Google、糖尿病モニタリング端末開発でDexcomと提携:糖尿病は世界で3.8億人で今後も増加
アメリカのサンディエゴにあるヘルスケア関連サービスや端末を開発しているDexcomは2015年8月、Googleライフサイエンス部門と提携したことを発表した。両社は糖尿病患者の「継続的な血糖値のモニタリング」端末の開発を行っていく。小型でバンドエイドくらいの大きさの端末を低価格で提供する予定。糖尿病患者がリアルタイムで血糖値レベルをモニタリングして、血糖値のデータをクラウドにアップして分析をするもので、GoogleはDexcom以外のメーカーでも利用できるように展開していく予定。
Googleの糖尿病患者向けのサービスへの取組みはこれが最初ではない。2014年1月には傘下のGoogle Xが糖尿病患者向けの治療を目的とした「スマートコンタクトレンズ」を開発していることを発表した。そして2014年7月にはスイス製薬大手のNovartisの傘下でアイケア製品部門Alconが「スマートコンタクトレンズ」のライセンスを受けることで合意している。
■糖尿病対策はビジネスになる:世界で3.8億人以上、2035年には5.9億人に増加する糖尿病
Googleは糖尿病患者向けのサービス開発に積極的になっている。国際糖尿病連合(IDF)は2014年11月、世界の糖尿病に関する最新の調査をまとめた「糖尿病アトラス 第6版 2014 UPDATE」を発表した。それによると世界の糖尿病人口は急増しており、2014年の糖尿病有病者数は全世界で3億8,670万人(成人の有病率 8.3%)。2035年までに5億9,190万人に増加すると予測している。
全世界で成人の12人に1人が糖尿病なのだ。国別では以下の通りである。
(1) 中国:9,629万人
(2) インド:6,685万人
(3) アメリカ:2,578万人
(4) ブラジル:1,162万人
(5) インドネシア:912万人
日本の成人糖尿病人口は721万人で10位だった。また、糖尿病を発症している可能性が高いにも関わらず、検査を受けて糖尿病と診断されていない人は全世界で1億7,900万人もいる。つまり自分が糖尿病であることを知らない。そして糖尿病が原因で死亡する人の数は490万人で、7秒に1人が糖尿病のために亡くなっているそうだ。
また糖尿病の医療コストは全世界で6,120億ドル(約71兆円)、医療コスト全体の9分の1を占める。
糖尿病患者1人当たりの平均年間医療費が多い国は、以下の通りである。
(1) ノルウェー:11,144ドル (約133万円)
(2) アメリカ:10,902ドル(約130万円)
(3) スイス:10,592ドル(約127万円)
(4) ルクセンブルグ:9,424ドル(約113万円)
(5) オーストラリア:7,931ドル(約95万円)
日本は17位の4,908ドル(約59万円)。これから中国やインド、インドネシア、ブラジルなど糖尿病患者が多い国での医療費や対策に向けたコストも増加してくることが想定される。
糖尿病対策と治療には年月がかかり、費用もかかる。そして糖尿病はこれからも増加することが予測されており、世界中の糖尿病患者や予備軍らが対策と治療に多額のお金を払っていく。
Googleとしてもこの糖尿病対策と管理という「大きな市場」が、大きなビジネスになることを理解しているのだろう。
■端末やサービスは「あくまでもツール」
Googleだけでなく、糖尿病対策と管理に向けては、多くのメーカーが参入をしようとしているが、それら端末やサービスはあくまでもツールにすぎない。日常の血糖値の管理やモニタリングはできるだろうが、着装すれば糖尿病が改善するというものではない。それでも従来のものよりは良いのかもしれないが、根本的には糖尿病にならないための日常から生活習慣や健康に気をつけることが重要であろう。
情報通信技術の発展に伴い、医療やヘルスケアのシーンも大きく変化してきているが、病気にならないための日常からの生活習慣の工夫と努力は今も昔も本人が自分自身で行わなくてはならない。
(Googleと提携するDexcomの製品紹介動画)