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北陸遠征こぼれ話 福井で奮闘中の田面巧二郎投手《阪神ファーム》

岡本育子フリーアナウンサー、フリーライター
福井に行って2週間の田面投手(右)。すっかり打ち解けたのは、この先輩のおかげ?

『弁当忘れても傘忘れるな』という言葉がある北陸や山陰。これまで阪神タイガースのファームが独立リーグ・BCリーグとの交流試合で北陸へ遠征した際も、しっかり雨に見舞われました。これまで2度あったと記憶していますが、どちらも1試合目の石川ミリオンスターズ戦が中止、翌日の富山サンダーバーズ戦は何とかできたんですね。ちょっと振り返ってみましょう。

2009年は野原祐也選手の凱旋

最初の対戦は2009年7月のオールスター明け。27日に金沢の石川県立野球場で予定されていたナイター・石川戦が直前の大雨で中止になりました。石川の監督だった金森栄治さん(西武-阪神-ヤクルト)が、残念そうに着替えていらっしゃったのを覚えています。そして翌28日は富山県礪波市のとなみチューリップスタジアム。富山サンダーバーズから阪神に入った野原祐也選手が支配下選手登録されたばかりで、地元の皆さんは大歓迎!ナイター終了後にサイン会もありました。結果と成績は以下の通り。富山の小山内投手は現在、阪神の打撃投手を務める小山内大和さんです。

《2009年7月28日 交流試合》

富山-阪神 (となみチューリップ)

阪神 002 000 000 = 2

富山 002 000 000 = 2

※9回引き分け

◆バッテリー

【阪神】白仁田-清原-横山-若竹-黒田-辻本 / 清水-小宮山-(5回~)-橋本(7回~)

【富山】萩原(5回)-小山内(1回)-田中(1回)-生出(1回)-日名田(1回)- / 松橋

◆打撃(打-安-点/三振-四死球)

1]中:柴田   (3-0-0 / 0-0)

〃中二:大城  (1-0-0 / 0-0)

2]二:上本   (3-1-0 / 1-0)

〃打中:高橋勇 (1-0-0 / 1-0)

3]遊:水田   (3-1-1 / 0-0)

〃遊:藤井宏  (1-0-0 / 0-0)

4]右:野原祐  (4-2-1 / 0-0)

5]捕指:清水  (3-0-0 / 0-1)

6]三:野原将  (3-1-0 / 1-0)

〃打三:田中  (1-0-0 / 1-0)

7]指捕:小宮山 (2-0-0 / 0-0)

〃打捕:橋本  (1-0-0 / 1-0)

8]一:森田   (3-1-0 / 0-0)

9]左:高濱   (3-1-0 / 1-0)

◆投手(安-振-球/失点)

白仁田 3回 58球 (4-2-1 / 2)

清原  2回 41球 (4-1-1 / 0)

横山  1回 18球 (1-2-1 / 0)

若竹  1回 16球 (0-1-1 / 0)

黒田  1回 19球 (2-0-0 / 0)

辻本  1回 6球 (0-0-1 / 0)

2012年は杉山投手との再会

富山GRNサンダーバーズのマスコット『ライティ』。富山県の雷鳥が由来です。
富山GRNサンダーバーズのマスコット『ライティ』。富山県の雷鳥が由来です。

次に北陸遠征があったのは2012年でした。初日にナイターで予定されていた石川戦は、ずっと振り続いた雨で16時前に中止が決まり、行われたのは6月10日のデーゲーム・富山戦のみ。スポニチアネックス『岡本育子の小虎日記』で書いた記事の一部を、編集して貼っておきます。先発は今年と同じ(高橋)元気投手で、穴田選手がホームランを打って追いつき、3年前と同じく引き分けました。

10日は願いが通じて富山サンダーバーズとの交流試合は無事行われました。会場である富山県高岡市の城光寺野球場に着いてすぐ、杉山直久投手兼任コーチを発見!練習中というか、指導中だったけれど一応あいさつを…とグラウンドへ出た途端に雨が降り始めたんです。すぐ止むだろうと思ったら、これが本降り!さすがオスギさん。阪神ベンチからは「スギ、出てくるな~」なんて声まで飛んでいましたよ。

試合については「3分の1回だけ投げますよ。祐也の時に。3分の0で終わったりして。あ、清水にデッドボールでもいいな(笑)」という“抱負”を語っていた杉山投手。いやいや、当てられる清水選手は災難でしょう。そして、ちょうど7回2死二、三塁で4番のところに登板したんですが、野原祐也選手は5回の打席で右すねに死球を受けて下がったあとでした。代わって途中出場の阪口選手が初球で三飛に倒れたため、たった1球で終了しています。

