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Google、インドで無料Wi-Fi「Google Station」駅からカフェやモールまで拡大

佐藤仁学術研究員・著述家
(写真:ロイター/アフロ)

Googleは2016年9月にニューデリーで開催された「Google for India」において、新たな試みとして「Google Station」を発表した。Googleが現在インドの主要駅で提供している無料のWi-Fiを駅だけでなく、カフェやショッピングモールなどにまで拡大していくプランを明らかにした。

Google for India
Google for India

インドの主要駅ではGoogleの無料Wi-Fi提供中、1か月350万人が利用

Googleは既にインドの主要駅では無料Wi-Fiを提供している。インド鉄道(Indian Railway)と鉄道向け通信事業者Railtelと協力して、まず2016年末までに利用者の多い100駅に、将来的には全土の400駅にWi-Fiを敷設していくことを明らかにしており、2016年7月までにムンバイ、プネ、チェンナイ、ジャイプールなど乗降客が多い23駅で無料Wi-Fiを設置しており、1か月あたり200万人が利用していた。

そして2016年9月までには52駅で提供しており、1か月あたり350万人が利用しているようで、順調に普及しているようだ。さらにGoogleによると、この無料Wi-Fiによって、毎日15,000人以上のインド人が、初めてインターネットにアクセスすることができるようになったとのこと。

駅の次はカフェやショッピングモール

そして順調に敷設が進んでいる駅での無料Wi-Fiを、次はカフェやショッピングモールなどにも敷設していくことを明らかにした。カフェやモールも駅と同様に多くの人がスマホを持って集まる場所だ。

Googleはインドで通信事業をしようとしているのではない。Googleとしては無料でWi-Fiを提供することによって、スマホでGoogleのサービスを利用してもらうことが目的だ。インドでは急速にスマホが普及しつつあるが、プリペイドSIMが主流のため、無料のWi-Fiがないとネットにアクセスしないという人が多い。

Googleとしてはネットにアクセスしてもらい、検索やGメール、YouTubeを利用してもらわないことには広告収入に繋がらない。Googleの売上の90%以上が広告収入であり、その前提はネットに接続されることであり、ネットに接続できて初めてGoogleを利用してもらえる。Googleにとって、インド全土で400駅やカフェやモールでWi-Fiを設置することは重要な設備投資だ。

インド中の情報を集めるための先行投資

さらに10億人以上のインド人から収集できる莫大な情報やデータはGoogleが注力している人工知能を強化していくのに貴重な情報やデータとなる。特に駅やカフェ、モールでの利用は鉄道での移動情報、店舗情報、買い物の記録など多くの有益な情報収集が期待できる。そこで収集したデータを元に機械学習を通じて強化された人工知能を用いて、さらに適切な広告配信や人工知能を活用した多くのサービスをインドで提供していくことが可能となり、そこで期待できる収入は無料Wi-Fi設置のコストをカバーできるのだろう。

Googleはインド政府が推進しているインドのデジタル化を促進する「Digital India」を支援している。「Google Station」で、毎日15,000人の人が初めてネットに接続できるようになったそうだが、Googleとしては慈善事業で無料Wi-Fiの設置を行っているわけではなく、人口10億人を超えるインドという巨大な市場での将来の収益確保に向けた先行投資なのだ。

インドの人の生活を大きく進化させようとしているGoogle Station
インドの人の生活を大きく進化させようとしているGoogle Station

Google Station

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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