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どうにも止まらない北のミサイル発射 列島をいつ飛び越えるか!

辺真一ジャーナリスト・コリア・レポート編集長
軍事パレードに登場した北朝鮮の長距離弾道ミサイル「KN-08」

北朝鮮の黄海北道・黄州から「ノドン」とみられる中距離弾道ミサイル3発が東北東に向けて発射され、いずれもおよそ1000キロ飛んで日本海の日本の排他的経済水域の中に落下した

北朝鮮は今年に入って弾道ミサイルを13回、延べ21発を発射している。このうち、日本の全域を射程に収めた中距離弾道ミサイル「ノドン」(1200~1300km)が3回で計6発、太平洋上の米軍基地であるグアムを標的にした中距離弾道ミサイル「ムスダン」(射程2500~3000km)が4回で計6発、そして「敵(日米韓)の後頭部を叩くことができる」(金正恩委員長)潜水艦弾道ミサイル(SLBM)が3発発射されている。そして、そのすべてが、日本列島を飛び越えず、手前の日本海に落下している。

全長15.5m、弾頭重量700kgの「ノドン」は3月18日に平安南道・粛川から発射され、朝鮮半島を横断し、約800km飛行し、日本の防空識別区域(JADIZ)内に落下。2回目は7月19日で今回同様に黄海北道・黄州から高角で発射され、150km以上上昇し、発射地点から600kmの日本海に着弾している。北朝鮮は「目標上空の、設定された高度でミサイルに搭載された核弾頭の起爆装置の爆破動作を調べた」として、核起爆実験を行った可能性を示唆していた。

そして、先月3日の「ノドン」は黄海南道・殷栗から発射され、1000km飛行し、日本の排他的経済水域に落下した。日本の防空識別圏にも侵入していた。(※「ノドン」は1回につき、それぞれ2発発射されているが、そのうち1発はいずれも「空中爆破して、失敗した」と報道されている)

全長12m、弾頭重量650kgの「ムスダン」は4月15日、4月28日(2回)、5月31日とすべて失敗していた。しかし、6月22日に発射された2発のうち午前8時に発射された2発目が高度1400km以上上昇した後、発射地点から約400kmのところに着弾した。

米国防省は「ムスダン」が宇宙空間に進入した後、「大気圏に再突入してから402.336km飛行していた」ことを確認していた。大気圏外からの弾頭の再突入には6千度前後の高熱に耐える技術が必要だが、北朝鮮はその技術を取得したことになる。

また最初に発射された1発目は空中爆発して、失敗したと伝えられていたが、北朝鮮は予定していた高度(150~160km)でミサイルに装着した操縦措置によって意図的爆発させたとしている。意図した爆発について「電磁波爆弾を搭載した『火星―10』(ムスダン)を(偵察衛星が回転する軌道に)打ち上げ、任意の時間に、任意の位置で爆発されれば米国の偵察衛星を屑鉄の塊にすることができる」と北朝鮮は主張している。

全長10m、弾頭重量650kgの「北極星―1号」と称する潜水艦弾道ミサイル(SLBM)の発射実験を北朝鮮が初めてテストしたのが昨年5月。150mしか飛行せず、空中爆破し、失敗に終わっていた。

今年4月23日に咸鏡南道・新浦沖で1発発射したが、30km飛行しただけでまたもや空中爆破。7月9日に再度トライしたが、これまた10km上昇したところで爆発し、失敗に終わった。

しかし、3度目の8月24日の発射では放物線を描いて飛行し、一定の高度で1段と2段が分離し、2段目の推進体が発射地点の新浦沖から500kmの日本の防空識別圏に落下している。僅か1年数カ月でSLBMを完成させている。燃料を調整せず、高角度ではなく正常に発射していれば、1000~2000kmは飛行したと言われている。

北朝鮮は今年2月23日の最高司令部の重大声明で朝鮮半島有事の際の第一次攻撃対象は韓国の青瓦台(大統領府)と韓国内の基地及び施設、第二次攻撃対象として「太平洋上の米軍基地と米本土である」と公言し、それに従って、韓国全土を標的にした500kmの弾道ミサイル、在日米軍基地とグアムのアンダーソン基地をターゲットにした「ノドン」と「ムスダン」に続き、SLBMの発射実験も並行して行ってきた。

最高司令部の重大声明に基づけば、次は米本土を狙った全長約18m、弾頭重量700kgの移動式大陸間弾道ミサイル「KN-08」及びその改良型の「KN-14」の番になる。

今から13年前の2003年9月に米政府高官の話として「北朝鮮にはロシアの技術を用いて米本土全域に打撃を与えることのできる射程距離約1万5千kmの長距離弾道ミサイルを開発中にある」との情報が伝わっていたが、推測の段階だった。

その6年後の2009年4月に北朝鮮は衛星と称して「テポドン」を発射したが、発射直後に「国連安保理が制裁決議すれば、自衛的措置として、大陸間弾道ミサイル(ICBM)を発射する」と警告していた。

ゲーツ前米国防長官が現職の2011年1月に訪中した際、北朝鮮のミサイル開発について「5年以内に北朝鮮が大陸弾間道弾ミサイル(ICBM)を配備するかもしれない。そうなれば、米国の安全保障にとって極めて脅威」と発言していた。

ゲーツ発言を裏付けるかのように翌年の2012年4月15日に金日成生誕100周年を記念して行われた軍事パレードに登場したのが「KN-08」だ。

「KN-08」はお披露目されたにもかかわらず一度も発射実験されたことがないが、エンジン燃焼実験はこれまでに少なくとも6回行われている。

米国防総省ミサイル防衛局のシリング局長は昨年3月18日、上院歳出委員会の小委員会で証言し、「KN-08」について「いつでも初の発射実験を実施できる状況にある」と述べ、警戒感を示していた。

「KN-08」が発射されれば、日本列島を飛び越え、太平洋上に着弾することになるが、北朝鮮はこの発射実験にいつ踏み切るのだろうか?

ジャーナリスト・コリア・レポート編集長

東京生まれ。明治学院大学英文科卒、新聞記者を経て1982年朝鮮問題専門誌「コリア・レポート」創刊。86年 評論家活動。98年ラジオ「アジアニュース」キャスター。03年 沖縄大学客員教授、海上保安庁政策アドバイザー(~15年3月)を歴任。外国人特派員協会、日本ペンクラブ会員。「もしも南北統一したら」(最新著)をはじめ「表裏の朝鮮半島」「韓国人と上手につきあう法」「韓国経済ハンドブック」「北朝鮮100の新常識」「金正恩の北朝鮮と日本」「世界が一目置く日本人」「大統領を殺す国 韓国」「在日の涙」「北朝鮮と日本人」(アントニオ猪木との共著)「真赤な韓国」(武藤正敏元駐韓日本大使との共著)など著書25冊

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