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新型「GSX-R1000」が完全新設計で登場!狙いはずばり”サーキット最強”か!?

佐川健太郎モーターサイクルジャーナリスト
SUZUKI GSX-R1000R

スズキは10月4日からドイツ・ケルンで開催されている国際モーターサイクルショー「インターモト」において、海外向け2017年新型モデル5車種を発表した。中でも今回の目玉となるのが新型「GSX-R1000」とその上級バージョンの「GSX-R1000R」だろう。

▲カンファレンスにはなんと、ケビン・シュワンツ氏がライディングして登場
▲カンファレンスにはなんと、ケビン・シュワンツ氏がライディングして登場

GSX-R1000は2001年に初期型が登場して以来、スズキを代表するスーパースポーツモデルとして世界中のレースシーンで活躍してきた。

今回で6代目となる新型では8年ぶりのフルモデルチェンジを敢行し大幅にパフォーマンスを向上。MotoGPで培われた技術を惜しげもなく投入しつつ、GSX-Rシリーズの伝統である「走る・曲がる・止まる」の基本設計が徹底的に見直された。

▲GSX-R1000
▲GSX-R1000
▲GSX-R1000R
▲GSX-R1000R

新型エンジンとMotoGPマシン譲りの新機構

新開発の直列4気筒999.8ccエンジンは、ショートストローク化と高圧縮化により、さらなる高回転・高出力化を実現。スペック的には最高出力はGSX-Rシリーズ史上最強の148.6kW(202ps)/13,200rpm、最大トルク117.6N・m(12.0kgf・m)/10,800rpmを発揮。

車両重量200kg(ABS仕様は202kg/上級モデル「R」は203kg)ということで、パワーウエイトレシオはついに1.0を切ってきた。

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また、MotoGPマシンの技術を取り入れた新機構「ブロードパワーシステム」が採用されているのが特徴だ。これは「吸気VVT」、「電子スロットル」、「バルブ動弁装置」、「排気圧調整バルブ」の4つの機構の総称で、高回転域での出力向上と低中速域での出力を両立する技術としている。もちろん、新排ガス規制「ユーロ4」にも対応する。

つまり、新型エンジンには「隼」(197ps)を超えるピークパワーが与えられ、それを可変バルブタイミング機構や排気デバイス、ライド・バイ・ワイヤなどの最新電子制御技術のサポートを得て、よりパワフルかつ扱いやすくなっているということを示唆している。当然、従来モデルからのパワーモードも装備されているはずだ。

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空力性能の向上・軽量化・強度の最適化を実現

車体面ではフレームを新設計とし、従来モデルより全幅を抑えることで空力性能を向上。メインフレーム部分で約10%の軽量化を実現しつつ強度の最適化も図られた。

また、エンジンの搭載角度を変更し、フロントアクスルからスイングアームピボットまでの距離を短縮することでコーナリング性能と操縦性を高めている。

カウリングも完全新設計とし、全面投影面積を縮小。空気抵抗も大幅に低減されている。よりコンパクトにマスの集中化が図られたということだ。

足まわりでは、前輪にブレンボ社製ラジアルマウントブレーキキャリパーを採用。MotoGPの技術を応用した、効率的な制動力を発揮するブレンボ社製T-ドライブブレーキディスクを量産車向けに改良して装備している。

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新型GSX-R1000には慣性計測装置も搭載されている。これにより、フルブレーキ時に後輪が浮くのを抑制する「モーショントラック・ブレーキシステム」を採用。10段階から選択可能な「モーショントラック・トラクションコントロール」は、ライダーの好みやライディングスキル、路面状況に応じてエンジン出力をより効率よく路面に伝達することを可能としている。

また、最近のスズキ車の定番装備である、発進時や低回転走行時においてエンジン回転数をわずかに上げる「ローRPMアシスト」や、スタータースイッチを押し続けずにワンプッシュするだけでエンジンが始動する「スズキイージースタートシステム」を採用。ストリートを想定した日常域での使い勝手にも配慮されている。

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ちなみに慣性計測装置(IMU=Inertial Measurement Unit)とは、ジャイロセンサーや加速度計によって3次元での車体の動きを検知するシステムのこと。元々は4輪の技術だが、2輪でもMotoGPをはじめとする最高峰レース、そしてここ数年で2輪の最新鋭スーパースポーツモデルにも導入され始めた。

トラクションコントロールやコーナリングABS、スタビリティコントロールなどの電子制御の要となる装置で、限界域での高度な姿勢制御には欠かせないものとなっている。

 ▲現役のMotoGPライダーも登壇し、レーサーからの技術をアピール
▲現役のMotoGPライダーも登壇し、レーサーからの技術をアピール

「GSX-R1000R」の狙いは”サーキット最強のスーパースポーツ”

なお、上級バージョンの「GSX-R1000R」の主な特徴としては、エンジン回転数とトルクを制御し前輪が浮くのを抑制することで、より効率的なスタートを支援する「ローンチコントロールシステム」をスズキの市販車として初採用。

コーナリング時のブレーキングにおいても、傾斜角度を基準にフロントブレーキ圧を最適化することで、フロントタイヤのグリップ低下を抑止する、いわゆる「コーナリングABS」機能も装備。より機敏でスムーズな変速が可能となる「クイックシフトシステム」も採用された。

そして、前後サスペンションにはスーパーバイク世界選手権などの最高峰レースを通じて開発された、ショーワ製の最高峰モデルである「バランスフリーフロントフォーク」と「バランスフリーリヤクッションライト」を標準装備するなど充実。そのままレースに出ても勝てるほどのスペックを身にまとっている点にも注目したい。

歴代GSX-Rシリーズが担ってきたコンセプトどおり、狙いはずばり”サーキット最強のスーパースポーツ”と見ていいだろう。

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新世代に生まれ変わった国産4メーカーのスーパースポーツ

今回、満を持して投入された新型「GSX-R1000」の出現により、インターモトで同時に発表されたホンダの新型「CBR1000RR」や戦闘力をさらに高めたカワサキ「ZX-10RR」、そして今年の鈴鹿8耐でも圧倒的な強さを見せつけたヤマハ「YZF-R1」も含め、これで国産4メーカーのスーパースポーツはすべて新世代に生まれ変わったことになる。

2017年はいよいよ白熱したバトルが楽しみになってきた。

出典:Webikeバイクニュース

モーターサイクルジャーナリスト

63年東京生まれ。早稲田大学教育学部卒業後、RECRUITグループ、販促コンサルタント会社を経て独立。趣味が高じてモータージャーナルの世界へ。編集者を経て現在はジャーナリストとして2輪専門誌やWEBメディアで活躍する傍ら、「ライディングアカデミー東京」校長を務めるなど、セーフティライディングの普及にも注力。㈱モト・マニアックス代表。「Webikeバイクニュース」編集長。日本交通心理学会員 交通心理士。MFJ認定インストラクター。

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