Uber:米国ピッツバーグの路上で試験運転、動画も公開:変わる社会構造、ドライバー不要の時代へ
Uberは2016年9月15日に、米国のピッツバーグで自動運転車が路上で走行する動画を公開した。Uberは2015年2月にピッツバーグで自動運転技術の研究機関Uber Advanced Technologies Center(ATC)を設立して研究開発を行ってきた。動画ではセンサーを搭載した自動車がハンドル操作なしに上を走行している。
自動運転車は既に国内外で多くのトライアルが進められており、シンガポールでは既に乗客を乗せた自動運転タクシーが試験走行しており、まだ一般の乗客を同乗させていないUberよりも一歩先を行っている。
自動車は保有しないで、必要な時に呼ぶ社会へ
Uberは今回のピッツバーグでの路上走行のリリースで、「未来の都市において、個人の自動車保有への代替案を提示することは重要なこと」と指摘し、自動運転車が社会に普及することによって、年間1,300万件にも及ぶ交通事故数の低減や、現在都市の面積の20%にも及ぶ10億台以上分駐車スペースの解放、年間1 兆時間もの無駄に繋がっている渋滞の緩和に繋がる」と述べている
Uberでは自動運転車が導入されても、初期段階では、例えば悪天候時など人間による介在が必要になることがあるため、前の座席にセーフティドライバーが座る。また、当面は現在のUberが提供しているように人間のドライバーが運転するUberと自動運転車が共存するとのこと。
変わる社会構造と雇用
またUberは、自動運転車の導入によって、多くの仕事が奪われるのではないかという懸念に対して『テクノロジーは新しい事業機会を創出する。最初にATMが設置された時には、銀行の窓口がなくなるのではないかと言われたが、実際にはATMは地元の銀行のコスト削減に貢献し、結果的に多くの支店が開き更なる雇用につながった。自動運転車版Uberは24時間走行する予定で、現在の車よりさらにメンテナンスが必要になる』とコメントしている。
今ではコンビニや町中にも無人のATMがたくさんある。銀行でATMが設置されて多くの支店が開設されたかもしれないが、今まで窓口でお金の預入や引出をしていた人たちの仕事はATMに取って代わられた。ATM設置以降に銀行の支店が増えたかもしれないが、それは別の職種だ。今回の自動運転車の普及も、センサーやカメラを装備した車のメンテナンスや人工知能の開発関連の仕事は増加するだろうが、実際に車を運転するドライバーの仕事は激減するだろう。
かつて20世紀初頭に自動車が登場した時には、今まで馬車の運転手(御者)や馬車を造っていた人、馬の世話をしていた人は自動車に仕事を奪われた。その代りに自動車が新たに石油産業や鉄鋼、道路建設、運転手といった仕事を多く生み出し、産業構造と社会は大きく変化した。自動運転車の実用化と普及は、それと同じくらいの雇用と社会構造に与えるインパクトがある。
ドライバー不要の時代へ
もはや自動車を自分で運転する時代ではなくなる。そして自分で自動車を所有する必要もなくなり、必要な時に自動運転車を呼んで低価格で目的地に行けるようになる。
自動車を所有することはコストが相当かかるし、自動車の運転はとても疲れるが、自動運転車であれば疲れていても寝ているうちに目的地まで運んでくれる日がすぐにやってくるだろう。また今までのタクシーや物流はドライバーが運転していたから、人件費がかかる。夜だからタクシーが高いということもなくなるだろう。これから自動運転車が普及するようになって、ドライバーの人件費がかからなくなるとタクシーも低価格で気軽に呼べるようになる。また大量に24時間いつでも配送できるようになるから物流コストも安くなるので、食料品や日用品の値段も安くなるだろう。
ドライバーの仕事が激減することによって、今までのように深夜にトラックの運転手向けにサービスを提供していた食堂やショップなどでも姿を消すだろう。個人で自動車の免許を取る人も少なくなるだろうから、自動車学校も淘汰されていくだろう。Uberのような自動運転車による配車が低価格で普及したら、地方でも個人で自動車を所有する必要もなくなってくる。そうなるとメーカーや保険会社も、いつまでも個人の自動車購入者に依拠することはできなくなる。
このような産業構造と雇用の変化はアメリカだけでなく、日本や全世界でも同じような社会がやってくる。時代の流れは止めることはできない。