中国上海のKFC:世界初、百度の人工知能(AI)ロボット「Dumi」が接客
中国上海の国足コンベンションセンターにあるケンタッキーフライドチキン(KFC)店舗では2016年4月から人工知能(AI)搭載のロボット「Dumi(ドゥミ、度秘)」が接客対応している。
中国の検索大手企業の百度(Baidu)が開発した人工知能を搭載している「ドゥミ」は、音声を認識して注文対応する。標準中国語だけでなく上海語も理解するようだ。人間の店員がいるカウンターもあるが、人工知能ロボ「Dumi」のカウンターの方が注文がすぐに処理されて、並ぶ時間が短いようだ。「Dumi」がやっているのは接客のみで、食事の用意などは人間が担当している。
ロボット「Dumi」は注文だけに対応しており、それ以外のことを話しかけると「仕事中なので、おしゃべりできません。ボスに怒られてしまいます」と残念そうな感情表現をつけて応える。
このような人工知能ロボットが接客するKFCの新しいコンセプトは「Original+(オリジナルプラス)」と呼ばれており、「Dumi」による接客以外にも百度のモバイルペイメントでの支払いや店内ではスマホで音楽のストリーミングを楽しむこともできる。ロボットが接客する「ヒューマン・フリー・ファーストフード店」としては世界初らしい。
ファーストフードの接客はロボットの時代へ
人工知能の登場によって、産業構造は大きく変わろうとしており、多くの職種が人工知能を搭載したロボットに取って代わられるようになるが、ファーストフードの店員もその1つだろう。ロボットであれば文句も言わずに淡々と仕事をこなしてくれるし、ドタキャンすることもない。また定期的なメンテは必要だが、人間のように長時間勤務で疲れて働けなくなることもない。浮いた人件費を他の投資に回すことができるだろうし、その浮いた人件費で商品が安くなることも期待できる。
中国のような人口が多い国では人工知能搭載ロボットの登場と普及によって、失業者が増加するのではないかと懸念する人もいるだろうが、技術進化と社会構造の変化に抗うことはできない。
中国政府も人工知能開発に本格的に
中国では政府が主導して人工知能の開発と産業育成に取り組んでいる。中国政府は「インターネットプラス AI 3年計画」を取りまとめ、2018年までに3年間で1,000億人民元(約1兆6,800億円)投資することが報じられた。その中では人工知能(AI)の基礎技術の開発に注力し、人工知能を活用したサービスを推進していくことを明らかにしている。そのため中国では多くの企業が人工知能の開発に着手している。人口が多い中国では人工知能を強化するために必要な多くのデータ、情報の収集が可能だ。今回の人工知能ロボット「Dumi」は中国最大手の検索エンジン百度が開発しているが、Googleが参入していない中国市場では、あらゆるデータや情報を百度は集めることが可能であり、それらは人工知能開発強化の源泉となる。
特に音声認識分野においては、中国の国家公務員や教員採用には、標準的な中国語を話せることが必要条件であるため中国語のテストがあり、年間100万人以上が受験する標準語中国語スピーキングの音声データを収集している。それらのデータを元に標準中国語を話せるかを判定するための人工知能を活用した音声認識器もある。