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【原付二種は付帯免許であるべきか】いまこそ125ccに活力を!

佐川健太郎モーターサイクルジャーナリスト
125ccは世界的にはクルマの付帯免許であることが多い(写真:アフロ)

便利な乗り物なのだが…

125cc、いわゆる原付二種のメリットは大きい。50ccのように2段階右折がいらず制限速度も30km/hに縛られることはなく、保険や税金の面でも優遇されるなどメリットは多い。

軽量コンパクトで取り回しは楽だし、小回りも効いて渋滞もなんのその。低いシートは体格を選ばず、オートマなのでうっかり立ちゴケのストレスからも解放される。荷物もたくさん積めて二人乗りもできるし、最近のモデルはデザインもカッコいい。先日、最新モデルに一気乗りする機会があり、実感した次第だ。

ただ、こんなに便利な乗り物なのに普及台数は今ひとつ。バイク全体に占める割合として原付全体で見れば約8割だが、その中で125ccなどの二種は半数以下でしかない。ほとんどは50ccなのだ。その背景にあるのは日本の特殊な免許制度によるところが大きい。

日本ではクルマの免許を持っていれば50ccは運転できるが、125ccには乗れない。ご存知のとおり普通二輪免許の小型限定が必要になるからだ。若者や女性もクルマの免許は必要に迫られて取る場合も多いと思うが、強い動機でもない限りわざわざ時間とお金をかけてバイクの免許を取ろうと思わないのは当然だろう。

変化する免許制度

海外に目を転じれば、欧州やアセアン諸国でもクルマの免許を持っていれば125ccまでは乗れる国がほとんどだ。庶民の生活の足として、またスポーツバイクに憧れる若者たちのエントリーモデルとして広く普及している。

日本の運転免許制度は明治時代にその原型が作られてからすでに1世紀以上が経つが、その間たびたび法改正が行われてきた。かつてはクルマの免許に二輪免許がもれなく付いてくる時代もあった。いきなりナナハン(750cc)をノーマルで乗れてしまう野蛮な時代もあったのだ。当然のごとく事故も多発して法規制が入り、ヘルメット着用義務や大型二輪免許などの免許区分が細分化されて今に至っている。ちなみに原付一種の2段階右折の施行は86年からと割と最近のことである。

条件付きで始めてみてはどうか

話を戻して、125ccをクルマの免許で乗れるようにしたらどうか、という要望がメーカーなどから出ている。昨年もホンダ・モーターサイクル・ジャパンの井内社長が「原付二種は制限速度60km/hで走れて4輪との混合交通でも安心して乗れる環境があり、4輪の付帯免許で乗れるようにして欲しいとの思いもある」と語り、 市場活性化に向けて原付二種の免許取得容易化への考えを示したことが話題になった。原付二種の免許取得をもっと容易化するか、あるいはクルマの付帯免許とするなど免許制度見直しに対する期待感を示したが、依然としてそのような動きは見られないのが現状だ。

前述したとおり、125ccは現代の交通環境にも適合した機能性と機動力を備えたとても便利なコミューターであり、バイクの楽しさを広く知ってもらう入り口としても、賛同できる部分はある。

「ただし」である。無条件というわけにはいかない。原動機付自転車といっても、自転車とは異なる乗り物である。125ccともなれば自転車とは速度も車重も段違い。気軽な乗り物ではけっしてない。クルマの運転経験はあっても、エンジンの付いた2輪の運転特性に充分に慣れておく必要がある。たとえクルマの付帯免許とするにしても、現実的な実技の講習を教習所などで事前に義務づけるべきだろう。安全運転指導員やインストラクター資格保持者など、豊富な知識と経験を持ったライダーの力を借りて地域で講習会を開くのも手だ。

世界の4大バイクメーカーを抱える日本だが、そのお膝元のバイク市場規模は全盛期の8分の1にまでシュリンクしている。再び日本をバイク大国とするためにも、今こそ125ccに活力を、と思うのだ。

※原文から著者自身が一部加筆しています。

出典:Webikeバイクニュース

モーターサイクルジャーナリスト

63年東京生まれ。早稲田大学教育学部卒業後、RECRUITグループ、販促コンサルタント会社を経て独立。趣味が高じてモータージャーナルの世界へ。編集者を経て現在はジャーナリストとして2輪専門誌やWEBメディアで活躍する傍ら、「ライディングアカデミー東京」校長を務めるなど、セーフティライディングの普及にも注力。㈱モト・マニアックス代表。「Webikeバイクニュース」編集長。日本交通心理学会員 交通心理士。MFJ認定インストラクター。

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