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アメリカで稼いだ売上で海外に投資するNetflix:130か国でサービス提供、かさむ投資コスト

佐藤仁学術研究員・著述家
(写真:ロイター/アフロ)

Netflixは2016年1月19日に第4四半期(2015年10~12月)の業績を発表した。

売上高は全世界で前年同期比売上高は23%増の18億2,000万ドルだったが、海外市場の新規顧客開拓や番組制作のコンテンツ費用がかかり、純利益は48%減の4,320万ドルだった。

130か国でサービス提供発表、加入者は全世界で増加

全世界のNetflix利用者7,476万人のうち約6割弱にあたる4,474万人がアメリカの利用者である。アメリカでの利用者増は156万人、海外では403万人増加した。

Netflixの加入者は全世界で増加している。日本でも2015年9月にサービスが開始されたが、2016年1月には世界130カ国で事業展開をしていくことを発表した。インド、ナイジェリア、ポーランド、ロシア、サウジアラビア、ベトナム、シンガポール、韓国、トルコ、インドネシアなど中国以外の新興国が中心である。すぐに利益は出ないだろうが将来の成長は期待されており、発表後には株価が9%も上昇した。

Netflixの四半期ごとの加入者推移。Netflix発表資料を元に作成
Netflixの四半期ごとの加入者推移。Netflix発表資料を元に作成

アメリカで稼いだ売上を海外で投資、海外はまだ赤字

Netflixの売上高はアメリカが66%で海外が34%で、まだアメリカが圧倒的に多い。

2015年9月から日本でもサービスが開始された動画配信サービスを提供しているが、国別での売上はアメリカとアメリカ以外の海外でのみ発表しているので、日本市場だけでなく個別の国での売上は開示されていない。

しかし海外では売上こそ5億6,600万ドルあるものの、まだ赤字である。特に2015年以降は海外進出を積極的に展開しているNetflixは海外市場での新規顧客獲得に向けた広告宣伝などのマーケティング費用やコンテンツ制作費用が物凄く嵩む。

人気コンテンツは各国で異なる

特に動画コンテンツの好き、嫌いは主観的なものである。アメリカで大人気のドラマがそのままアジアや欧州でも人気が出るとは限らない。逆にアジアで人気があるコンテンツが欧米でうけるとは限らない。それぞれの地域で、人々が見たいコンテンツは異なるし、興味のない動画に毎月お金を払いたいとは思わない。そのため多くの人に有料会員として登録してもらい視聴してもらうために、多くのコンテンツを各国で用意して顧客を惹きつけていく、すなわちローカライズが必要だろうから、これからも相当なコンテンツ制作費用とそれを宣伝するためのマーケティング費用はかかるだろう。

さらに今回、Netflixがサービス提供を明らかにした新興国の多くでは、まだ毎月費用を払うサブスクリプション型でコンテンツを視聴するという人は多くない。テレビや無料のYouTubeなど多くの動画を無料で見ることに慣れ親しんでいる。相当に良いキラーコンテンツとなる動画がない限り毎月定額料は払わないだろう。多くの動画や番組が非合法のアップも含めて無料で見ることができてしまい、それらとの差別化を図っていかなければならない。

いっきに130か国で事業を展開していくことを発表したNetflixだが、いつになったらアメリカ以外の海外で利益を出せるようになるのだろうか。

Netflixの四半期ごとの業績推移(売上高は有料会員)。Netflix発表資料を元に作成
Netflixの四半期ごとの業績推移(売上高は有料会員)。Netflix発表資料を元に作成
学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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