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結婚10周年記念日の翌日にあえて破局した、ベン・アフレックの意図とは?

猿渡由紀L.A.在住映画ジャーナリスト

ベン・アフレックとジェニファー・ガーナー夫妻が、アメリカ西海岸時間6月30日、破局を発表した。10周年記念日の1日後を、わざわざ選んだことになる。

アフレックとガーナーの危機説は、ここしばらく、マスコミでささやかれていた。4月のガーナーの誕生日にアフレックがL.A.にいなかったり、結婚指輪をしていないパパラッチ写真が出回ったりしたことから、「6月の10周年記念日までには別れるだろう」と予測されていたのだが、ふたりは逆に、きっかり10年たつのを待ってから、別れたのだ。

カリフォルニア州において、結婚期間が10年以上だったか、それより短かったかは、離婚の際、大きな違いにつながる。だからこそ、トム・クルーズは、ニコール・キッドマンと12月24日に10周年を祝っているにも関わらず、離婚申請の際、「実際にはその前に破局していたので、結婚10年に満たなかった」と主張したのである。

ごく基本的に言って、結婚期間が10年未満の場合、元配偶者サポートは、結婚期間の半分に当たる期間の支払いとなる。6年結婚した場合、サポートがもらえるのは3年だ。その3年が過ぎた後、裁判所はもう介入できない。しかし、結婚が“長期にわたった”場合、裁判所はその後も介入できる。たとえば、12年結婚した夫婦が離婚し、妻は6年間、サポートをもらったが、その後、病気になって仕事ができなくなってしまったなどという場合、裁判所は、元夫に引き続き支払いを義務づけすることができる(ただし、妻が再婚した場合は該当しない。)10年、という数字が決定的に書かれているわけではないのだが、裁判所は、10年を“長期にわたる”と見なす傾向にあるのである。ちなみに、カリフォルニアでは“慰謝料”は存在しない。すなわち、どちらに非があったかは関係ないということ。稼ぎが多いほうが、少ないほうに対してサポートを払うのである。現在、アフレックは明らかにガーナーより稼いでおり、クルーズもキッドマンよりずっと多くを稼いでいた。

クルーズとキッドマンのケースが世界的に報道され、自分たちに関しても「記念日前に離婚するのでは」との憶測が報道されたため、アフレックはおそらく、“醜い離婚”というイメージを避けるべく、この日を選んだのだろう。破局後も、彼は現在の家に住み続ける(とは言っても、敷地内にある別邸)つもりだという報道も出た。3人の子供たちのためにも、できるだけ争いを避けつつ、自然な形で、生活を移行しようとしているのだと思われる。

アフレックとガーナーの出会いは、2001年のマイケル・ベイ監督作「パール・ハーバー。」当時、ハリウッドスターとしてのアフレックのキャリアは、ピークにあった。だが、ふたりが再び共演した「デアデビル」が公開された2003年ごろから、アフレックのキャリアは低迷。当時、ジェニファー・ロペスと交際していた彼は、突然ライフスタイルが派手になり、大きなイメージダウンを受けた上、出演作がのきなみ大コケするという不運が続いた。その最中にガーナーは彼と結婚。「ベン・アフレックはもう再起不能なのでは」などと世間がとやかく言う間も、彼女はひたすら夫を信じ、彼の監督兼主演作「アルゴ」がオスカーを受賞するまで、ひたすら支え続けたのだ。

皮肉にも、そのオスカー受賞スピーチで、アフレックは、夫婦間に問題があることを匂わせるような発言をし、それがマスコミの関心を引くきっかけになっている。しかし、それももう2年前のこと。その時から今までに、ふたりが下した決断は、とても大人で、思慮深いものだったようだ。とは言え、まだ離婚申請も出ていない段階で、この先はわからない。

L.A.在住映画ジャーナリスト

神戸市出身。上智大学文学部新聞学科卒。女性誌編集者(映画担当)を経て渡米。L.A.をベースに、ハリウッドスター、映画監督のインタビュー記事や、撮影現場レポート記事、ハリウッド事情のコラムを、「シュプール」「ハーパース・バザー日本版」「週刊文春」「キネマ旬報」他の雑誌や新聞、Yahoo、東洋経済オンライン、文春オンライン、ぴあ、シネマトゥデイなどのウェブサイトに寄稿。米放送映画批評家協会(CCA)、米女性映画批評家サークル(WFCC)会員。映画と同じくらい、ヨガと猫を愛する。著書に「ウディ・アレン 追放」(文藝春秋社)。

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