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BlackBerry、ハードウェア開発から撤退:今後はインドネシアに生産委託しソフト開発に特化

佐藤仁学術研究員・著述家
かつてはオバマ大統領もBlackBerryを愛用(写真:ロイター/アフロ)

カナダのスマホメーカーBlackBerryは2016年9月28日、決算と同時に端末の開発と製造から撤退することを発表した。これからはインドネシアで現地通信事業者Telkomsel傘下のPT Tiphoneと提携して、合弁事業BB Merah Putihを立ち上げて、生産委託していき、BlackBerryはライセンス提供を行う。また今後はセキュリティなど企業向けソリューションなどソフト開発に特化してく。

スマホの先駆けBlackBerry、2011年には5,110万台出荷

現在のスマホの出荷は、サムスン(韓国)3億台、Apple(アメリカ)2億台、Huawei(中国)1億台で、BlackBerryの出荷台数はランキングにも出てこない。だが5年前の2011年はBlackBerryは5,100万台以上の出荷台数を誇り、サムスン、Apple、ノキアに次いで世界4位のスマホメーカーだった。オバマ大統領も愛用していたことで有名にもなった。

2010年から2012年のメーカー別スマホ出荷台数とシェア(IDC資料を基に作成)RIMはBlackBerryの旧社名でResearch In Motionの略
2010年から2012年のメーカー別スマホ出荷台数とシェア(IDC資料を基に作成)RIMはBlackBerryの旧社名でResearch In Motionの略

廉価スマホ端末の世界規模での普及と強みを失ってシェア激減

Androidスマホが爆発的に普及し、それに伴って中国、インド、インドネシア、フィリピンなど新興国でも地場のメーカーが登場して50ドル~100ドル程度の格安スマホを製造、販売するようになったため、高価なBlackberryを購入する人は激減してしまった。

インドネシアにはBlackBerry専門販売店もあった
インドネシアにはBlackBerry専門販売店もあった

また、2010年頃にBlackBerryの人気が高かった要因の1つに「BlackBerryメッセンジャー(BBM)」があった。当時はショートメッセージ(SMS)に変わる新たなコミュニケーションツールとして人気があったが、WhatsApp、メッセンジャーなどのメッセージアプリが世界中で利用されてくるようになると、BlackBerry端末同士でしか利用できない「BlackBerryメッセンジャー(BBM)」の人気は無くなってしまった。誰もが利用しているメッセージアプリを利用しないとコミュニケーションができないため、多くの人がどのようなスマホ端末でも利用できるWhatsAppやメッセンジャーへ移行するようになり、BlackBerryのサービスとしての優位性も失われていった。

盛者必衰のスマホメーカー

ハードウェアから撤退して、これからはBB Merah Putihというインドネシアの合弁会社に委託するようになるが、そのインドネシアでもかつてはBlackBerry端末はアメリカに次いでよく売れている国だったが、現在ではBlackBerryのスマホは中古端末でも利用している人は少ない。ほとんどのインドネシア人がAndroidの安いスマホを使っている。

スマホやモバイルメーカーの栄枯盛衰は激しい。世界規模で見ると、かつてフィーチャーフォンの時代はノキアが圧倒的に強く、モトローラが続いていた。スマホ登場時にはBlackBerryやHTC(台湾)の勢いが凄かった。日本でもガラケー時代にはNECやパナソニックのシェアが高く、「NやPはケータイの代名詞」のような存在だった。現在ではどのメーカーも見る影も無くなってしまった。当時、このようなことを誰が想像したであろうか。現在栄華を誇っているサムスンやAppleなどもいつ転落してしまうかわからない。

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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