ユニセフ、「持続可能な開発目標」の子供に関するデータ収集の強化を呼びかけ
ユニセフ(国連児童基金)は2016年9月「持続可能な開発目標(SDGs)」の子供に関する指標のうち十分なデータがあるのは半数だけとの分析結果を明らかにし、世界の指導者たちに対して、データ収集を強化するよう呼びかけている。
データは「不足しているか、質に問題がある」
ユニセフの分析によれば、貧困や暴力を含む、子供に関する比較可能なデータは「不足しているか、質に問題がある」とのこと。そのため、各国政府が多くの子供たちが抱える問題に適切に取り組み、またSDGsの目標達成の進捗状況を確認するために必要な情報が不足している。
ユニセフ統計・調査・政策局長のジェフリー・オマリー氏は「国際社会は、2030年までに子供たちの極度の貧困の撲滅し、最も取り残されている子供たちを優先することを約束しています。私たちがこの野心的な目標の達成に成功するためには、まず対象となる子供たちは誰なのか、どこに住んでいて、何が必要なのかを知るためのデータが必要です」と述べている。
不足しているデータの例
(1) およそ3カ国に1カ国は、子供の貧困に関する比較可能なデータがない。
(2) 約1億2,000万人の20歳未満の女子が 強制的な性行為やその他の性的行為の対象となっている。男子にも同様の危険があるものの、 男子についてのデータはほとんど存在しない。
(3) ほとんど全ての国において、障がいをもつ子供たちの人数に関する正確かつ比較可能なデータが不足している。
(4) 安全な飲み水への普遍的なアクセスは、人々の基本的なニーズであり権利だが、飲み水がどこから来るのかのデータはあっても、多くの場合、その水がどれほど安全かについての情報が不足している。
(5) 10人に9人の子供は小学校に通っているが、そのうち何人が実際に学んでいるのかという重要なデータが不足している。
(6) 毎日830人の母親が、出産に関連した合併症により死亡している。 これらの死亡のほとんどは予防可能だが、妊産婦ケアの質に関するデータが決定的に不足している。
(7) 発育阻害は子供の生存、成長と発達の機会を奪っている。しかし197カ国のうち105カ国には、発育阻害に関する最新のデータが存在しない。
(8) 世界の2カ国のうち1カ国には、肥満の子どもに関する最新のデータが不足している。
データ収集には携帯電話なども活用
精確なデータが存在しないと、それに対する対策が取れない。例えば、日本では考えられないことだが、障がいをもつ子どもたちの人数を精確に把握している国は少ないようで、それらのデータが全くない国がほとんどなので、障がいを持つ子どもへの教育や支援がほとんど行き届いてない。
ユニセフは30年以上にわたって、各国による子供に関するデータの収集、分析および報告を積極的に支援してきた。これからも、世帯調査を通じた直接的なデータ収集を支援し、また、遠隔地などからも携帯電話などを活用して収集したデータを直ぐにセンターへ送信するなどの工夫も行っていくなど、データ不足の解消に取り組んでいくようだ。
ユニセフは各国政府に対して、貧困の世代間連鎖、予防可能な死、暴力などを含む子供たちが直面している問題に適切に取り組むために必要な、子供たちに関する細分化され比較可能な質の高いデータの収集にこれからも注力していくそうだ。