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ブランジェリーナ離婚:ハリウッドに数ある略奪愛のその後

猿渡由紀L.A.在住映画ジャーナリスト
(写真:ロイター/アフロ)

アンジェリーナ・ジョリーが、ブラッド・ピットを叩きのめそうとしている。

彼女が離婚条件で求めているのは、単独親権。それはつまり、ピットが最も大切にしてきた子供たちを奪うことを意味する。共同親権が基本であるアメリカで裁判所に単独親権を認めさせるには、ピットがいかにひどい父親であるかを証明しなければならず、今後、ジョリーがピットについてどんなことを言うかに焦点が当たっている。

ジョリーとピットが「Mr. & Mrs. スミス」の共演で出会った時、ピットはジェニファー・アニストンと結婚しながらも、彼女がなかなか自分の子供を作ってくれないことに不満を感じていた。彼は、後になって、当時のことを、「あの結婚に退屈していた」と振り返っている(そのコメントがアニストンへの侮辱と受け取られたため、後にピットは『僕が意味したのは、僕自身が退屈な人間になっていた、ということ』と言い直している)。ジョリーがピットを引き寄せていく上で、当時2歳だった養子のマードックス君と3人での“疑似家族体験”が大きな役割を果たしたのは、想像に難くない。

だが、12年前、ピットを誘い込む甘い蜜として使ったその手段を、今、ジョリーは、ピットへの厳しい罰として使っている。略奪愛は、ハリウッドで、これまでにいくつとなくあった。すべてを捨てさせたそれらの熱い愛は、その後、どんな展開を果たしたのだろうか。

ジュリア・ロバーツとダニー・モダー

ロバーツが現在の夫モダーと出会ったのは、ブラッド・ピットと共演した「ザ・メキシカン」(2001)の撮影現場。Bカメラのアシスタントという、決して偉いとはいえない肩書きでそこにいたモダーは、ヴェラ・スタインバーグという名のメイクアップアーティストと、結婚5年目を迎えていた。

モダーにすっかり夢中になったロバーツは、望みどおり彼を自分のものとし、まもなく、モダーは、妻と一緒に住んできた家を出る。しかし、スタインバーグは、なかなか離婚に同意しなかった。ロバーツは、「Low Vera」(情けないヴェラ)と書かれたTシャツを着て外を歩くなど、闘う姿勢を明らかにしていたが、モダーの家族はスタインバーグの味方で、家族のうちの何人かは、モダーとしばらく口をきかなくなっている。

モダーの父がようやくロバーツとの関係を許したおかげで、ふたりは2002年7月に結婚。2004年に双子の男女、2007年に次男を出産した。ふたりはプロダクション会社も立ち上げ、社名をModerを後ろから読んだRedOmと名付けている。今年6月日本公開されたロバーツの主演作「シークレット・アイズ」でも、モダーが撮影監督を務めた。しかし、彼女とモダーの家族は、今も完全に円満とは言えないようだ。

ラッセル・クロウとメグ・ライアン

クロウが「プルーフ・オブ・ライフ」(2000)でライアンと共演した時、ライアンはデニス・クエイドと結婚しており、ふたりの間には小学生の息子ジャックがいた。ライアンとクロウは恋に落ち、クエイドとの10年の結婚に終止符を打つ。だが、クロウとの恋も、長くは続かなかった。クロウがオーストラリアに住むことを主張し、ライアンがそれに同意しなかったことも理由のひとつだったと言われている。

クエイドとの離婚、クロウとの破局からしばらくたって、ライアンは、クエイドが、結婚中、何度も不倫をしたせいで、クロウと出会うまでに結婚生活はすでに破綻していたと告白した。クエイドはその事実を否定し、今ごろになってまだあの時の話を持ち出すことで息子が苦しむとは考えないのかと、ライアンを非難している。

クエイドは2004年に不動産エージェントのキンバリー・バフィントンと結婚。2012年ごろから、どちらかが離婚を申請しては取り下げるということを繰り返し、今年6月、ついに正式に離婚するとの共同声明を発表した。クロウは、ライアンと別れて間もなく、昔の恋人ダニエル・スペンサーとよりを戻し、2003年に結婚。夫妻は2012年から別居しているが、離婚手続きは取らないままだ。ライアンは、再婚していない。

ベン・アフレックとジェニファー・ロペス

“ベニファー”としてゴシップメディアを騒がせたアフレックとロペスは、2003年にアメリカで最もバカにされた映画「Gigli」(2003、日本未公開)の共演で知り合った。アフレックのお相手役は、もともとハル・ベリーが演じるはずだったのだが、スケジュールの都合でベリーが降板し、代わりにロペスに決まったものだ。

撮影開始時、ロペスは2番目の夫でバックアップダンサーのクリス・ジャッドと結婚したばかりだった。しかし、アフレックとの関係が急速に深まり、ロペスとジャッドは、2002年6月、たった9ヶ月で結婚生活を終える。その直後から、ロペスとアフレックは関係を公にし、5ヶ月後には婚約した。200万ドル(約2億円)の豪華なウェディングが計画されるも、結婚式の4日前になって、アフレックが式をキャンセル。その数ヶ月後、ふたりは正式に破局を発表している。

