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Facebook:利用者16億人突破、広告収入が売上の96%以上「これからも続く広告依存」

佐藤仁学術研究員・著述家
(写真:ロイター/アフロ)

Facebookは2016年4月27日、2016年第1四半期(1~3月期)と通年の業績を発表した 。Facebookを毎日利用するデイリーアクティブ利用者(DAUs)は、2016年3月時点、全世界で前年同期比で16%増の10億9,000万人。月間アクティブ利用者数(MAUs)は、2016年3月時点、全世界で同15%増の16億5,400万人だった。そしてFacebook利用者の10億人以上がアジア太平洋地域やその他の新興国市場で、これらの市場ではスマホの普及によって大きく伸びている。

売上の96.6%が広告収入、ますます広告依存のFacebook

第1四半期の売上高は前年同期比52%増の53億8,200万ドルで、そのうち広告売上高は前年同期比57%増の52億100万ドルでFacebookの売上の96.6%を占めている。一方でゲームのアプリ課金手数料などの売上高は同20%減の1億8,100万ドルとますますFacebookの売上が広告依存になっている。

▼Facebookの地域別MAUと比率(2016年Q1)

(公開情報を元に作成)
(公開情報を元に作成)

Facebookの広告売上の82%はモバイル

モバイルからのDAUは24%増の9億8,900万人、モバイルのMAUは21%増の15億800万人だった。モバイル端末からのみアクセスするMAUは前年同期比54%増の8億9,400万人だった。つまり、モバイルのみでしかFacebookを利用していない人の方が多い。モバイルでの広告売上高は広告売上高全体の約82%を占めている。Facebookの利用は全世界的に見て、ほぼモバイルが中心である。

▼Facebookの地域別1人当たりの収入(2016年Q1)

(公開情報を元に作成)
(公開情報を元に作成)

Facebookのビジネスは今後10年で広告依存から脱却できるか

Facebookは2016年4月12日に、サンフランシスコで年次開発者会議「F8」を開催した。そこでCEOのマーク・ザッカーバーグ氏は今後10年間の技術開発のロードマップとFacebookのビジョンを語った。その中でも今後注力していく約10のサービスやプロダクトを発表した。その中でも注目が高かったのが、Facebookメッセンジャーでユーザーと会話するボット「チャットボット」の開発ツールを企業向けに無償で公開した。企業はボットを活用して自社の製品、サービスの紹介、配送通知、顧客の問合わせをリアルタイムにメッセンジャーで自動応答できるようになる。メッセンジャーの利用者は9億人を超えており、Facebook傘下のメッセンジャーWhatsAppは10億人以上の利用者がいる。これら顧客基盤を抱えたプラットフォームを活用して、新たなサービスを企業向けに提供することによって、さらなる利便性の向上と新たな収益源を目指している。ただこの企業向けのメッセンジャーの新サービスも企業にとってはプロモーションや広告配信に近い。

VRはまだ収益にならない

また、F8では「Facebook Surround 360」というFacebookが開発した360度撮影可能な3Dビデオカメラの注目も高かった。詳細は2016年夏に明らかになるようだが、まだすぐに収益に繋がらないだろう。Oculusに代表されるVR(仮想現実)AR(拡張現実)はFacebook自身も「2016年の収益にはインパクトを与えることはない」と明言している。

全ての道は広告へ

他にもFacebookでは人工知能の開発などにも注力しているが、これも人工知能が利用者のニーズや傾向を学習していき、それに応じたサービスやコンテンツを提供していくものであり、その構造は広告ビジネスである。

Facebookは当面は従来通り広告収入に依拠していくだろう。全世界で16億人以上の利用者をかかえているFacebookは、その売上の96%以上が広告収入で、広告収入で稼いだ資本を新分野に投資していく構造はしばらく変わらないだろう。そして新分野の多くもFacebookにとっては、将来の広告収入に直結するようなサービスやプロダクトがほとんどである。

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学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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