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今年も完璧!? アカデミー賞受賞と日本公開タイミングの関係

斉藤博昭映画ジャーナリスト
史上最多のノミネートを果たし、作品賞本命といわれる『ラ・ラ・ランド』

現地時間2月26日、日本時間の27日に開催される米アカデミー賞授賞式。今回、作品賞の予想でぶっちぎりのトップランナーを走っているのが『ラ・ラ・ランド』。受賞はほぼ確実だと言ってよさそうだ。

その『ラ・ラ・ランド』の日本での公開は、授賞式の3日前の2月24日。まさに完璧なタイミングである。「大本命」として公開日を迎え、予定どおりの「受賞」を果たせば、さらに話題が広がり、作品のヒットの可能性が高まる。このように毎年、アカデミー賞に絡みそうな作品は、ノミネートや受賞を意識して日本での公開日が設定されるケースが多い。

ただし、今年の作品賞候補の日本公開日は……

『ラ・ラ・ランド』 2月24日

『LION/ライオン 〜25年目のただいま』 4月7日

『ムーンライト』 4月下旬

『メッセージ』 5月19日

『マンチェスター・バイ・ザ・シー』 5月

『ハクソー・リッジ』 6月24日

『最後の追跡』 Netflixで配信中

『Fences』 日本公開未定

『Hidden Figures』 日本公開未定

作品賞候補9本のうち、3本が劇場公開の予定がないのも異例だが、『ラ・ラ・ランド』以外の公開予定は、やや遅めの5〜6月に集中。もし作品賞を受賞しても、その宣伝効果は少し薄らぐ時期でもある。早くから『ラ・ラ・ランド』が賞レースの本命を走っていたので、他作品はやや謙虚なスケジュールを組んだのかも……というのは考え過ぎか。

ちなみに昨年の作品賞候補作の日本公開日は……

作品賞受賞『スポットライト 世紀のスクープ』 4月15日

『マッドマックス 怒りのデス・ロード』 前年6月20日(公開済み)

『ブリッジ・オブ・スパイ』 1月8日

『オデッセイ』 2月5日

『ルーム』 4月8日

『マネー・ショート 華麗なる大逆転』 4月15日

『レヴェナント/蘇えりし者』 4月22日

『ブルックリン』 7月1日

授賞式(日本時間2/29)より前に公開済みの作品が3本あったが(『マッドマックス〜』や『オデッセイ』は初期段階で作品賞に絡むと予想されていなかった)、最終的に作品賞に輝いた『スポットライト〜』など、4月に公開が集中していた。受賞を期待してこその公開日決定だったはずだ。

そして、過去10年間の作品賞受賞作と日本公開日の関係は……

2015年『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』

授賞式2月23日→日本公開日4月10日

2014年『それでも夜は明ける』

授賞式3月3日→日本公開日3月7日

2013年『アルゴ』

授賞式2月25日→日本公開日10月26日(前年)

2012年『アーティスト』

授賞式2月27日→日本公開日4月7日

2011年『英国王のスピーチ』

授賞式2月28日→日本公開日2月26日

2010年『ハート・ロッカー』

授賞式3月8日→日本公開日3月6日

2009年『スラムドッグ$ミリオネア』

授賞式2月23日→日本公開日4月18日

2008年『ノーカントリー』

授賞式2月25日→日本公開日3月15日

2007年『ディパーテッド』

授賞式2月26日→日本公開日1月20日

※年代は授賞式が行われた年。日程表記は日本時間

授賞式後の3〜4月の公開が目立つが、『それでも夜は明ける』は4日のタイムラグ、『英国王のスピーチ』や『ハート・ロッカー』に至っては、わずか2日。今年の『ラ・ラ・ランド』と同じく、授賞式の直前の週末に公開日が設定されていた。あくまでもアカデミー賞大本命として、日本公開日を決めるという「賭け」も大切なのだろう。その意味で、直前公開の『ラ・ラ・ランド』が作品賞に輝く可能性は限りなく高いかもしれない。

ただし、昨年のこの記事、アカデミー賞作品の日本でのヒットに書いたように、完璧なタイミングで日本公開してもヒットにつながるかどうかは別問題。『ラ・ラ・ランド』の受賞、その後の興行成績はアカデミー賞効果という点でもひじょうに興味深いのである。

『ラ・ラ・ランド』

2月24日(金)TOHOOシネマズ みゆき座ほか全国ロードショー

配給:ギャガ/ポニーキャニオン

(c) 2017 Summit Entertainment, LLC. All Rights Reserved.

Photo credit: EW0001: Sebastian (Ryan Gosling) and Mia (Emma Stone) in LA LA LAND.Photo courtesy of Lionsgate.

映画ジャーナリスト

1997年にフリーとなり、映画専門のライター、インタビュアーとして活躍。おもな執筆媒体は、シネマトゥデイ、Safari、ヤングマガジン、クーリエ・ジャポン、スクリーン、キネマ旬報、映画秘宝、VOGUE、シネコンウォーカー、MOVIE WALKER PRESS、スカパー!、GQ JAPAN、 CINEMORE、BANGER!!!、劇場用パンフレットなど。日本映画ペンクラブ会員。全米の映画賞、クリティックス・チョイス・アワード(CCA)に投票する同会員。コロンビアのカルタヘナ国際映画祭、釜山国際映画祭では審査員も経験。「リリーのすべて」(早川書房刊)など翻訳も手がける。

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