《2012年6月10日 交流試合》

富山-阪神 (高岡・城光寺)

阪神 000 010 000=1

富山 100 000 000=1

※9回引き分け

◆バッテリー

【阪神】松田-吉岡-伊藤和-横山-島本-松崎-蕭 / 清水-橋本(6回~)

【富山】元気(5回)-メサ(1回)-川畑(2/3回)-杉山(1/3回)-隆史(1回)-菊地(1回) / 大陽

◆本塁打 穴田ソロ(元気)

◆打撃(打-安-点/三振-四死球)

1]指:荒木   (3-1-0 / 1-0)

〃打指:俊介  (1-1-0 / 0-1)

2]遊三:藤井宏 (4-2-0 / 1-0)

3]二遊:西田  (5-1-0 / 0-0)

4]一:野原祐  (1-0-0 / 0-2)

〃二:阪口   (1-0-0 / 0-1)

5]右:中谷   (5-0-0 / 3-0)

6]捕:清水   (2-0-0 / 2-1)

〃捕:橋本   (1-0-0 / 0-0)

7]中:甲斐   (4-1-0 / 1-0)

8]三一:穴田  (4-1-1 / 2-0)

9]左:一二三  (4-2-0 / 0-0)

◆投手(安-振-球/失点)

松田  2回 29球 (3-1-1 / 1)

吉岡  2回 45球 (2-1-1 / 0)

伊藤和 2回 26球 (0-1-1 / 0)

横山 2/3回 8球 (0-0-0 / 0)

島本 1/3回 7球 (1-0-0 / 0)

松崎  1回 15球 (0-0-1 / 0)

蕭   1回 18球 (1-0-0 / 0)

福井フェニックススタジアムでボールボーイを務めた男の子たち。可愛いでしょう?
福井フェニックススタジアムでボールボーイを務めた男の子たち。可愛いでしょう?

1軍の北陸シリーズも、よく中止になっていますし、2試合ともできた今回はすごい!11日はどんよりした空模様ながら雨の心配がなく、12日は好天に恵まれて本当によかったですね。ことしはウエスタン公式戦で中日との2試合(8月15日の高岡、16日の金沢)も予定されています。今度こそ金沢でゲームができるかどうか、注目したいところです。

3ヶ月間は“福井”の田面投手

さて、12日に福井フェニックススタジアムで行われた福井ミラクルエレファンツ戦の際、田面投手と少し話ができたのでご紹介します。その前に今回、阪神と福井の間で業務提携が結ばれ、球団初の“派遣選手”として福井へ行くことになった時のこと。「最初は驚きもありました。こういうこともあるんだな、って。でも違う場所でも前向きに取り組んでいきたい。ことしはキャンプや教育リーグでしっかりやれていたので、福井でも何かを身につけてきます」。そう意気込みを語っていた田面投手です。

8回に登板。1安打1四球はあったものの無失点でした。
8回に登板。1安打1四球はあったものの無失点でした。

新しい仲間、新しい環境による戸惑いもあろうかと思ったんですが、すっかりチームに溶け込んだ様子。試合が終わって帰りのバスを待つ間も楽しそうに談笑していました。そして「岡本さん、覚えていますか?藤野さんですよ」と紹介されたのが、タイトル画像の左側に写る選手です。

藤野剛志投手(26)は田面投手より1歳上。大阪府出身で日本航空第二高校から大阪学院大学に進み、関西独立リーグの大和侍レッズ、紀州レンジャーズを経て昨年は社会人・カナフレックスに所属。ことしから福井ミラクルエレファンツでプレーしています。ということで昨年7月5日に、カナフレックスの藤井宏政選手を取材するため訪れた大阪商業大学とのオープン戦で一度会っているんですよ。取材メモにも『紀州レンジャーズ、藤野さん、コーチ→投手兼任』と書いていました。なのに藤野さんから言われても、すぐ思い出せなくて…すみません!

