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【新型YZF-R1&R1M試乗インプレッション】途方もない速さを安心感の中で引き出せる

佐川健太郎モーターサイクルジャーナリスト
YAMAHA YZF-R1/R1M
YAMAHA YZF-R1
YAMAHA YZF-R1

ツイスティロードを最もエキサイティングに楽しめるマシン。初期型からクロスプレーンコンセプトを投入した先代R1に至るまで、そのコンセプトはブレることなく受け継がれてきた。ただ、先鋭化するライバルたちを横目にR1がかつての輝きを失いつつあるように感じていたのは私だけではあるまい。国産勢が過去の栄光にとらわれている間に、海外勢はテクノロジーに磨きをかけていた。いつの間にか、時代は電子制御の戦いになっていたのだ。

そんな鬱憤を一気に晴らしてくれたのが、今回登場した新型R1である。新型R1が目指したのは「サーキット最速」という性能。その単純明快な命題に対して開発陣は"ノーエクスキューズ(言い訳なし)"をスローガンに掲げた。

ヤマハが持てるすべての技術力を結集した、勝つために生まれたマシンなのだ。

目の前のR1はちょっと大柄なイメージがある。ライポジもハンドルが従来型より遠く、シート高もかなり高め。街乗りなど無視した完全なレーシングポジションだ。重心の高さを生かして倒し込みの切れ味を出してきた、歴代R1のメリットをさらに強調しているようだ。

まず走り出しでの軽やかさに驚く。200kgという車重もさることながら、それ以上に転がり抵抗や機械的なフリクションを感じさせない軽さ。この感じはレーシングマシンに近い。コーナー倒し込みでも特にキッカケなど作らなくてもペタッと寝ていく。うまく表現できないが、どんなバンク角でもうまく曲がれる感じ。それだけラインの自由度が高いということだ。

200psに裏打ちされた加速も「素晴らしい」の一語に尽きる。試乗会場となった富士スピードウェイでは1.2kmのホームストレートで楽々299km/hを表示。リミッターがなければさらに伸びそうな勢いだ。クロスプレーンが奏でる独特のノイズを含んだ高周波サウンドはまるでGPマシンのようで、乗っていると気持ちもどんどん高揚してくる。

このクラスになると、有り余るパワーを制御するのが難しくなる。たとえば、コーナー立ち上がりではスロットルをちょっとラフに開けるだけでハイサイドになりかねない。そこを絶妙なバランスで制御してくれているのが電子デバイスの数々である。

6軸センサーによる姿勢制御技術を投入したトラクションコントロールやスライドコントロール、前後連動ABSなどが、ライダーを影でサポートしてくれている。開発者の話では、従来はライダーの能力の4割を操作系に取られていたが、新型R1ではそこをマシンが肩代わりすることで2割に低減。残りをライバルとの駆け引きや危険回避にも振り分けられるようにしたそうだ。

たしかに、R1に乗っていると、途方もないアベレージで走っているのに、余裕があるというか落ち着いて走りを組み立てられる安心感がある。それでいてわざとらしくなく、ライダーの腕が上がったかと思わせる。その演出も絶妙だ。

R1Mにも試乗してみた。オーリンズ製電子制御サスペンションやワイドハイグリップタイヤを標準装備した上級バージョンだが、STDと比べると高速コーナーでの安定感が増して、乗り心地そのものにグレード感が出ている。タイヤの性能も一枚上手なので、より攻め込んだ走りができるのもメリットだろう。

また、通信タイプのデータロガーを搭載しているので自分の走行データを分析し、プロライダーの走りと比較できるなど、ライディングスキル向上のためのツールとしても魅力的である。サーキットで楽に速く走りたい、どんなマシンが相手でも有利に戦える。そんな願いを適えてくれる筆頭マシンだろう。

出典:Webikeバイクニュース

モーターサイクルジャーナリスト

63年東京生まれ。早稲田大学教育学部卒業後、RECRUITグループ、販促コンサルタント会社を経て独立。趣味が高じてモータージャーナルの世界へ。編集者を経て現在はジャーナリストとして2輪専門誌やWEBメディアで活躍する傍ら、「ライディングアカデミー東京」校長を務めるなど、セーフティライディングの普及にも注力。㈱モト・マニアックス代表。「Webikeバイクニュース」編集長。日本交通心理学会員 交通心理士。MFJ認定インストラクター。

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