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ソフトバンク3軍との練習試合 陽川選手が“今季1号”《6/25 阪神ファーム・前編》

岡本育子フリーアナウンサー、フリーライター
練習試合ながら、“今季1号”が出て「気持ちが楽になった」と笑顔の陽川選手。

24日に続き、25日もソフトバンク3軍との練習試合が行われた鳴尾浜。この日はソフトバンクのルーキー・島袋洋奨投手が登板すると聞いていたので、一二三選手との対決を心待ちにしていたのですが…残念ながら擦れ違い。これは「1軍でやりなさい」と神様が言っているんでしょう。一二三選手も楽しみにしていたようで、かなり悔しがっていました。そのあたりの話は(もったいぶっているわけではなく、例によって長くなりすぎるため)《後編》でご紹介します。お待ちください。

ソフトバンク3軍との練習試合は、いつ以来だったかと調べてみました。2012年7月3日と4日に滋賀県の皇子山球場で組まれていて、3日は雨天中止。4日の1試合だけ行われ、8対0で阪神ファームが勝っています。今回はそれ以来、3年ぶりの対戦。24日は4対4の引き分けでしたが、25日は1回に先制しながら逆転を許し、陽川選手のホームランなどで追い上げたものの1点及ばず敗戦です。

《練習試合》6月25日

阪神- ソフトバンク3軍 (鳴尾浜)

ソフ 010 130 000 = 5

阪神 200 001 100 = 4

◆バッテリー

【阪神】秋山-横山-石崎 / 岡崎-清水(6回~)

【ソフ】笠谷(5回)-齋藤(2/3回)-伊藤大(2回1/3)-島袋(1回) / 栗原

◆本塁打 陽川ソロ(齋藤)

◆三塁打 緒方

◆二塁打 緒方、ペレス2、白根、栗原、張本

◆打撃 (打-安-点/振-球/盗塁/失策)

1]二遊:森越  (4-1-0 / 1-1 / 0 / 0)

2]右中:緒方  (5-3-1 / 0-0 / 0 / 0)

3]遊二:北條  (4-0-0 / 0-1 / 0 / 0)

4]指:ペレス  (4-3-0 / 1-0 / 0 / 0)

〃走指:小豆畑 (1-0-0 / 0-0 / 0 / 0)

5]一:中谷   (5-2-2 / 1-0 / 0 / 0)

6]中右:横田  (5-0-0 / 1-0 / 1 / 0)

7]三:陽川   (4-2-1 / 1-0 / 0 / 0)

8]捕:岡崎   (2-0-0 / 0-0 / 0 / 1)

〃捕:清水   (2-0-0 / 0-0 / 0 / 0)

9]左:一二三  (3-0-0 / 2-1 / 0 / 0)

◆投手(打-振-球/暴投-失策/失-自)最速キロ

秋山 4回 59球 (6-5-0 /0-0/ 2-1) 142

横山 3回 69球 (5-5-1 /0-0/ 3-3) 147

石崎 2回 23球 (0-3-0 /0-0/ 0-0) 149

試合経過

1回は宮崎に右前打されるも他はすべて三振で切って取った秋山。その裏の攻撃は先頭の森越が右前打し、続く緒方の右中間タイムリー三塁打で鮮やかに先制!北條は四球、ペレスは見逃し三振で2死となりますが、暴投で二塁へ進んだ北條を中谷が右前打で還して2点目が入りました。ところが秋山は2回、先頭の栗原に中前打され犠打で二塁へ。2死後に8番・幸山の右前タイムリー。

3回は宮崎に中前打と盗塁だけで0点に抑えますが、4回に張本の三塁線を破る二塁打などで2死二塁となり、幸山の中前タイムリー。これで同点です。秋山は4回で交代。6安打のうち宮崎と幸山に2本ずつ、幸山にはタイムリー2本を許しました。ただし4回はタイムリーの前にファウルボールを岡崎が落とすエラーがあったため、自責点は1です。

2人目は横山。先頭の大滝に中前打、宮崎は犠打、勧野の左前打で1死一、二塁として4番・白根に左中間へのタイムリー二塁打を浴びて2点。続く栗原にも右越えタイムリー二塁打。この回3点を勝ち越されます。6回は先頭の幸山に左前打され犠打で二塁へ進めるも後続を連続三振で断って無失点。7回も四球、犠打のあと栗原と張本から連続で三振を奪って、横山は3イニングで5安打3失点でした。

ホームランの陽川選手を迎える阪神ベンチ。秋山投手と横山投手も笑顔でハイタッチ!
ホームランの陽川選手を迎える阪神ベンチ。秋山投手と横山投手も笑顔でハイタッチ!

