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ヤマハから新型3輪スクーター「TRICITY 155 ABS」が発売。高速道路も走行可能に!

佐川健太郎モーターサイクルジャーナリスト
YAMAHA TRICITY 155 ABS

ヤマハから「TRICITY(トリシティ) 155 ABS」が2017年1月20日より新発売される。

トリシティシリーズはフロント二輪のLMWモデルと呼ばれる乗り物である。LMW(Leaning Multi Wheel/リーニング・マルチ・ホイール)とは、ヤマハが名付けたリーン(傾斜)して旋回する3輪以上の車両の総称で、ヤマハが成長戦略のひとつとして掲げているものだ。2014年に発売されたヤマハ初の市販LMW、「TRICITY 125」に続く第二弾となる。

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走りの余裕と所有感をアップ

「TRICITY 125」はスポーティな走りと安定感を両立した新しい楽しさや、斬新なスタイルで人気を集めているが、「TRICITY 155 ABS」はそのメリットを引き継ぎつつ、より余裕のある走りや所有感の向上を目指すことで、LMWの魅力を広げるモデルとして開発されたものだ。なお、生産はタイのグループ会社TYM(Thai Yamaha Motor Co., Ltd.)で行う。

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「TRICITY 155 ABS」の開発コンセプトは、“もっと行動範囲を広げ、さらに所有感を満たすNew Standard City Commuter”。

主な特徴は、「1) 高効率燃焼に貢献する可変バルブシステム(VVA)搭載“BLUE CORE”エンジン、2) ヤマハ独自のLMW機構と新設計フレームや足元スペース面積拡大によるゆったりとした乗車ポジション、3) 高級感のあるLEDヘッドランプや余裕の収納スペース、4) ワンタッチ操作のパーキングブレーキ」などとなっている。

新設計の環境型エンジン“BLUE CORE”を搭載

特徴をもう少し詳しく見ていくとしよう。

“BLUE CORE”とは燃焼効率に優れるヤマハの新世代エンジンのことで、高効率燃焼、高い冷却性、ロス低減の3点にフォーカスして開発されたもの。低中速側と高速側で吸気バルブの作動を切り変えるVVA(可変バルブシステム)搭載し、ポートや燃焼室、最適FIセッティングとの相乗効果で優れたトルク特性と燃費に貢献しているのが特徴だ。

また、ラジエターも“バイパス式サーモスタット”方式とすることで暖機時間も短く燃費向上を実現している。“BLUE CORE”は新型125ccスクーターとして今春投入されたNMAXに国内モデル初として搭載されている。

安定性と走破性に優れるLMWのメリット

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LMWは旋回時にフロント二輪が車体と同調してリーン(傾斜)する機構で、その要となるのが「パラレログラムリンク」と「片持ちテレスコピックサスペンション」。リーン機能と左右サスペンション機能を独立させることで、深いバンク角と大きなハンドル切れ角を確保している。

左右独立したサスペンションは、荒れた路面などでの高いギャップ吸収性とともに優れた乗り心地に貢献。車体の前後重量配分を理想的な50:50としたほか、燃料タンクは車両重心近くに配して自然なハンドリングを目指している。

LMWの仕組みやメリットについては下記に動画入りで詳しく解説しているのでチェックしてみてほしい。

【TRICITY技術解説動画】

車体やユーティリティを含む各部がグレードアップ

フレームも新開発とし、155cc“BLUE CORE”エンジンとの最適なマッチングが図られた結果、高速域でも十分な強度と剛性のバランスを確保。足元スペースも広くなっている。

加えて前後タイヤは構造とパターンを新開発したIRC製で、リヤ側にワンサイズ太めの130mmのワイドタイヤを採用、ツインチューブ式のリヤショックと相まって良好な乗り心地も実現した。ブレーキに関しては125ccと同じで、前後トリプルディスクの前後連動ユニファイドブレーキを採用している。

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これ以外にもLEDヘッドランプを採用し、高級感のあるフロントマスクデザインを演出。フロントには12V・DC電源付き小物入れを設置、LED照明を装備したシート下トランクは余裕の23.5Lを確保するなどユーティリティも高められている。

また、オン・オフの状態が分り易いトグルレバー式のパーキングブレーキを左グリップ部に採用するなど、停止時の利便性も高められた。

ちなみに「トリシティ125」はポジションランプとテールランプのみがLEDタイプで、フロントに小物入れはなく、シート下スペースも20Lとやや小さめ。パーキングブレーキも装備されていないなど細部が異なる。

よりパワフルになり高速道路で一気に距離を稼げる

さて、155ccとなったトリシティだが、125cc版と比較した実際的なメリットはどうなるだろう。

まず交通法規上の区分が違ってくる。125ccは道路交通法では「小型自動二輪」であり道路運送車両法では「原付2種」に分類されるが、155ccだとそれぞれ「普通自動二輪」、「軽二輪」として扱われるようになる。これにより、125ccでは乗れなかった高速道路や自動車専用道路を利用できるようになり、行動範囲が一気に広がるのが最大のメリットだろう。

これに伴い、最高出力も125ccの11psに対して155ccでは15psに向上し、動力性能も大きく向上。車重は165kgと9kg増しになりホイールベースも40mm伸びていることから、より安定性も高められていることだろう。燃費の良い“BLUE CORE”エンジンに加え、燃料タンク容量も6.6Lから7.2Lに拡大されたことで航続距離も伸びているはずだ。

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一方、デメリットとしては税金や保険が250ccクラスと同等となり、ファミリーバイク特約が使えないなど、多少なりとも維持費などのコストが高くなることは考えられる。もちろん車両価格も453,600円と125ccの356,400円とけっこう差がある。

手軽に乗り回せる125ccか、本格的なツーリングも視野に入れて155ccを選ぶか、いずれにしても目的や用途によって選択肢が増えたことはユーザーにとっては嬉しいことだ。

出典:Webikeバイクニュース

モーターサイクルジャーナリスト

63年東京生まれ。早稲田大学教育学部卒業後、RECRUITグループ、販促コンサルタント会社を経て独立。趣味が高じてモータージャーナルの世界へ。編集者を経て現在はジャーナリストとして2輪専門誌やWEBメディアで活躍する傍ら、「ライディングアカデミー東京」校長を務めるなど、セーフティライディングの普及にも注力。㈱モト・マニアックス代表。「Webikeバイクニュース」編集長。日本交通心理学会員 交通心理士。MFJ認定インストラクター。

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