インド政府、地場メーカーに「30ドルスマホ」製造を要請:背景にはスマホ決済の促進
インド政府は、インドの地場のスマホメーカーであるMicromax、Lava、Intex、Karbonnに対して2,000ルピー(約30ドル、3,000円)以下のスマホを製造するように要請したと報じられた。
この4社は日本人はほとんど知らないだろうが、インドではあらゆるところで広告も見かけるほどインド人なら誰もが知っているメーカーだ。MicromaxやLavaはインドでのスマホ売上でも常に上位にランクインしている。
格安「30ドルスマホ」製造依頼、その背景は「スマホ決済の普及」
インドでは今でもスマホよりもフィーチャーフォンの方が売れる。その理由はコストだ。スマホよりもフィーチャーフォンの方が安いから、購入しやすいのだ。インドで中古のスマホ端末も大量に流通しているが、新品ではどんなに安くとも50ドル(約5,000円)くらいからで、平均価格は100〜150ドル(約1万円~1万5,000円)程度だ。4G対応のスマホはもっと高く200ドル以上する。10万円近いiPhoneを学生でも利用している日本人には信じられないかもしれないが、それがインドのスマホ市場だ。そして人口13億人のインドでスマホを利用している人はまだ3億人程度で、まだ開拓の余地が大きい。
インド政府が今回地場のメーカーに30ドル以下の格安スマホの製造を依頼した背景は、言うまでもなくインドでのスマホの普及だ。さらにその背景にあるのは、高額紙幣の廃止だ。インドでは2016年11月に、ブラックマネー(非合法資金)対策のために高額紙幣が廃止、回収された。また偽札なども流出して問題になっている。そのため街中の様々な場所での支払いを「紙幣による支払いでなく、スマホでの効率的な支払や決済を積極的に普及させていきたい」狙いがあるようだ。
モディ首相は2016年末にはラジオで「インドでキャッシュレス社会を実現させたい」と述べていた。スマホを「新たな支払いの手段」としたいのだ。そのためには誰もがスマホを持てるようになる必要があり、格安で購入できるスマホの普及は急務だ。
メーカーも簡単には応じられない
インドではモディ首相のイニシアティブのもと「Make in India」というインドのあらゆる産業の活性化を図ろうとしている。そのため、今回もインドでよく売れているサムスンや中国メーカーなどには30ドル以下のスマホ製造を要請していない。あくまでもインドの地場メーカーに対してのみの要請のようだ。
だが一方で、地場メーカーにとっては政府からの要請とはいえ、格安スマホばかりでは事業が成立しない。特に格安スマホは利益率も高くないので、薄利多売となることから、メーカーにとって「稼げる端末」ではない。またMicromaxは政府の高額紙幣廃止の施策のせいで、売上が25~30%も落ち込んでしまったそうだ。政府が地場メーカーに対して何かしらの支援をしない限り、地場メーカーとしても30ドル以下のスマホ製造をすぐには開始できるないだろう。