なお2回以降の打線は、3回2死からペレスが右翼線二塁打、4回は陽川の左前打があっただけ。5回に緒方の右中間二塁打とペレスの左前打で2死一、三塁としますが得点ならず。しかし6回、ソフトバンク2人目の齋藤から陽川がレフトへホームラン!2死後に一二三と森越が四球を選んで追加点のチャンスを作ったものの、投手が伊藤大に代わり緒方は左飛で1点止まりです。

7回は1死からペレスが右中間二塁打を放ち、中谷の中前打で代走の小豆畑が生還!このときホームへ滑り込んだ小豆畑ですが、うまく滑っていなかったような…。ケガがなくて何よりでした。さらに横田がショート曽根の捕球エラーで出て、陽川の空振り三振で盗塁しますが清水は遊ゴロ。やっぱり1点しか返せません。

1点差で、阪神は3人目の石崎が登板。8回は投ゴロと連続三振(146キロの真っすぐと131キロのチェンジアップ)の三者凡退。9回も遊ゴロと投ゴロ、最後が147キロの真っすぐで勧野を空振り三振と、2回をパーフェクト!勧野への初球で149キロが出ました。

7回が終わった時が8番の清水だったので、一二三から始まる8回は島袋が…と思っていたら、なんと伊藤大が続投。ちょっとガッカリしちゃいました。いえ、伊藤大投手に何ら不服はありません。もちろん、そのせいではないでしょうけど一二三はあっさり3球を見逃して三振。2死後に緒方が右前打し、伊藤大の牽制悪送球で二塁へ進みましたが得点なし。

終了後に整列して挨拶。小川監督、佐々木コーチ、村松コーチと懐かしい顔ぶれです。
終了後に整列して挨拶。小川監督、佐々木コーチ、村松コーチと懐かしい顔ぶれです。

そして9回裏、ようやく待ちかねた島袋が登場です。投球練習から、あの独特のフォームでスタンドを沸かせました。あまりスムーズな投げっぷりではない気がしたのに、球速は140台後半を連発!まず小豆畑を146キロで右飛、中谷は144キロで二直、横田への初球で149キロをマークし、最後は145キロで遊ゴロ。たった10球で、あっという間に片づけられ試合終了です。

「真っすぐで打ち取る強さも必要」

まず、4回を投げて6安打2失点(自責1)の秋山投手です。詰まった当たりがヒットになったことも多く「真っすぐは、ここ何試合かで一番よかったと思います。でも練習試合なので。真っすぐ1本で狙ってきている打線でしたが、そこで打ち取る強さも持っておかないと、と真っすぐ多めでいきました。はじき返されることもあったけど、あれくらいで押して変化球を使えれば悪くないと思う」と言います。今回も四球はなし。「きょうに関してはどうですかね。向こうもどんどん振ってきていたので、助けられたところもある」

内容的には「まあランナーが出てから特に崩れることもなかったし。しいて言えば太一さんのエラーのあとを、しっかり抑えたかった。同球種だったので、ちょっともったいなかったです」とのこと。これは4回2死二塁で迎えた幸山選手に対し、初球をファウルさせたものの岡崎選手が落としてしまい、次の球を打たれて中前タイムリーになった場面です。2球とも真っすぐだったのでしょう。同じ140キロでした。

1軍の先発候補に何人か名前が挙がっていて、昇格にかかわる試合だった秋山投手。「意識しつつ、ストライクを投げ込みつつ、安打数の割には良かったと思います。まだまだ状態としては上がっていく過程だと思っているし、やれることをただ一生懸命やって、呼ばれたら頑張りたいです」

石崎 150キロ出そうな感じも

石崎投手は2回をパーフェクト。しかも最速149キロをマークしています。「積み重ねてきたことが、やっと数字に出てきたと思います。壁にぶつかりましたけど、徐々に球速も出てきましたし。8回は、振ったつもりでも全力で腕が振れていなかったので、9回は3番バッター(勧野選手)の1球目で思いきり振りました!」。なるほど、それで149キロですか。150出してやろうと?「投げた感じが、出そうだなとは思いましたね」

石崎投手は2イニングを、力強く完璧に抑え込みました。
石崎投手は2イニングを、力強く完璧に抑え込みました。

今回のピッチングは「前回の広島戦より感覚はよかった」そうで、その要因について「トップの位置を早く作るようにしたんです。簡単に言えば。前は体重移動の時にトップを作っていたけど、今はその前に作るイメージです」と説明。ヒジが上がっている点は「それは自然と。上げようと思っているのではなく、トップを早く取ろうとすると上がります」とのこと。「ここまでトップを意識したのは初めて。社会人でも考えてはいたけど、そこまで重要視していなかった」

1軍での登板を期待される右腕ですが「上にいくと思うとプレッシャーがかかるので、ここでもっと自信をつけていきたい」と、その時に備えて慎重にやっていく意向のようです。