ロペスの影響を受けて、突然生活が派手になり、超高額車やジュエリーなどを贈りあうようになったアフレックは、世間や業界からあきれた目で見られるようになってしまい、映画監督として見事復活を果たすまで、彼のキャリアは約10年以上も氷河期を迎えることになった。その辛い時期を支え続けた妻ジェニファー・ガーナーとは3人の子供をもうけたが、アフレックが子供たちの養育係と不倫したことなども原因となって、昨年、破局している。とは言え、子供たちのためにと、ふたりは今も同じ敷地内で生活をしており、どちらも離婚を申請する動きは取っていない。

一方、ロペスは、アフレックと正式に別れてから数ヶ月後に、昔の恋人マーク・アンソニーとスピード結婚した。夫妻は男の子と女の子の双子をもうけたが、結婚してちょうど10年目の2014年に離婚を発表している。

ヘレナ・ボナム=カーターとケネス・ブラナー

ヘレナ・ボナム=カーターがケネス・ブラナーとつきあい始めた1994年、ブラナーはエマ・トンプソンと結婚していた。ブラナーとトンプソンは翌95年に離婚。ブラナーとボナム=カーターは、5年交際した末、破局した。次にボナム=カーターは、「PLANET OF THE APES 猿の惑星」(2001) で組んだティム・バートン監督とつきあい始めるが、この時、バートンは、モデルで女優のリサ・マリーと9年にわたる事実婚関係にあった。復讐として、マリーは、2005年、バートンの私物をオークションに出品し、売却している。

バートンとボナム=カーターは、ふたりの子供を授かったが、2014年、破局を発表した。

2003年、ブラナーは、美術監督のリンジー・ブラノックと再婚。トンプソンも同じ年に俳優でプロデューサーのグレッグ・ワイズと再婚している。

ブリトニー・スピアーズとケビン・フェダーライン

2004年4月、ポップスターのブリトニー・スピアーズがバックアップダンサーのケビン・フェダーラインと出会った時、フェダーラインは、女優で歌手のシャー・ジャクソンと婚約していた。ふたりの間にはすでに娘が生まれており、ジャクソンのお腹の中にはふたり目もいたが、6月、スピアーズのほうからフェダーラインにプロポーズし、フェダーラインは承諾。7月に出た「People」誌のインタビューで、スピアーズは「これは私の人生。ほかの人がどう思おうと、かまわない。私は結婚する。私は彼のことを愛しているんだもの」と語っている。

ジャクソンがフェダーラインのふたり目の子供を産んだ約2ヶ月後、スピアーズとフェダーラインは結婚した。翌年には、ふたりの結婚生活についてのリアリティ番組「Britney and Kevin: Chaotic」が放映され、あつあつぶりを見せつける。だが、次男誕生から2ヶ月もたたない2006年11月、スピアーズは離婚を申請した。

フェダーラインは、2013年、元バレーボール選手ヴィクトリア・プリンスと再婚。ふたりの間には子供がふたり生まれ、フェダーラインは6人の父となった。スピアーズは再婚していない。

クレア・デインズとビリー・クラダップ

「ロミオ&ジュリエット」のヒロインの本当の顔は、誘惑の魔女だった。クラダップが「Stage Beauty」(2004日本未公開)の撮影現場で出会ったデインズのためにメアリー=ルイーズ・パーカーを捨てた時、結婚こそしていなかったもののクラダップと8年間を彼と過ごしてきたパーカーは、妊娠7ヶ月だった。しかし、そのわずか2年後、デインズが「いつか眠りにつく前に」(2007) の共演者ヒュー・ダンシーと恋に落ちて、クラダップは捨てられる。

デインズとダンシーは、2009年にフランスで結婚式を挙げ、2012年に長男を授かった。パーカーは2008年にジェフリー・ディーン・モーガンと婚約したが、破局。クラダップは再婚していない。

ジェニファー・アニストンとジャスティン・セロー

略奪愛で最初の夫を失ったアニストンは、略奪愛で2番目の夫を得た。

アニストンが「Wanderlust」(2012、日本未公開)の共演で目を付けたジャスティン・セローは、当時、ニューヨークで活躍するスタイリストのハイディ・ビヴェンズと、14年の事実婚状態にあった。ビヴェンズの母が後に語ったことによると、当初、セローは、「僕とジェニファーについて何かマスコミが書くかもしれないが、それは全部嘘だから」と言ったそうだ。しかしそれが本当だとわかった時、ビヴェンズは、彼女が彼と長い間住んできた家を出ている。アニストンとセローは2012年に婚約し、昨年、結婚した。

L.A.在住映画ジャーナリスト

神戸市出身。上智大学文学部新聞学科卒。女性誌編集者(映画担当)を経て渡米。L.A.をベースに、ハリウッドスター、映画監督のインタビュー記事や、撮影現場レポート記事、ハリウッド事情のコラムを、「シュプール」「ハーパース・バザー日本版」「週刊文春」「キネマ旬報」他の雑誌や新聞、Yahoo、東洋経済オンライン、文春オンライン、ぴあ、シネマトゥデイなどのウェブサイトに寄稿。米放送映画批評家協会(CCA)、米女性映画批評家サークル(WFCC)会員。映画と同じくらい、ヨガと猫を愛する。著書に「ウディ・アレン 追放」(文藝春秋社)。

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