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6期連続黒字で安定してきたアマゾン:次の期待は音声アシストサービス「Alexa」の活用

佐藤仁学術研究員・著述家
(写真:ロイター/アフロ)

アマゾンは2016年10月27日、2016年第3四半期(7~9月)の決算を発表した。売上高は前年同期から29%増の327億1,400万ドル、営業利益は5億7,500万ドルで、前年同期の4億600万ドルから伸びた。6四半期連続の黒字となった。クラウド事業AWSが絶好調で、かつてのような赤字決算を脱し、黒字が続きアマゾンの経営が安定してきた。

売上はアメリカ、利益はAWSに依拠

アマゾンの売上高構成比は、北米市場(特にアメリカ)での売上が約60%である。この構成比はここ何年間も大きな変更はない。海外市場はイギリス、ドイツ、日本、フランス、中国、イタリア、スペイン、インド、メキシコ、ブラジル、オーストラリアの11か国を合わせても売上高構成比は30%程度だ。また海外市場は売上高としては前年同期比28%増の106億900万ドルと売上は伸びているものの、営業損失は5億4,100万ドルの赤字だ。まだ投資費用の方が多く、赤字幅は前年同期の2億800万ドルから拡大している。

アマゾンの黒字転換にも大きく寄与し、成長が著しいのは、クラウド事業のAmazon Web Services(AWS)だ。売上高は前年同期比55%増の32億3,100万ドル、営業利益は同101%増の8億6,100万ドル。アマゾン全体の売上構成は10%だが、営業利益は北米市場よりも約4倍の大きさだ。

2016年第3四半期の売上と売上高構成比率と特徴 (アマゾン発表資料を元に作成)
2016年第3四半期の売上と売上高構成比率と特徴 (アマゾン発表資料を元に作成)

次の期待は音声アシストサービスAlexa

アマゾンのCEOのJeff Bezos氏は今回の決算でのコメントで、アマゾンの人工知能を活用した音声アシストサービスAlexaについて「Alexaこそアマゾンの最も愛されている発明品だ。なぜならAlexaの頭脳はクラウドにあるから、我々は簡単に、そして継続的にAkexaの能力を向上していき、使いやすくしていくことができる。次のサプライズを楽しみにしていてほしい("Alexa may be Amazon’s most loved invention(中略)Because Alexa’s brain is in the cloud, we can easily and continuously add to her capabilities and make her more useful- wait until you see some of the surprises the team is working on now.” 」と語った。また音声アシストサービスAlexaへの「Alexa, marry me(Alexa、結婚して)」というユーザーからの求婚の呼びかけは25万回以上あったそうだ。

Alexaはネット接続のスピーカー端末「Echo」で家庭からだけでなく、Fire TV Stick、ブラウザ、タブレット「Fire」からでも音声で呼びかけて、様々な用途が利用できる。例えば、天気や時間、スポーツの試合結果を教えてくれるだけでなく、Alexaで数百万点の商品が注文できたり、配車サービスUberの自動車を呼んだり、ピザの宅配の注文などもできる。

Jeff Bezos氏が言う「次のサプライズ」はいったい何が出てくるのだろうか。そしてAlexaを活用したサービスは今後アマゾンの収益にどのような影響を与えるのだろうか。

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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