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ソフトバンクがハリウッドで突然有名に。2億5000万ドルを投資しようとしている米会社は何者?

猿渡由紀L.A.在住映画ジャーナリスト

ソフトバンクが、レジェンダリー・エンタテインメントに2置5000万ドルを投資すると発表した。これを受けて、アメリカにおいては無名だったソフトバンクが、「あの人たちは果たして何者?」と、ハリウッド関係者から一気に好奇心を集めている。では、レジェンダリーは何者だろうか?

レジェンダリーは,2000年にトーマス・タルが設立。2005年にワーナー・ブラザースと共同製作/共同配給の契約を結び、「ダークナイト」三部作や、「300<スリー・ハンドレッド、>」「パシフィック・リム、」「マン・オブ・スティール、」そしてこの夏の「GODZILLA ゴジラ」などの大ヒットを送りだしてきた。ラインナップからも想像がつくように、タルはかなりのオタクで、筆者が今年5月にインタビューした時にも、日本の「ゴジラ」は子供時代からすべて見ており、オリジナルにオマージュを捧ぐ形でハリウッド映画化するのが夢だったと語っている(彼の子供時代、感謝祭の週末には、毎年必ず日本のゴジラがテレビで連続放映され、それを見るのが楽しみだったとのことだ。)その一方で、運動神経も相当に良いらしく、高校時代はフットボール選手としての才能を発揮し、フットボールの奨学金で大学に進学。卒業後、金融関係で大もうけしたあげくに、ハリウッドに進出している。

ワーナーとの契約満期を受け、タルは、ユニバーサルと契約を結んだ。ユニバーサルとのコラボレーションのもとに今後公開される作品には、今月公開の「ドラキュラZERO、」アンジェリーナ・ジョリー監督の「Unbroken、」ギレルモ・デル・トロ監督の「Crimson Peak」などがある。

もともとアジアへの興味が深かったタルは、中国とのジョイントベンチャーにもいち早く興味を示し、2011年には、香港をベースにレジェンダリー・イーストを設立。中国におけるハリウッド映画の台頭ぶりはめざましいが、政府の規制のせいで、ハリウッドを含む外国映画は公開日すら思うように指定できず、取り分も他国に比べると非常に少ない比率というのが現状。ジョイントベンチャーという形を取ることで、多少なりともそれらの規制を逃れるのが狙いだ。

一方で、ソフトバンクの目的は、主に中国やインドなど、市場拡大において大きな潜在性をもつエリアで有効性を発揮する顧客獲得要素。コンテンツ獲得に向けてへの大規模な動きは前々から進めており、レジェンダリーとの契約が発表される直前にも、ドリームワークス・アニメーションを34億ドルで買収する交渉を進めていたが、実現しないままに終わった。交渉破綻の理由は明らかになっていない。

いずれにしても、この契約で、ソフトハンクがハリウッド映画業界への初めの第一歩を踏み出したのは確実。オタクな日本文化を愛するタルとともに、レジェンダリーとソフトバンクは、この後、どんな企画を展開していくのだろうか。

L.A.在住映画ジャーナリスト

神戸市出身。上智大学文学部新聞学科卒。女性誌編集者(映画担当)を経て渡米。L.A.をベースに、ハリウッドスター、映画監督のインタビュー記事や、撮影現場レポート記事、ハリウッド事情のコラムを、「シュプール」「ハーパース・バザー日本版」「週刊文春」「キネマ旬報」他の雑誌や新聞、Yahoo、東洋経済オンライン、文春オンライン、ぴあ、シネマトゥデイなどのウェブサイトに寄稿。米放送映画批評家協会(CCA)、米女性映画批評家サークル(WFCC)会員。映画と同じくらい、ヨガと猫を愛する。著書に「ウディ・アレン 追放」(文藝春秋社)。

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