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仏像も、窃盗団も直ぐに日本に引き渡すべきだった!

辺真一ジャーナリスト・コリア・レポート編集長
問題の「観世音菩薩坐像」

長崎県対馬市の観音寺から盗まれ韓国に持ち込まれた同県指定有形文化財「観世音菩薩坐像」について像を保管する韓国政府に管轄の韓国大田地裁は所有権を主張する韓国の浮石寺に像を引き渡すよう命じる判決を出した。

裁判結果について韓国政府(外交部)は「政府を代表した検察側の主張が認められなかった。検察が判決内容を詳しく分析し、関連法に基づいて必要な措置を取る」と述べているが、司法に持ち込んでしまったことが大いなる過ちである。

「観世音菩薩坐像」は韓国人の窃盗団が李明博前政権下の2012年10月、観音寺から盗み、韓国に持ち込んだものだ。窃盗団は3か月後の2013年1月に韓国で検挙され、仏像は押収されたが、韓国政府はこの時点で速やかに日本に返還すべきだった。窃盗団も日本で裁かれるよう引き渡すべきだった。そうすれば、今回のような事態は防げたはずだ。日韓間の外交問題に発展することもなかった。

結局、もたもたしている間に裁判沙汰となり、2013年2月に「観音寺が正当な手段でこの仏像を取得したことが証明されるまで日本側に返還してはならない」とする仮処分決定が下されてしまい、身動きが取れなくなってしまった。当時、日韓関係は李明博大統領(当時)の「竹島(独島)上陸」で最悪の状況下にあったのでこの判決は十分に予想できていたはずだ。

韓国政府は沈没した客船「セウォル号」への対応や釜山領事館の「少女像」の設置への対応もそうだが、とにかく初動が杜撰で怠慢だ。やることなすことすべて後の祭りだ。その結果、外交的重荷を背うことになる。

思えば、この頃、靖国神社放火事件の中国人容疑者を韓国政府は中国に引き渡してしまう事件があった。日中間で綱引きをしていた靖国神社放火事件の中国人容疑者を韓国政府はソウル高裁の判決を理由に中国に引き渡してしまったのだ。

日本と韓国との間には犯罪人の引き渡し協定があるが、韓国と中国との間にはない。常識からして、日本に引き渡すのが筋であった。

この中国人は韓国でもよりによって日本の大使館に火を放そうとした言わば「放火魔」である。一度ならず、二度となると日本としては黙っている訳にはいかない。日本政府が犯罪人引渡し法に則って引き渡しを求めるのは当然のことであった。しかし、韓国は「放火魔」でなく、「義憤に駆られ、犯行に及んだ政治犯である」との中国の言い分を受け入れ、中国に引き渡してしまった。

かつて大韓航空機爆事件の実行犯、金賢姫がバーレンで身柄を拘束された際に「蜂谷真由美」という名の偽造パスポートを所持し、日本人を装っていたことから日本がバーレン当局に日本への引き渡しを求め、韓国と綱引きを演じたが、日本は韓国側の立場を重んじ、韓国への引き渡しを優先させた。日本に漂着した北朝鮮の脱北者の引き渡しをめぐる南北の綱引きで一貫して韓国に送還してきた。日本の配慮に応えるならば、「放火魔」も「窃盗犯」も日本に引き渡すのがあるべき姿だ。

高裁での逆転判決を期待するほかない。

ジャーナリスト・コリア・レポート編集長

東京生まれ。明治学院大学英文科卒、新聞記者を経て1982年朝鮮問題専門誌「コリア・レポート」創刊。86年 評論家活動。98年ラジオ「アジアニュース」キャスター。03年 沖縄大学客員教授、海上保安庁政策アドバイザー(~15年3月)を歴任。外国人特派員協会、日本ペンクラブ会員。「もしも南北統一したら」(最新著)をはじめ「表裏の朝鮮半島」「韓国人と上手につきあう法」「韓国経済ハンドブック」「北朝鮮100の新常識」「金正恩の北朝鮮と日本」「世界が一目置く日本人」「大統領を殺す国 韓国」「在日の涙」「北朝鮮と日本人」(アントニオ猪木との共著)「真赤な韓国」(武藤正敏元駐韓日本大使との共著)など著書25冊

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