また、3イニングで5安打を許した横山投手は「次やるしかない。課題ばかりなので」という言葉でした。5回の3失点は、どちらも変化球を打たれての連続タイムリー二塁打。変化球を狙われたか?の問いに「それはないです。普通に合わされていたと思う」と答え、そのあと2イニングは無死点で「3点も取られたんで吹っ切れて、悪いなりにコースに決まっていたかと。ズルズルいかなかったのはよかった」と振り返りました。

さすがの飛距離!陽川の1発

冒頭の写真の前に、一応こんなこともしてみました。陽川選手です。
冒頭の写真の前に、一応こんなこともしてみました。陽川選手です。

6回に“今季1号”を放った陽川選手。「真っすぐですね。特に狙い球ではなく甘かったんで。打った瞬間でした」。レフトの外側で見ていた人によれば、相当飛んでいたらしく「見失ったと思ったらネットの当たって落ちてきた」とか。陽川選手も打球を追えなかったみたいです。鳴尾浜の防球ネットは結構高くて50メートルあります。その上の方に当たったとすれば、かなりの飛距離でしょう。

「これが公式戦ならよかったんですけど、1本出て気持ちが楽になりました。ずっと真っすぐに差し込まれていたので、その真っすぐをレフトに打てたというのは、徐々にタイミングが取れてきたってことかなと思います。ただ最後の打席(ホームランの次、7回1死一、三塁で空振り三振)がもったいなかった」と反省。これをきっかけに?「そうなってくれたらいいですけどね」

けどね、って控えめな。前向きに「いいですね」と言っときましょう。何なら「そうなります!」でもいいですよ。陽川選手の速い打球、大きな当たりがこれからどんどん増えてきそうな予感がします。昨年に続いて、ことしもバックスクリーン越えのホームランを見せてください。

3安打の緒方&ペレス

今季初の3安打に笑顔で引き揚げてくる緒方選手。左投手からの長打2本が収穫です。
今季初の3安打に笑顔で引き揚げてくる緒方選手。左投手からの長打2本が収穫です。

緒方選手は、初回にタイムリー三塁打、5回は二塁打、8回に右前打で5打数3安打。試合後、ホームランが出ればサイクルだったと言ったら、スコアブックを覗きこんで「わ、ほんまや!」と驚いていました。気づいていなかったみたいですね。「何より左ピッチャーから打てたこと。ことしは左ピッチャーの時に出ていないことが多いと思いますが、こういう機会にしっかり打てたのでよかったです。左に対してデータ的には数字が低いかもしれないけど、苦手意識はありません」

ペレス選手も初長打&3安打と調子が上がってきました。「きょう、ボールはよく見えていた。状態もいい。これからもいいボールを打っていくだけです」。左投手について「苦ではない。左の方が体を開かないよう意識させてくれるので」とのこと。ストライクゾーンも「独立リーグとはレベルが違う。勉強しています」と前向きでした。

なお試合前に一二三選手と接触して倒れたことを聞かれたペレス選手。永田通訳から「ヒフミ」という言葉が出た途端に、なぜかニヤニヤ笑いながら右足のふくらはぎ付近を指差し「すり傷です。大丈夫。ほんとに大丈夫です」と繰り返していたので、問題ないと思われます。

そうそう、もうひとつ。24日の試合でペレス選手が、うしろ(バックネット方向)へ豪快なファールボールを飛ばしたのを覚えていらっしゃいますか?8回に笠原投手の初球、真っすぐを打ったものです。これがどうやら“場外ファウル”だったみたいで、ボールボーイさんが探しに行っても敷地内にはなかったと言っていました。つまり…道路へ出たんでしょう。お客様が取りにいかれたかも?とのこと。今度は前へ飛ばしてくださいね~!

一二三選手と島袋投手の話、3年前に阪神ファームが島袋投手と対戦した時のことなどは《後編》で書いています。こちらからどうぞ。<一二三vs島袋 “あの夏”以来 5年ぶりの対決は持ち越し《6/25 阪神ファーム・後編》>

フリーアナウンサー、フリーライター

兵庫県加古川市出身。MBSラジオのプロ野球ナイター中継や『太田幸司のスポーツナウ』など、スポーツ番組にレギュラー出演したことが縁で阪神タイガースと関わって約40年。GAORAのウエスタンリーグ中継では実況にも挑戦。それからタイガースのファームを取材するようになり、はや30年が経ちました。2005年からスポニチのウェブサイトで連載していた『岡本育子の小虎日記』を新装開店。「ファームの母」と言われて数十年、母ではもう厚かましい年齢になってしまいましたが…1軍で活躍する選手の“小虎時代”や、これから1軍を目指す若虎、さらには退団後の元小虎たちの近況などもお伝えします。まだまだ母のつもりで!

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