替わることがあってほしいですね」と納得の表情です。

八木打撃コーチは、このキャンプで印象に残った選手として岡崎選手の名前を挙げました。「本当に一生懸命やっていたよ、岡崎太一は」とのこと。ここ何年か、常に“覚悟”を抱いてやってきたという岡崎選手ですが、だからこそ与えてもらったチャンスを最大限に生かしたいと思っているに違いありません。ことし1軍でマスクをかぶる姿を、ぜひ見せてください。

掛布DC “3兄弟”に期待

掛布DCに、このキャンプで伸びた選手を尋ねると「横田でしょう、やっぱり。古屋監督も平田監督から引き継いで、2年目の横田の形をいかに作っていくかというのが、大きな課題の1つだったはず。本人もいろいろと自分の野球を考え始めていますよ。僕が課題というボールを投げれば、それを自分でああしよう、こうしようと考えて打ち返してくるから。あすにつながる準備をして球場に来る」。それは大きな成長ですねえ。

バッティングに関して、これからの横田選手に必要なことは何ですか?「素振りというのは、自分のタイミングですべてのボールを打てる。同じようにゲームでも自分で主導権を握って打つ、ってのはテーマだよね。でも素振りが、たとえばシートバッティングなどで直接“バッティングとイコールに”なっていない。イコールになるには、もうちょっと時間がかかるかな。だけど試合でポンポーンと2、3本打ってしまえば、素振りとバッティングがイコールになることもあるよ。僕は比較的それが早かったほうなんだよね」と掛布DC。そして「イコールになれば横田が自分でつかめる。その手助けができる“トス”なりをしたいと思っています。つかめばデカいよ~!」と何だか楽しそうでした。

締めの全員ランニング。横山投手、植田選手、トラヴィス投手あたりが掛け声の係?
締めの全員ランニング。横山投手、植田選手、トラヴィス投手あたりが掛け声の係?

そこへやってきたのが一二三選手、横田選手、植田選手の3人。掛布DCは「おお~来たねえ。問題児3兄弟が(笑)。長男、次男、末っ子」と言ってニコニコ。それを聞いて一二三選手は思わず吹き出します。「植田はまだ上でやるには時間がかかるけど、足も使えるし雰囲気がある。楽しみだよ。一二三は危機感を持ってやっている。気持ちの粘りが今ありますね」と、長男と末っ子にもひとことずつ。

「北條は安芸にいない方が嬉しい」

掛布DCはさらに「田上が今、いいかな。関本、狩野、岡崎、小豆畑も。1年間やったことがキャンプの中で形として見え出した。ゲームに直結するとは限らないけど、1人1人が全体にレベルアップしているような気がします。僕も2年目で、みんなの顔がわかっているのでやりやすいですしね」と続けます。

そういえば昨年の安芸キャンプで“ひげダンス指導”をはじめ、かなり密度の濃い関係だった北條選手が、ことしは沖縄スタートです。ちょっと寂しい、なんてことはないですよね?と聞いてみたら、こんな答えが返ってきました。北條選手にとって最高のエールでしょう。

「北條とは、離れ離れの方が嬉しいな」

「テレビであいつの顔を見てた方がいいよ」

フリーアナウンサー、フリーライター

兵庫県加古川市出身。MBSラジオのプロ野球ナイター中継や『太田幸司のスポーツナウ』など、スポーツ番組にレギュラー出演したことが縁で阪神タイガースと関わって約40年。GAORAのウエスタンリーグ中継では実況にも挑戦。それからタイガースのファームを取材するようになり、はや30年が経ちました。2005年からスポニチのウェブサイトで連載していた『岡本育子の小虎日記』を新装開店。「ファームの母」と言われて数十年、母ではもう厚かましい年齢になってしまいましたが…1軍で活躍する選手の“小虎時代”や、これから1軍を目指す若虎、さらには退団後の元小虎たちの近況などもお伝えします。まだまだ母のつもりで!

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