さらに藤野投手は、紀州レンジャーズ時代の2013年4月27日に行われた阪神との交流試合(鳴尾浜)で登板もしています。7対0で阪神勝利の試合ですが、藤野投手は8回1イニングを無失点。穴田選手と阪口選手から連続三振を奪い、黒田選手は二ゴロの三者凡退。ちなみにルーキーだった田面投手は6回からの2イニングを投げ、1安打2三振2四球の無失点でした。この時に藤井宏選手と、直接対決はなかったものの顔を合わせています。田面投手とも。

1つ違いの優しい先輩

2者残塁で0点に抑えた田面投手を迎える、エレファンツの選手たち。
2者残塁で0点に抑えた田面投手を迎える、エレファンツの選手たち。

藤野投手は「チームメイトには田面から話しかけたりしていますよ。なのでピッチャーの中では、年下の選手も他の先輩と変わらず接しているようですね。阪神戦の前には、みんなから質問攻めにあっていました(笑)。僕も、技術のこととか教えてくれるのでありがたい」と言います。そんな藤野投手と田面投手の会話をどうぞ。

藤野「1ヶ月も経たないうちに、こんな近くなるなんて。いや1ヶ月も経ってないか」

田面「2週間です」

藤野「まだ2週間?すっかりなじんでるな」

田面「こういう先輩がいるから心強いです。“ふところマニア”なんですよ」

ちょっと待って、ふところマニア?

田面「はい。ふところに入ってくるのがうまい!」

なるほど、それで親友のような掛け合いを展開しているわけですね。私も昔から知っているような錯覚に陥りました。こんなふうに大笑いしながら言い合う田面投手を見たのは初めてかもしれません。

藤野「何でも聞いてくるんですよ。試合や練習での動きとか。これはどうしたらいいんですか?って。僕もまだ2ヶ月やのに」

え、2ヶ月? 「はい…実は(笑)」

そうですね、藤野投手も福井に入ったのは今年ですよね。ということは、先輩は2ヶ月で後輩が2週間?あんまり変わらないかも。

藤野「そうですよ!いろいろ聞かれても困るっちゅねん」

田面「でも答えてくれるんですよ」

藤野「それはまあ、こんな感じちゃうかなーと思って」

金田投手が取り持つ縁?

福井ミラクルエレファンツのマスコットは、象から名づけられた『パオタロウ』。
福井ミラクルエレファンツのマスコットは、象から名づけられた『パオタロウ』。

他にもまだ縁があります。藤野投手は大阪学院大学で金田投手の1年先輩、今回の北陸遠征で会えるのを楽しみにしていたそうです。ところが金田投手は今月3日に1軍へ昇格。これは嬉しいドタキャンなんですけど、金田投手も「行けなくて残念でした」とのこと。田面投手を可愛がってくれているみたいで、面倒見のいい先輩ですねと振ったら「面倒見いいですけど、いじられキャラでもありましたよ」と金田投手。後輩にそう言われるなら、いい人に違いないでしょう。

いろんな偶然が重なっての出会いで、田面投手と同い年の金田投手が2人の接着剤になったのかも。「金田がいなかったら、田面ともここまで話したりはしていなかったと思う。金田に感謝です」と藤野投手。そして「まさか同じユニホームを着るとは。一緒にやる時間は短いけど、田面にはこれからも頑張ってほしい。心底そう思っています」と真剣な眼差しでした。さらに「田面がいるうちに、また見に来てください」と。ありがたい先輩の気持ちに応えなくちゃいけませんね。

いつもの穏やかな口調で答えてくれた田面投手。藤野先輩と一緒に頑張って下さい!
いつもの穏やかな口調で答えてくれた田面投手。藤野先輩と一緒に頑張って下さい!

最後に田面選手のコメントです。1人暮らしで食事は?「自炊はしていませんよ。スーパーなどで色々買ってきます」。バランスよく食べてくださいよ。試合が金土日にしか組まれていない点は特に問題ないと言っていました。調子はどうですか?「悪くないですね。フォアボールを出しても、すぐに切り替えて投げられています。まだスライダーが主体となっていますけど、しっかりと真っすぐ主体のピッチングにしていきたい」。3か月後、鳴尾浜に戻ってきた田面投手のストレートを楽しみにしています。

フリーアナウンサー、フリーライター

兵庫県加古川市出身。MBSラジオのプロ野球ナイター中継や『太田幸司のスポーツナウ』など、スポーツ番組にレギュラー出演したことが縁で阪神タイガースと関わって約40年。GAORAのウエスタンリーグ中継では実況にも挑戦。それからタイガースのファームを取材するようになり、はや30年が経ちました。2005年からスポニチのウェブサイトで連載していた『岡本育子の小虎日記』を新装開店。「ファームの母」と言われて数十年、母ではもう厚かましい年齢になってしまいましたが…1軍で活躍する選手の“小虎時代”や、これから1軍を目指す若虎、さらには退団後の元小虎たちの近況などもお伝えします。まだまだ母のつもりで!

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