シンガポールで世界初の自動運転タクシー実験開始:「自動車は保有するより呼ぶ時代に」自動車減少社会へ
自動運転車を開発しているアメリカのnuTonomyは2016年8月25日にシンガポールで世界初の一般道路での自動運転タクシーの実験を開始した。
2018年の商用化を目指して、世界初の自動運転タクシーの実験
Uber よりも先に実際の自動運転タクシーで実験したことが話題になっている。シンガポールでアプリでnuTonomyのタクシーを呼び利用できる。まだ実験なので費用は無料だ。そして安全のために同社のエンジニアが同乗する。
nuTonomyはアメリカのマサチューセッツ工科大学(MIT)の2人の研究者が2013年に立ち上げたスタートアップで、シンガポール陸運局(LTA)から自動運転車開発のパートナーに認可されたばかり。自動運転タクシーの実験はシンガポール政府の都市開発プロジェクトによる商業地区で行われる。今回の自動運転タクシーには電気自動車が使用され、フランスのルノー「Zoe」と三菱自動車の「i-MiEV」を改造して、自動運転用ソフトやセンサー、カメラなどを搭載して走行する。今回の実験を通じて、アプリ性能や乗車体験などのデータを収集して、それらを基にさらに自動運転のソフトウェアを改善していく。そして2018年にシンガポールで正式な商用サービスとしてスタートする予定だ。
自動車減少社会の到来か「自動車は保有するよりも呼ぶ時代へ」
今回の実験で、nuTonomyのCOOを務めるDoug Parker氏は「自動運転タクシーが普及したら、シンガポール国内を走っている自動車の数は現在の90万台から30万台まで減少し、道路の渋滞もなくなるだろうし、小さい自動車で小さな駐車場だけで済むようになる」とコメントしている。
具体的にいつまでに30万台まで減少するのかは明らかにしていないが、たしかに自動運転タクシーがいつでもどこにでも迎えに来てくれるようになれば、自動車を所有するよりも楽だろう。シンガポールは小さな島でMRTやバスなど公共交通機関もかなり発達しているが、それでも自動車も多い。タクシーも多くてそれなりに便利だが、ちょっと離れたり場所だとなかなかつかまらない。シンガポールは暑いのでちょっと歩いていくのも億劫で、すぐに呼びたい時にタクシーがつかまらないのはストレスだ。自動運転タクシーがいつでもどこにでも来てくれたら便利だろう。また現在のタクシーは当然運転手が運転するので、決して安くはない。自動運転タクシーの方が、運転手の人件費が不要になるから、安くて済むだろう。
また、自動車の運転は神経を使うので、とにかく疲れる。そして疲れた時は危険だから運転できないし、当然ながらお酒を飲んでから運転できない。自分で自動車を所有していたら、メンテナンスのコストや保険、ガソリン代などもかかる。自動運転タクシーなら呼びたい時に、いつでも呼べて、どこにもで手頃な価格で行けるのであれば、自動車を所有するよりも遥かに効率的だろう。たしかに自動車の数は3分の1くらいまで減少して、渋滞も緩和するようになるだろう。またnuTonomyの自動車は小型なので、小回りも効いて、どのような細い道などにも入っていけるそうだ。シンガポールには歩行者が多い路地裏や狭い道路も多いので、どのような道路でも突然飛び出してくる人や物を認識して徐行や急停車出来る必要がある。
現在ミャンマーでこの原稿を執筆しているのだが、ミャンマーの交通渋滞は酷く、道路には歩行者も多く歩いて、突然人や犬が車の前に出てくるし、自動車同士の間隔も狭く突然割り込んでくる。しかし交通環境の悪い地域でも地元のタクシー運転手は慣れていて、器用に運転している。このような地域の道路でも自動運転車が運転できる日も近いのだろう。
自動車免許も不要の時代へ
これからはシンガポールや欧米だけでなく、世界規模で自動運転タクシーが主流になって、自動車は個人が所有して自分で運転するよりも、スマホで自動運転タクシーを好きな時に呼び出して、低価格で行きたい所に行く時代になってくるだろう。
免許を持ってないから自動車に乗れないという時代ではなくなる。免許すら持つ必要もなくなるかもしれない。今では誰もが当たり前のように取る自動車運転免許も将来は、特殊技能になるかもしれない。運転手の同乗するタクシーは介護や支援が必要な時などに限られるだろう。世界中でタクシーやトラックの運転手、自動車学校、保険会社、自動車関連メーカーは本格的に自動運転タクシーの到来に備えておく必要がある。雇用や社会の産業構造も大きく変わっていく。nuTonomyは2018年に自動運転タクシーをシンガポールで実用化する予定だ。遠い未来の話ではない。
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