Yahoo!ニュース

配信から1か月、世界中で事故多発「運転中のポケモンGO」:日本では交通事故79件

佐藤仁学術研究員・著述家
(写真:ロイター/アフロ)

日本で「ポケモンGO」が配信されて1か月が経った。だいぶ沈静化してきたが、それでもまだ公園や町中でスマホを見つめて「ポケモンGO」に夢中な人が多い。「ポケモンGO」のブームで駅での「歩きスマホ」が問題になり、鉄道各社が放送やポスターで注意を呼び掛けている。

そして「歩きスマホ」よりも、危険で大きな問題になっているのが「運転中のスマホ」による事故だ。

警察庁が発表、1か月で「ポケモンGO」での事故79件

警察庁の集計によると、2016年7月22日から8月21日までの1か月に、車や自転車を運転中に「ポケモンGO」で遊んでいたことが原因とみられる交通事故が79件、交通違反の摘発が1,140件に上ったことが明らかになった。7月22日から27日までの6日間に45都道府県で合計406件の道交法違反を摘発していたことから、圧倒的にリリース直後の摘発が多かったようだ。

事故は29都道府県であり、人身事故が22件、物損事故が57件だった。物損事故のうち、自転車側がゲーム中だったのは25件。死亡事故はなかったが、愛知県春日井市で8月11日に発生した重傷事故が1件で、過失運転致傷容疑で現行犯逮捕された男は「事故直前までポケモンGOで遊び、スマホを充電しようとした際に脇見運転をした」と話しているそうだ。

違反の摘発は47都道府県全てであり、「運転中の携帯電話注視」が95%と圧倒的に多かった。また道路標識などの見落としによる一時不停止、信号無視、ポケモン探しのために自動車を道路に放置する駐車違反などだ。警察の目が届かなかったから摘発されなかったけれど、実際にはこの数字以上にあっただろう。

言うまでもなく運転中のスマホ操作は物凄く危険であり、禁止されている。運転中に「ポケモンGO」をしていて、自分が勝手に事故を起こして怪我をするだけでなく、普通に道を歩いている人に突っ込んでしまい怪我をさせたり、殺してしまう場合もある。今回の愛知県での事故も重体になっているのは運転手ではなくて、横断歩道上にいた女性だ。

自転車走行中のスマホ操作も自動車と同じように危険だ。自転車であっても、簡単に止まることはできない。歩行者に突っ込んで行ったら、自転車も車と同じように大きな事故につながる。

また自転車や自動車の運転手だけでなく「歩きスマホ」も危険である。「歩きスマホ」をしている人が事故に巻き込まれることは非常に多い。特に「歩きスマホ」をしている人は、自分では大丈夫だと思っているようだが、自動車の運転席から「歩きスマホ」や「自転車スマホ」をしている人がいると非常に危険で不安である。「あの歩きスマホをしている人は、車の存在に気が付いているのだろうか、突然飛び出したりしないだろうか」と自動車の運転手は非常に気を使う。

海外でも多発の「運転中のポケモンGO」による事故やトラブル

ニューヨークで「ポケモンGO」に夢中で木に衝突した自動車
ニューヨークで「ポケモンGO」に夢中で木に衝突した自動車
アメリカの道路では「運転中のポケモン禁止」の電光掲示板
アメリカの道路では「運転中のポケモン禁止」の電光掲示板

「運転中のポケモンGO」が問題になっているのは日本だけでない。海外でも大人気の「ポケモンGO」は全世界で運転中にゲームに夢中でトラブルや事故になっている。最近では「運転中のポケモンGO」による事故のニュースは日常茶飯事的になってしまった。各国の警察がSNSなどで注意を呼びかけたり、監視の強化を図っている。「運転中のポケモンGO」だけでなく、歩行中の「ポケモンGO」、いわゆる「歩きスマホ」でスマホに夢中になっていて、自動車に気が付かなかったり、道路に飛び出したりしてしまい事故やトラブルに巻き込まれることも多い。

イギリスでは配車アプリ「Uber」の運転手が運転中に「ポケモンGO」で遊んでいて、乗客からクレームになった。オランダではバスの運転手が運転中に「ポケモンGO」で遊んでいて、解雇された。運転手が「ポケモンGO」に夢中の自動車なんて、恐ろしくて乗りたくない。

アメリカのボルチモアでは運転中に「ポケモンGO」をやっていて、パトカーに突っ込んでいくという事故や、ニューヨークでは木に衝突する事故もあった。ピッツバーグでは15歳の少女が歩きながら「ポケモンGO」をやっていたら、自動車事故に巻き込まれて大怪我をした。彼女が入院した病院によると、彼女以外にもたくさんの人が歩きながら「ポケモンGO」をやっていて自動車事故に巻き込まれて怪我をしているそうだ。カナダでも運転手が「ポケモンGO」をしていた自動車が警察に突っ込んで2人の警官が怪我をした。

オーストラリアのメルボルンでは19歳の少年が運転中に「ポケモンGO」をやっていて、学校に突っ込んでいった。シドニーでは「ポケモンGO」をやっていた歩行者の女性がひき逃げされた。マレーシアでも歩きながら「ポケモンGO」に夢中になっていた2人が自動車事故に巻き込まれた。シンガポールでも「ポケモンGO」に夢中になっていた運転手の自動車が道路に突っ込む事故が報じられていた。どの事故やトラブルも運転や歩行に集中しないで、スマホに夢中になっていて、神経がスマホの中のポケモンにばかりいっていたことが原因だ。

このように世界中で「ポケモンGO」に起因する事故やトラブルは氷山の一角であり、最近ではもう報じられなくなるくらい日常茶飯事な事故になってきた。運転中の「ポケモンGO」は言うまでもなく危険であり違反だが、歩きながらの「ポケモンGO」も危険だ。「ポケモンGO」は命がけでやるものでもないし、「ポケモンGO」で人生を台無しにする必要はない。

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

佐藤仁の最近の記事