広島の原爆を語るドキュメンタリー映画がアメリカでリリース。全米各地で上映会も
日本の映像作家、田邊雅章のドキュメンタリー「Message from Hiroshima」が、今月4日、アメリカでDVDリリースされた。NHKで放映されたものを、アメリカの観客向けに、英語で編集し直したものだ。ナレーションはジョージ・タケイが担当。「アナと雪の女王」などを手がけたアニメーターのアダム・ディクストラが、プロデューサーおよびレコーディング・ディレクターとして携わっている。
現在、平和記念公園となった場所には、かつて、さまざまな店や家が建ち並び、多くの人が生活をしていた。映画は、当時の様子をCGで再現しつつ、一瞬にしてすべてを失ってしまった体験者たちの言葉を綴っていく。
広島出身の田邊氏も、原爆で、父、母、弟を失っている。プロデューサーの妹尾百合子によると、田邊氏は、「60年間、広島のことを語らなかったが、73歳にして、生存者の物語を保存する努力をしなければと思うようになった」そうだ。ディズニーのアニメーターである妹尾氏と夫のマーク・ファーカーが、友人のディクストラに声をかけ、ディクストラがタケイをナレーターとして連れて来た。タケイはこのテーマに大きな興味をもち、詳細を話し合いたいと、すぐに快諾したという。大戦中、タケイと家族は、アーカンサー州の強制収容所に入れられている。
一般のアメリカ人が第二次大戦と聞いた時にまず思い浮かべるのは、ナチやパールハーバーで、原爆について語られることは、あまりない。それでも、広島原爆記念日の週に、この映画をアメリカで公開すると決めたことについて、シネマ・リブレ・スタジオのアンディ・シュレイバーは、「イランの核活動抑制についてアメリカの議会でまだ話し合いがなされている今、この映画は、とりわけ重要な意味をもつ。今年はまた、広島と長崎の原爆投下70周年でもある。あの美しい街に生きていた人々が、いかに悲惨な体験をしたのかを描写するこの映画を、できるだけ多くの人に見てもらいたい。映画の中で体験者のひとりが語るように、原爆は、二度と使われてはならない」と語っている。
アマゾン・インスタント・ビデオを含むVODでも見られるが、平和団体ニューク・ウォッチと共同で、9日まで、全米各地でこの映画の上映会が行われている。これ以外にも、希望があれば、積極的に上映会を組む姿勢だ。